出会い
えたるかもしれないので感想頂けると嬉しいです。
ちやほやされたいです。
俺が外に出ると、そこは鬱蒼とした森と岩肌がごつごつとしている場所にいた。木のにおいがすーっと鼻の中を抜けていく。少なくとも5千年前になかった木だ。そこの植生についてとても気になっていたためにノートを構え観察しようとする。いかんかん悪い癖だと俺は反省する。気になってしまうとついつい観察しようとしてしまう。このようなものは都市に行けば植物学者が図鑑としてまとめているものだ。それを読んでから、行動してしまえばよい。
そんなことを考えていると、耳を劈く女性の悲鳴が聞こえてくる。
やかましいなと思ったが同時にただ事ではないと考えると俺はその悲鳴元に空を飛んだ、案外と近くだったため時間は全くかからなかった。真上から見下ろすと貴族の令嬢と思われる女性とその人を守っていたとみられる兵士の死体と山賊と見られる者達がいた。
事態は切迫としていたためどうするか明文は一瞬悩んだが、それよりも盗賊と兵士の武器に注目した。あれは剣だ。5千年前にはもう用済みになっていて、運動の一環にしか使われない剣を使っていることに。もう剣士など絶滅危惧種だったはずで、少なくともあの時代には1万年まえにいた猛者と匹敵する人間など皆無だった。それどころか貴族のような出で立ちも服装も5千年前にはもうなくなっていたはずだ。
思考の海に沈んでいる間に令嬢に山賊が下卑た顔で近づいてく。
いかんせん癖はというのは治らないものだ、自嘲する笑みが出る。これは俺の性格的な問題・・・そんなことはどうでもいい、とりあえずあの令嬢とみられる人物を助けよう。もし貴族なら恩賞の一つぐらいは出るだろう、恩賞には情報を求めよう。ともかくともこの世界の情報がいる。
そう考えた明文は令嬢と山賊の間に降り立った。だが山賊は令嬢に近づくのを辞めない。ここで明文は自分が認識阻害する魔法を使っていることに気づき、その魔法を解除した。
「!!!!!」
間抜けな顔だな。
「えまお、たきていわらかど!!!!」
・・・・言語がわからないということは、どういうことだ? 俺は少なくともこの世界の52あった言語全て、会得していたはずだ・・・・どうなってる?
まあいいか、とりあえず・・・
明文は白衣のポケットから黒い球体を取り出した。山賊と令嬢は恐怖と驚愕で動くことができなかった。黒い球体は明文の手から自ら離れるように空中へ浮かび上がり、明文の目の前で静止した。山賊たちは直ぐに、自分たちがもっていた盾を構える。
「あーあ、ごほん!!ファルス歴1万25年、4月21日、昼頃、これより、人間とみられる生命体13体との交戦実験を開始し、それを映像として記録する。私は5千年もの間、自分が作った異空間にこもっていたために今の文明の利器と武力がどこまでになっているか把握していないために・・・・・」
明文は黒い球体にむかって、喋りかける。山賊達は殺気立ち、明文に襲いかかろうとしている。
「っ!!てなはをや、ろしをきげうこまい、だうょしいえ!!」
山賊たちが放った矢は明文の眉間に矢が吸い込まれるように放たれた。明文はそれに異をかえさず、表情も変わらず、ただひたすら球体に喋りかけている。令嬢は目に諦めの色を浮かべる。
っこんと矢が明文の眉間に当たるが、明文には傷一つつかなかった。明文の顔色は変わらなかったが、その他の顔色は様変わりしていた。山賊は焦りを浮かべ、令嬢も何が何だかという表情をしている。
「・・・・たった今、矢による攻撃を眉間に受けたが、目測の判断で受けてよしと判断したためである。矢尻はおそらく鉄でできており、矢を放った者腕もよく、速度も問題なかった。平均的な人間族、エルフ族、ドワーフ族なら、死んでいただろう。魔族や・・・・・」
全く動じることのない明文に恐怖し焦った5人の山賊達が刀で襲い掛かる。一人が近づき踏み込み刀を右肩に向けて振り下ろした。その斬撃を優しく支えるように右手の人差し指で止める。
直ぐにバックステップして、山賊達が入れ替り斬撃を繰り出す、それをさっきと同じ要領で止める。その最中に令嬢に向けて矢が放たれるも令嬢の周りに障壁を魔法で張り、令嬢の安全の確保をしつつ、実験を辞めなかった。
「・・・・1回あたり平均速度は時速181キロ、5千年前にいた自称(笑)武道家達より、力とキレがある斬撃で、基本体力はおそらく今の時代のほうが上だ。1万年前にいた達人とよばれる部類の速度にはまったく及ばない。まだ参照される情報量が薄いため、攻撃(1)実験をここまでとする。続いて攻撃実験(2)・・・・・」
