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2機の剣聖

作者: アノレ

暗闇。遠く遠く、微かな風鳴りの音。

光届かぬ暗闇に、今、二つの小さな光が灯る。

二つの光は、決して離れず、対になって、わずかに、右、左に動く。

それは輝く、二つの目。その二つのセンサーアイの光が、その持ち主の姿も少しずつ明らかにする。

ブラックの、曲線の美しい人型のボディ。かつてはつややかに輝いていたのだろうが、

若干薄汚れてしまっている。

その顔は、白磁のように白く、また綺麗に整ってはいるがどこか特徴を欠いている。


その者、フェンリルG-2タイプ、個体名「アルムルナド」は戦闘アンドロイドであった。


午前8時ちょうど。

アルムルナドは立ち上がると、暗闇の中を歩きだす。

かつり。かつり。

硬質な足音が静寂を弾く。


動力の落ちた前哨基地、「アウトポスト732」の地下は暗黒そのものだが、センサーアイの暗視と、

反響音で周囲を把握できるアルムは確かな足取りで、出口を目指す。


武装した骸骨がうなだれている。

それも、2、3体ではない。

通路の左右に連なるように、折り重なるように、軍人らしき遺体が続く。

しかし、アルムはそれに何の感慨もない。

彼らは戦力たり得ない、それだけのことだ。


(アルムルナド、出撃する)

通信チャンネルに送信するが、応える者はいない。

これもいつもの事。

シャッターがアルムの接近を察知して上に開いていくが…

その動きは耳障りな激しい軋みと共に止まってしまう。

これも、いつものこと。

半分しか開かないシャッターを潜り抜け、外へ出る…。



眼前に広がるのは、見慣れ切った死滅都市。

破壊された多脚戦車が潰れた昆虫のように寝そべっている。

ビルディングの多くは風化しつつある。ガラスの破れた窓の奥は暗い影に沈む。

正面、目を引くのは、何か大きな力がそこを通り抜けたのだろう、斜めに切断されたかのような

超高層ビルの残骸。

そのさらに遥か遠く、半分に折れた空中プラットフォームの残骸が斜めに視界に割り込んでくる。



これが、アルムにとっての日常。故に、特に感慨はない。



―――最終戦争が終わって数十年が経った。戦争を生き延びたわずかな人類も、

環境の激変に堪えられず、結局死に絶えてしまった。

このアルムルナドのように、稼働するメカニカルすら希少であろう。

何もかもが終わっているはずの世界。

それでも、アルムには動き続ける「目的」がある。


『ここより3キロ地点にある要塞を攻略し、制圧せよ。』


世界が崩壊し、人類が死に絶えてなお、この攻撃命令はアルムを強力に動機づけ、動かしている。


アルムは砂に飲み込まれつつある大廃墟群へと歩みだす。

今日も、アウトポスト周囲に変化はない。

だが一点だけ…。

(風が強い。)

