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空白  作者: いーやん
7/13

お遊び

ゲームセンターばかりのデートじゃつまらないなと思いました。異論は認めます。

「やっぱゲームセンターやめて他のとこ行かない?せっかくのデートだしさ」

僕は思い切った提案をしてみた。池袋にはゲームセンターだけではなく、娯楽施設やお店などが他にもたくさん並んでいるから色々楽しみたいという一心だった。

フリルは振り返り言った。

「あっ、じゃあROUND1行こっ!」

娯楽施設の代表格とも言える、ROUND1(ラウンドワン)。そこではボウリング、カラオケなど色々楽しむことができる。

冬休みだからか、ROUND1のある通りは学生らしき人々で溢れていた。僕と同じように制服姿の学生も大勢いる。

冬なのに暑苦しい思いをしながらROUND1に着くと、まず視界に入るのは綺麗に並んだクレーンゲーム。

「あっこれ!私が好きなクマのぬいぐるみ」

やっぱりゲームに走っちゃうのか…とほんの少しがっかりしたが、それほど気にはしなかった。

クマのぬいぐるみ、と言ってフリルが駆け寄っていったクレーンゲームは1回200円の少々リスキーなものだった。

「んーまあ1回だけチャレンジしてみるか」

僕は乗り気ではなかったが、もし取れたら好感度超アップ!というイベントが発生すると思い挑戦した。

僕の動かすアームはクマをがっしりと捕らえ、ゆっくり上昇していく。このままいけば取れる、と思った瞬間アームからごろんとクマが落下した。

「うー残念…でもシャインくんクレーンゲーム上手いね!」

僕はあまり好まないクレーンゲームだったが、なんにせよフリルからの好感度を上げてくれてありがとう。

「フリル、ボウリングでもする?」

と言ったが、僕はすぐに取り消そうとした。なぜなら痩せ気味のフリルの手は細く、ボウリングなんてやったら疲れるだけなのではと思ったからである。

次に、フリルの表情を伺ってみた。彼女は俯いている。僕はなんてことを言ってしまったんだ…と後悔しようとした。

「いいよ、でも私筋肉ないに等しいから上手くできるかな…?」

彼女の瞳に嫌悪感はまるでなく、ただ楽しみたいという気持ちが伝わってくる。

「もちろん!じゃあ受付済ましちゃおう!」

彼女の優しさは予想以上だった。


「ひえぇ疲れた…フリル、ボウリングほんとうにやったことないの?」

彼女のスコアはその細身の体からは想像もつかないほど異次元級だった。実は服の下にスペシャルな筋肉を蓄えているのかなとも錯覚してしまう。

「ほんとにないよー?スコアが高かったのは運が良かっただけだと思う!」

あっさりターキーを取っといて言う台詞ですか…と言いたかったがやめておく。

「次はカラオケ!シャインくんの歌聴きたい!」


僕はその後、カラオケにダーツにビリヤード…散々振り回されたが、どれも満足いくまで遊べて、僕はお腹いっぱい、といえるまでになった。

「疲れたね…あっそうだ、シャインくんと行きたいラーメン屋さんがあったんだ!」

時間は夜7時を過ぎていた。腹が空いていることすら忘れて楽しんでいたが、よく考えると早く夕食にたどり着きたかった気持ちもあった。

「よし、そこに行ってみるか!」

そのラーメン屋は外界へもただならぬオーラを放っていて、少し入りづらかった。

「え、フリル、ここ…?」

フリルは目を輝かせながら、満面の笑みを浮かべている。

「うん!!入ろ!」

店内も威圧感ととんこつの匂いが尋常じゃない。こんなところで働いたら体中とんこつの匂いに汚染されそうな感じだ。

「食券をお買い求めくださーい」

怖い顔の店員らしきお兄さんがこちらを見る。凄まじい眼力に圧倒される。

しかしその人のラーメン作りの手捌きはいかにもプロという感じで、みるみるうちにラーメンが出来ていく。

「へいとんこつラーメン2つ」

それは見たこともない神々しいラーメンで、眩しすぎて目を閉じそうになった。

「ありがとうございます、頂きます」

久々に食べたラーメンは新鮮で、しかも来たことがないお店だったので全てが美味しかった。恐らくフリルはこの隠れた名店の味を僕に知って欲しかったのだろう。

「シャインくん、すっごい美味しくない?!」

興奮しすぎて口に麺を含みながら話すフリルも、とにかくかわいい。

「うん、めっちゃ美味しい!」

ちらっと先程の店員さんを見ると、こちらの話を聞いていたようで、嬉しそうな顔をしていた。


「ご馳走様でした!」

僕とフリルは同時に挨拶をした。3人ほどいる店員さんがこちらを見てそれぞれ「ありがとうございました!」と元気よく言ってくれたので、こちらも良い気分になった。

「じゃ、僕はそろそろ帰らなきゃ」

「うん!シャインくん今日はありがと!また今度ね!」

フリルは一瞬残念そうにしたが、すぐ笑顔を見せてくれた。フリルのまた今度、という言葉で僕は心躍らせながら、帰りの電車に乗った。


電車に乗っている間暇だったので、通知の来ていないSNSをぼけーっと眺めていた。

タイムラインに流れてきた投稿を一つ一つじっくり見ていると、驚愕の事実にたどり着いた。


〔これからROUND1行きますー!誰かいますかー!!〕


フリルの投稿には、その文章と共に写真が添付されていた。

それは間違いなく、フリルと、知らない男とのツーショットだった。

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