プロローグ
そこは当たり一面が紫色の世界。幻想的な風景がそこにある。一般の目があるなら、間違いなく観光地になるような壮大さだ。空は青みが強い色をしていて、大地にある植物や地面は赤みが強いの色をしている。
そこにポツリとこの世界にはそぐわない一軒家が建っていた。ここにあるのが不思議な二階建ての家に見える建物だ。陶磁色の壁に赤色の屋根は存在感があり、その周辺の庭には奇形な形をした植物と、それを取り囲むようにに埴輪が並んでいる。またその埴輪で遊んでいる二つ首の狐と思われる成人男性ほどの大きさを持った生物がいる。
しばらくするとその狐は埴輪遊びを辞めて、家の玄関の前でお座りをした。間もなく、一軒家から姿がうっすら見える距離に男が見えた。その男は絵の具を散りばめた柄の鍔が真っすぐな帽子を被っており、着衣は白衣を羽織りその下には黒色のシャツを着込んでいる。下半身は黒色一色のズボンに派手な柄のカラフルな靴を履いている。この男がこの家の主である。徐々にこちらに近づいてくるその顔は東洋人のそれで唇の端に2本のピアス、左目付近にもピアスをつけている。目の色が左右で違い、左が青、右が赤色である。見た目はまだ成人したばかりであろうものだがその雰囲気は老成されている。背格好は中肉中背で、その身なりから研究者のようであるがうっすら見える首元付近にある筋肉が少し盛り上がっていることから、かなり鍛えていることがわかる。
その男が家の前に立つと、二つの頭を撫でて、餌のようなものを懐から取り出して、それらに与える。この狐はここの番人のようだ、それから、その男とその狐はその家に入っていく。明かり灯る、その家でなく、この世界が紫の光に満ちる、主の帰還を待ちわびたように、世界が光る。この風景はいつものように毎日繰り返される。
やがて、男はこの世界のほとんど知る。そして、次に移る。
そろそろ外の世界に出よう、
彼はこの異空間から飛び出し青青とした空の下にいた。
彼の名前は相良 明文 一万年前に賢者として敬われた者である。
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