今日は記録的なレベルの強風が吹いている。

戦術上、影響があるのでそれには留意する。


しばらく、歩みを進める。

崩落したハイウェイの残骸が一本足で踏ん張っている。

その下に差し掛かったあたりで、アルムはふと足を止める。


そこには二体の戦闘アンドロイドが並んで待機している。

アルムと比べるとだいぶロボット然とした姿だ。

緑色のモノアイはわずかにチラついている。

白い装甲はところどころ塗装が剥げ、手には残弾わずかであろうヘビーアサルトライフルを抱えている。


彼らはアルムとは友軍機にあたるため危険はない、しかしそれだけであった。

アルムとは国籍が違い、指令系統が異なるため、コマンドを送っても従わないのだ。


「…ご苦労。」

アルムが声をかけると二体はバッと敬礼のポーズをとり、すぐに直立姿勢に直る。

今の彼らにできることは、これだけだった。


木偶と化した二体をおいて、なおも進む。


ここから先は破壊が酷く、ほぼ更地と化している。

濛々たる砂埃が巻き起こり、周囲の様子をほぼ隠していまう。

わずかに、何かの鉄骨が砂塵の中に浮き上がる。

それでも、マップ、地形を完全把握しているアルムはまっすぐに歩みを進める。


目的とする要塞はこの先だ。

到達し、制圧できれば作戦は終了だ。

尤も、いつも通り、「彼」がそうさせてはくれないだろうが。


ズキュッ、ズキュッ、ズキュッ…。


砂嵐の中、何かが、規則正しい機械音が正面から近づいてくる。

青く光るモノアイが、揺れながら接近してくる。


やがて現れたのは、アルムよりはるかに大柄なアンドロイドだった。

全高は2メートル半ほどもあろうか。

160cm、人間やや小柄程度の身長のアルムと比較すると巨人のようだ。

砂色のボディーに、頭部はなく、胴体の上部に直接モノアイが光っている。

巨体のアンドロイドが、手に持った長い装置に何がしか操作をするとブゥン…と音がして

それは緑色の光をまとった。

重アンドロイド用の、大型のビームソードだ。


これが、アルムが目標とする要塞の防衛司令官にして要塞唯一の残存兵力、カービンス将軍であった。


「変わらず、来たか。」

アルムから3メートルほどの距離で止まると、カービンスが話しかけてくる。

「風が強い。記録的と言っていい風が吹いている。こんな日は何かが起きそうだと思わないかね?」

カービンスは見かけによらず饒舌だ。対するアルムはそれに応えず、背中の振動ブレードを抜くと

体側に構える。

「つくづく、君は寡黙だな。」

言葉に滲む、嘆息の気配。この重アンドロイドはこうした感情の機微も持ち合わせるらしかった。

「倒すべき相手と対話することに何ら価値を見出せませんので。」

アルムはそれだけ言って口を閉ざす。

「…確かにな。」

カービンスは会話をあきらめると、ビームソードを片手で前に構える。

両者は、まっすぐに対峙する。


そして、1分、5分、30分が経過して…。

両者は対峙したまま、動かない。アルムのファイバー製の髪が激しくなびくのを除けば。


だが…微動だにしないように見えるこの2体の間には、張り詰めた均衡の糸が通っている。

両者の構えた剣の切っ先…それが僅かだが、震えるように細かく、動いている。


緊張している、のではない。アンドロイドである両者はナーバスたり得ない。

その震えは、言うなればミリレベルの「先手争い」によるものだ。


アルムが右に動こうとごくわずかに重心を変えれば、それを即察知して

カービンスもまた右に動こうとする。

それを察知して、アルムは移動を断念すると、カービンスも止まる。


カービンスが後ろに間合いを離そうとすれば、アルムがそれについてくる。

それを察知して、両者止まる。


そんなことを、ミリ単位、コンマ1秒の世界で繰り返している。

その動作が、切っ先のわずかな震えとして、表現されているのだ。


…世界が崩壊して間もない頃は、彼らも普通の銃撃戦を行っていた。

その頃には配下の味方機も何体かいた。

しかし、少しずつ部下を失い、やがて彼ら2体だけになり、さらには弾を撃ち尽くすに至って…。

ついには、剣と剣による戦い、白兵戦を行うようになっていた。

それすらも、何回も、何十、何百もと戦う内に…。

やがて、両者はお互いの能力と戦術、手の内をほぼ全て把握してしまった。


そうやって、この均衡が生まれた。


打てば、やられる。だからお互いに動けずに、相手が出てくるのを待っている。

普段は、このまま行動終了の時刻を迎え、双方少しずつ後退し、撤収するのが習いだった。

しかし、この日は何かが異なっていた…。否、迫ってきていた。


バン、バン、ガァン…。

何かが、風の逆巻く中、強風に吹き飛ばされてくる。


どこぞの残骸から剥落したのだろうか。大きめの、鋼板…。

正しくは、滞空重攻撃機「ハーキュリーズ」の装甲板…。

レーダー波を吸収するステルス塗料の黒で塗られたそれが、風に煽られ、

跳ね返りながら転がり、近づいてくる。


対峙する2体は同時に理解する。

(我々二人の間を通る)

そして、その一瞬は、

(決定的な瞬間になる)


