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空白  作者: いーやん
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キッカケ

久々に別の小説が書きたくなりました。もう一つの方のネタが浮かぶまではこっちを書きます。

ちっぽけで、空っぽな、白銀の世界。

一面の雪景色に、あてのない想いを投げ出した。

花坂幸太(はなさかこうた)、僕は人間だった。





ある年の、12月。

私立高校に通う1年生の僕は、親に言われ卒業後の進路について考えるようになった。

やりたいこともなく、就きたい職業もなく、ましてや将来の夢なんてものは微塵も存在していなかった。

僕は昼休みに、ふと誰かに将来の夢を聞きたくなった。

睦月(むつき)、お前には将来の夢とかある?」

永原睦月(ながはらむつき)、僕と中学が同じで、かつクラスメイトである。

「んー、俺はゲームのプログラマーとかかなあ…」

睦月はいつものテキトー加減で答えた。中学の頃の将来の夢は確かバスの運転手だったはずだ。

「そっか」

なんの参考にもならなかった。やっぱりこんな奴に聞いたのが間違いだった。

「永原くん!そろそろ委員会始まっちゃうよ!」

見ると、時計は12時39分を指していた。

「わりい幸太、またあとでな!」

睦月は陸上部感丸出しの本気(マジ)走りで廊下を走っていった。

僕が自分の席に戻ろうとすると、陽キャと呼ばれる部類の女子たちが自分の席の周りを占拠していた。

僕にはそれらを退かせる権限はなかった。


考えてみれば、将来のことなんて僕には到底考えられそうにない。

なぜなら、授業中も昼休みも、気づけばハマっている音楽ゲームの譜面について研究していたり、放課後はどこのゲームセンターに行こうか、なんてことしか考えられないからだ。

ただ僕には、ゲームがあればいいと思っていた。

人間関係に関しても、学校ではなくゲーム繋がりの方が明らかに友達が多かった。

恋人だって、そっちの世界で作ればいいと思っていた。

何もかも、ゲームさえしていれば満ち足りると思っていた。




この日の放課後もいつものように、チャイムと同時に教室を飛び出し、ゲームセンターに向かった。

「シャインくんじゃないか!!ひっさしぶりぃ!」

黒の帽子に黒のパーカー、中には白いTシャツ、ズボンは紺。少し怪しい格好をした彼は、クラウンと呼ばれているわりと有名なゲーマーだ。

ちなみにシャインというのは、僕のゲーマーとしてのハンドルネームだ。

「あっクラウンさん、しばらく姿見ませんでしたけど何かあったんすか?」

「まあ女関係で色々、ね…」

色恋沙汰は日常茶飯事で、僕には何が起きたのかだいたい察しはついた。

「浮気でもされたんすか?」

ド直球の質問にクラウンさんは苦笑いで答えた。

「まぁ、ね…」

浮気、不倫、ヤリ捨て、治安としては最悪とも言えるこの音楽ゲームの世界。

一度入れば、出るのは難しいのだ。

僕にはそれらのことが一つも起きていなかったからまだ身を置いていられた。

本気でそのゲームを楽しんでいた。


「スターストリームへようこそ!コインを入れてね!」


同じ学校の人たちが雪の降る外に飛び出しはしゃいでいる中、僕はいつものように、100円を浪費する。

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