しゃべり続ける明文に山賊達の一人が火の魔法を放ったが、明文はまだ微動だにしない。というか受けて笑みを浮かべているため、誤解を生まないだろうか。
「・・・・魔力量が8千年ほど前にいた魔法士達の平均とほぼ同等に持っているたため、魔法を攻撃に利用すること推測した。その推測通りに火炎術式を放ってきたが、あまり威力はなく、平均的な能力をもっている人間ならともかく、私には全くほど効かないようだ。彼以外はおそらく補助魔法を使えるかもしれんが、そこまで魔学を学んでいないように見える・・・攻撃実験を終えることとする。続いて耐久力実験を開始する。」
ゆっくりと山賊達の方に歩いていく、山賊達の頭目であろう人物が退却を命じる、逃げだす山賊達、だが一番先に逃げた者が突如後ろにひっくり返った。そんな様子を見ることなく我先にと逃げるが、続く者達も後ろにひっくり返っていく。頭目は冷静にそれを見て、判断した。実は明文はすでにここら一体に気温、温度、魔素を一定にする結界でここを隔離した。実験はそうしなければ差異が出てしまうために考案された結界である。
山賊達が降伏の姿勢をとった。だが頭目だけは刃を自分の喉にむけて、自害しようとした。だが、明文がそれを許さなかった。
「・・・・耐久力実験の前に記憶を取り出して、語学並びにこの世界の情勢について知るために記憶を模倣する。そのうえで耐久力実験を・・・・・」
そうつぶやくと頭目の刃を左手で鷲掴みをして、右手で頭目の頭をつかんだ。次の瞬間、頭目が叫んだ、この風貌からを想像できないほどの悲惨の色に染めた声だった。明文は彼の脳の記憶を取り出すのと同時に扁桃体を刺激し、彼に恐怖の反応だけを起こさせた。
「・・・・語学に加えて、情勢もおおまかに掴んだ。やはりこいつは頭目だった。しかも騎士として訓練もされている。この令嬢は第五王女だったか、これを殺害するために侯爵家当主に命令されたようだ。ふむふむ、情勢はというか文化的なところ1万年前とそうは変わらないようだ。5千年前の繁栄を支えた魔道具は綺麗さっぱり消えている。・・・・5千年前になにがあったんだ?」
明文は文化レベルの退行に興味を抱いた。そして彼の目的はその原因について調べることになった。
久しぶりに外に出たけど、面白いことになってるじゃあないか。いやらしい笑みを抑えきれず、邪悪な顔になる。それを見た山賊達は怯えて頭を土にこすりつけるぐらいまで下げて、許しを請いている。
「ふむふむ、察知能力と判断能力が欠如していると思えばちゃんとあるじゃないか、最初から逃げていれば気まぐれに見逃していたかもしれんなあ。大の大人がここまで必死になるんだからなあ。」
とぼやいていたが、徐々に山賊達の間を詰めていき、またしゃべりだす。
「今から、耐久実験を開始するがさきほどの刀を掴んだ時にある程度の情報が得られた、これよりは何をやったら益は得られるのだろうか。それを考えるいたって一つのことにたどり着く、彼らの素体情報が欲しい、よって彼らの血の一片まで吸い取り血液サンプルを取り出すことに決めた。」
風をかまいたちのように操り山賊達の体に無数の傷をつける。山賊達は怯える、山賊達だけでなく頭目も王女もそれを目撃しおののく。彼らの体から流れ出る赤色が彼らの頭の上に集まっていくことに、彼らの死が近づいている情報に。山賊達の中で頭が回る人物は体の傷を両の手で必死に抑えるが無数に傷があるため、気休めにもならない。彼らの体が枯れるまでに一分とかからなかった。
赤黒い玉が彼らの頭上にある。彼らだったものは皮膚がたるみ、肉という肉がにやせ細り、眼球はへこんでいる。あまりにも猟奇的な死に方に生き残った頭目と王女は怯える。この得体のしれない状況に。次に明文は血の塊を白衣のポケットから取り出した巾着袋の中に入れた。ついでに遺体達も巾着袋の中に吸い込まれていく。
「さて、サンプルは取れた。いやーいいことしたな。人助けついでに実験材料も得れた。さて結果と考察は後にまとめよう、これより第1457回記録実験を終了する。」
そう言い、黒い球体が彼のポケットの中に独りでに中に入っていく。うきうきとした表情で振り返ると王女が泡と失禁を吹いて倒れていた。
ありゃ?ちょっと刺激が強かったかな?
彼はそうとうイカれていた。
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