24.体育祭へ向けて
「こんなにしんどいなんてっ聞いてないっ!」
息を切らせつつ、ココアラルが声を荒げる。
というのも、現在彼女はグラウンドを走ること5週目。体育祭に向けての体力づくりと、体力測定だと称して走らされている。
この結果に応じて、出場種目を決めようの意もあるのだが。
「へ、へいみんとしてっ、街中を走ってきてる、のにっ!」
ノルマはあと1週、だがもうゴールしている者もいる。
ココアラルが特段遅いわけではないが、速い側にもなれなかった。
「ココアラルさん、あと1週、ですのよぉ」
「わたくしは……あと3週ありますわ」
「私はリタイアしました!」
「リタイアは意地でもしませんけどっ! いやメリルさん、もう、終わってる、のにっ! 息のひとつも、乱れてませんねっ!? メルチダさんはっ歩いてる場合ですかっ!?」
クラスメイトたちとの会話もそこそこに、ココアラルもなんとか6週を終える。
ゴールから少し進み、震える足をようやく休ませた。
「お疲れ様でしたぁ」
「メリルさん……、さすがです」
「いえいえ、1位のトーデインさんには敵いませんでしたしぃ」
「男性に勝つのは難しいかと……」
男女問わず、完走する者もあれば、断念する者もいる。それはそれとして、別に問題ないわけで。
この持久走の上位者はリレーに選抜されることになっているので、目立ちたい者は率先して走るのだ。リレーは、学園で唯一学年の垣根を越えてチームを組んで共に走る、最終競技。
先輩と交流を深めたい者や、体育祭のオオトリである種目で目立ちたい者が出る。
ほかにも腕力や五感の測定なども少々行ってきており、それらを総計して出場科目を決めているようだった。
ちなみに、パーデラは前年と同じく騎馬戦、ミレイは借物競走、カーティアは障害物競争に出るらしい。
ココアラルはそれを応援したい気持ちもあるのだが、クラス組が異なりカラーが違うのでミレイとカーティアは敵となる。同じカラーになるのはパーデラだけだった。
ヒロインと攻略対象とだけあって、アラルドとコンラートもミレイとカーティアと同じクラス。ロガスはまた別のカラーになってしまっているので、だれもが対戦相手だ。
かくして、闘いの幕開けが着々と迫ってくる。
鐘が鳴って運動の時間が終わり、それぞれ教室へと戻る。運動着から制服へと着替えて、ココアラルもその日をいつも通りに過ごした。
そして、すべての授業が終わったあとで。
「あら、出ましたわね」
「先生も張り切っていらっしゃいますしぃ」
担任教諭が黒板に張り出す用紙に、出場予定の競技が書かれていた。
まず担任がおおまかに割り振り、生徒が不満があれば自らだれかとチェンジをする。そうして最終的に落ち着いたものが確定競技となる。
一番時短で、一番楽な決め方。
いろいろなところから、交換の声や決まりの声が聞こえる。
「あたしは……、障害物競走かあ」
名前の横にある競技名を見て、交換は別にいいやと、その競技にマルをつけた。
「それと、カラーも決まったぞ!」
競技一覧のよこに、さらに大文字で書かれた紙を張り出す担任。
各学年3クラスなので、3色の割り振りになるわけで。
そこには、1組がスカイ、2組がミモザ、3組がベリー、と書かれている。ココアラルは1組なのでスカイ……青色となるわけだ。
しかし、彼女がそれを見て出た第一声は。
「信号かよ」
青黄赤が並んだそれに、よく見たあれを彷彿とさせた。
名前を考えるセンスが壊滅的なのですが、一応学年にも友達いるんだよアピール……笑
悪役令嬢パーデラの話は番外編で書きたいです。