お話合い
あらすじ
サラさんって詩人なのかな?
誤字がありました。 あたしはサラよ サラ→アキ
「明文、ちょっと」
アキが明文が手招きをしている。不満気を隠そうともせず、暗く陰惨な声色だ。明らかに明文の提案を嫌がっている。
「はいはい、ロン君は修行しててね、後でサラが行くと思うから、若干体を軽めにほぐすだけでいいからね。じゃあ。」
明文はアキを連れて家の裏側に回っていく。明文はいつものように歩くが、アキのそれは冷たい足音がこちらまで聞こえてくるような不気味な恐怖を宿していた。あそこにいたであろう埴輪たち、世にも奇妙な動物?たちがアキのただならぬ空気を感じ取ったのか、わらわらとそこから散り散りに走って離れて行く。
「・・・・どうしよう、僕とうとう死んじゃうのかな。」
ロンは心臓がキュッとしぼんで、目の前が少しだけ暗くなるのを感じていた。落ち着いていた呼吸は徐々に荒れて、その速度はどんどん速くなっていく。少しの倦怠感と吐き気を感じたのと、暗い光が見えた。そこに、背中に暖かい何かが自分をさすっている。
「ほら、ゆっくり、楽に深呼吸しなさい。ゆっくり、ゆっくり。すぅーはー。」
言われた通りにロンは呼吸の脈拍を治そうとする。顔を屈んで、深呼吸をして、元の状態に戻ろうと必死に抗う。暗闇に溺れないように必死に明るい空気を体に取り入れてく。ある程度の時間がたつと若干の落ち着きを取り戻し、声の主の方に話しかけた。
「サラさん、ありがとうございます。僕は一体どうしたのでしょう?」
「さっきのは過呼吸発作ね。あまりにも空気を速く吸うとなるらしいわよ。」
「先刻までいつも通りでしたよ?」
「何か嫌なことでもあったんじゃない?精神的なものでもその症状になるのよ。」
ロンはこちらまで心配してしまうような、覚束ない顔色を浮かべた。さっきの二人の後ろ姿がちらついているのか、会話が気になるのか、はたまた両方か。
「サラさん、・・・・僕。」
「あなたのせいじゃないわよ。これは遅かれ早かれこうなっていたわ。そのタイミングが今、来ただけ。」
「でも・・・・」
「でもとか言ってると好い男にはなれないわ。そうね、今日の所は修行は軽めにしたほうがいいわね。」
「はい、わかりました。・・・・僕はどこかで間違ったのですか?」
「いいえ。これはすれ違いというのよ。真正面から混ざろうとしたコーヒーとミルクが、何かのせいで混ざらずにそのままを維持しているのよ。そうしていくうちにどっちかがこの器にいることが邪魔だと思い出すのよ。」
「・・・・・」
ロンは不思議な物を見る顔でサラを見た。ロンにはサラの言うことが少し飲み込みにくいようだ。サラは何か詩人めいた発言も多かった。だがロンにはよくわからないことが多かった。
「さあ、いきましょう。そんな顔しても時間は止まってはくれないわ。時は金なりよ。」
ロンをけしかけていつもの岩場に移動を開始する。サラが歩いてくのにロンはついてく。ロンは目の前には自分よりも大きな背中で綺麗な水色の短い髪が揺れているのを見ている。そのはずが、ロンの視界は、ロンの脳内映像は、あの足取りを、あの冷たい音が、きしきしと自分に響いていくのを感じた。
「さて、一体なんのクレームかな?」
「とぼけてるのなら、そうとう頭イッてるわ。あたしにあれと生活しろなんて無理よ。」
一方その頃、明文とアキは二人で話し合いをしていた。アキは相当気に入らないことがあった後に何かに当たる子供のように、家の壁を強く足で蹴りを入れた。明文は紫色の空と一体化しているように宙に浮いて、アキの話を聞いていた。周りに水の塊を作り、要所要所で口付けしていた。
「チューパッ!・・・・なんで無理なんだい?それほど難題でもないように思えるよ。」
「あれとあたしは徹底的に合わないわよ。あんたが持ってきたのはミルクじゃなくてコーヒーフレッシュとかただの油のようなパチモンよ。」
「それはひどい言い草だね。どうしてそこまで言えるんだい。」
「あたしの生き方とあれは合わないのよ。あたしは仕事なら、ここにいるためなら何でもする気はあるけど、あれの相手だけは無理よ。」
「何でもするなら、快く引き受けてくれよ。」
汚物を見るかのような眼で明文を見ていた。失言だったかと思う明文だったが、まあいいやと水の塊に口付けをして吸う。
「まあ、こっちでもさすがに限界だと思ったら、ロン君はこっちの世界には二度と連れてこないと決める。だけどそれは今じゃない。」
「・・・・・わかったよ。あたしはアキよ。なんでもするわ。ただし・・・」
「ただし?」
「あたしがもう無理だと思ったら、すぐやめるからね。」
「はいはい。アキには期待してるよ。」
舌打ちをして、壁に唾を吐いて、アキは家の裏側から離れて、どこか行った。恐らく、頭と心を落ち着ける場所にいったのだろうと明文は予想した。
「さあて、めんどいなあ、どっちの頭をいじれたらなあ。あ、やばいやばい、それを考えてたらしてしまいたくなるからその思考は捨てよう・・・しっかしなあ・・・・」
水の塊に口付けをして、息を吹き出し、膨らましたりとしながら、思考が始まる。が今回は短かった。誰かの声が明文の頭に響いたからだ。
「明文殿、大変お待たせした。こちらは明日の日暮れ前、午後3時に城に来てくれ。」
頭に響いた声はこないだのアズワルドの王の声だった。ようやくかと明文は楽しみが増えたと喜びがわかりやすい笑顔をした。
「さあ、これからどうなるか、やっぱり外に出て正解だった。飽きることないなあ。」
さっきの悩みはどこへやら。明文はもうそのことしか頭になかった。
お読みいただきありがとうございます。
最近、というより、私の性質の話なんですが、私は狭い空間が好きで、空気が入る程度の密室が好きなんですよね。例えば、車の中が何よりも落ち着いたり、小さい頃はトイレが落ち着く空間でした。あれって相当不思議な場所ですよね。自分の部屋より落ち着くってどういうことなんでしょうか。人間のなぞは深まりますね。