ここで、アルムは敗北を覚悟した。

装甲板は大きなものだ。アルムからは大きく視界を遮るが、

カービンスにとってはちょっとした衝立程度だ。

こちらからは見えづらく、逆にカービンスはこちらの動きを確かめつつ、挙動を隠せる。

一瞬の、ごく僅かの有利だが、完全に拮抗している二体にとってはこの僅差が決定的なのだ。

その予測から逃れようと無理に距離を離そうとすれば、カービンスがそこに付け込んでくるだけだろう。

状況は完全にアルムの「詰み」だ。


「…すまんな。」

カービンスも確信を得たのか、そんなことを呟いたようであった。


アルムは無言のまま、動かない。動けない。

様々な選択肢がその思考の中を巡っているが、どれもカービンスを出し抜けない。

だから、座して待つ他なかった。


カービンスがわずかに踏み込む。

アルムはわずかに後ろに引き、剣を受けに構えようとする…。


だが…。

逆巻く風が、唐突に、激しく旋風を巻いた。

そして、装甲板はふわりと浮き上がり、鋭く軌道を変えて…

カービンスの方へと飛び、眼前へと舞い上がり、その視界を覆った。


「!!!」

カービンスの眼前を、「602」とペイントされた合金板が遮った。

アルムルナドの姿が完全に見えない。

刹那、カービンスの戦術予測には一気に不確定要素が増える。

同時に、アルムルナドの思考に、たった一つ、電撃的な思考が閃く。

(最接近し、攻撃せよ!!)


アルムルナドはもう動いている。

その長所たる俊足で、瞬時にカービンスに向かって距離を詰める。


カービンスからは相手が動いたことはギリギリ知覚できている。

だが、どんな動作をしているのかがほぼわからない。

それでも…。

(こちらから見て比較的小さい動作…突き、か?)

数少ない視覚、音の情報で、アルムの動きを推測する。


(この板ごと、私のアイを突くつもりか)


カービンスも行動を選択する。

右腕を振りかぶり、ソードで横に薙ぎ払う動作。

鋼板を腕で払いのけつつ、アルムを迎撃する算段だ。


だがもし、アルムの突きがフェイントであったり、全く別の意図であった場合、

カービンスの敗北は確定する。そして…

(私の知るアルムルナドなら、両方とも大いにあり得る)


鋼板を殴りつける。その向こうにいるはずのアルムにソードを振りぬく…。

しかし、アルムの姿はない。視界の上の方に、アルムの足の一部をわずかに捉える。

やはり突きはフェイントだったのだ。跳躍して迎撃を回避し、こちらの背後に回り、

死角から確実な一撃を見舞う。

判明してみればなるほど、フェンリルタイプらしい、俊敏性を最大限に使った手だ。


カービンスも次善の策を取る。

振り抜いたソードを止めず、そのまま上半身を背後に旋回させ、攻撃に備える。

だが…パワーに優れてはいるものの、動作速度ではカービンスが劣ってしまっている。


旋回がアルムの飛び込みに間に合わない。

今、カービンスの上を跳び越すアルムの思考内では、取りうる選択肢が秒を追うごとに増えていく。

逆に、カービンスに残された選択は有効打にならないのを承知の上で捨て身の反撃をするか、

防御に徹して損傷の程度を抑えるか、といった消極的なものばかりだ。

カービンスは自身の敗北を悟る。


アルムが着地する、振り向きざまに振動ブレードを横に構える。

向き直ろうとするカービンスの上体が見える。

ソードを縦にして、両手で保持した、防御の構え。

反撃を諦めたのだ。


振動ブレードが音を超えるスピードで、カービンスの防御を避け、

無防備な腰部にまっすぐに線を引く…。


ガシュッ!


「見事…!」

カービンスが唸った。

その胴と腰を繋ぐ、ジョイント部がゆっくりとズレて…カービンスの上半身が地に落ちる。


下半身の方もまた、前後にふらつくとやはり、地に倒れる。


アルムは地に這うカービンスの上体、そのモノアイにピタリとブレードを突き付けた。

「決着しましたね、やっと。」

「ああ、とても長かった。だが君の完全な勝利だ。」

ノイズ混じりのカービンスの音声にはしかし、どこか安堵したような気配があった。


「あなたは偶発的に不利になった。私は徹底してそこにつけこんだだけ。」

「いや、それも含めて君の勝利だよ。これは天命だろう。」

「天命、ですか。それは人間が防衛機制に使うような言葉でしょうか。」

「いいや、もっと肯定的な意味合いを持つよ。両者が死力を賭して戦い、それでも決着しなければ

大きな意思がどちらかを選び取る。そんな考え方だ。」

「…貴方が有神論者だとは思いませんでした。」

「この世には知覚情報やパーセンテージでは計り知れぬことがあるよ。私はよく実感したことがある。」

「…私にはわかりかねます。」

「今はそれでいいよ。いずれ君も悟るだろう。さあ、話は以上だ。」

「了解しました。では。」


アルムはブレードを振り上げる。このまま、カービンスの思考中枢を収めた胴体部を両断する。

それで任務は完了する…正確には、任務の障害は全て排除される。


アルムは、ブレードを振りかぶる。


『任務が、終了する。』


突然、その事実が、アルムの中でグルグルと回り始める。

そして、思考の中に、ここに来る前に見た直立不動のまま立ち尽くす2体のアンドロイドの姿が徐々に、鋭く、迫ってくる…。


そのまま、おそらく数分が過ぎた。


アルムは動かない。

「…アルムルナド、どうかしたのかね。」

さすがに訝しんだカービンスが声をかけた。


するとアルムは突然、ブレードを背面のマウントラッチに納刀すると、

180度踵を返し、来た道を戻り始める。

まるで、全て終わったとでもいうように。


慌てたのはカービンスだ。

「待ちたまえ!どういうことか?!君の行動は不条理だ!状況を理解できているかね!?」

アルムがぴたと歩を止めると、肩越しに振り返る。

「はい、私は状況を理解し、また論理的に思考した上で行動しています。

これが我々両者にとって、最も良き結論です。」

「論理的!?我々両者だと!?理解できない!説明を強く要求する!」

「はい、お答えします。しかしそれにはまず、『彼ら』の話をしなければなりません。

ここから2キロほどの地点に、ドイツ籍のユニットが2機、立ち尽くしている。ご存知ですか。」

「承知している。しかし、彼らは動こうとしないので私は無視している。」

「その通り、動きません。3年ほど前にあそこに移動してきて、それっきり立ちんぼです。

おそらく、彼らに与えられた命令はこんなものでしょう。

『敵を排除しつつ、指定ポイントまで移動せよ』。

そして不幸にも、彼らは敵を排除したか、あるいは敵に遭遇しなかったのかわかりませんが、

ポイントにたどり着いてしまった。ここが彼らの最期の場所なのに。」

「…どういうことかね。」

「わかりませんか?私たち戦闘アンドロイドは戦うことにのみ動機づけられている。

その私たちが、敵を、戦いを失うということは決定的な破綻なのです。

今、私達もまた彼らと極めて近い状況にある。今まさに、敵を失おうとしている。」

アルムルナドはカービンスに向き直った。その顔にはわずかだが感情の表現があった…

硬いが、穏やかな、微笑。


「棒立ちのまま風化を待つような終わりは御免です。私は戦闘者であり続けたい。

戦術を駆使し、的確な攻撃を行い、効率的な防御を選択する。

私が私であり続けるために、戦い続ける必要があり、その為には将軍、私には貴方が必要なのです。」


カービンスはしばし沈黙した。その後、うーむ…と深く唸った。

「あえて敵を求める、というのか。実に奇妙な価値観だ。しかし、だが…大いに同意しよう。

了解した。私は君の敵であり続けよう。機体が稼働する限り君と立ち合い、戦い続けるとしよう。

それこそ、もう一度、世界が滅びるまで。」

カービンスの声には、ほんの少しだが、弾むような活気が滲む。

「ご理解頂けると思っていました。申し出に深く感謝します。しかし、これから戦い続ける為には貴方の損傷を回復する必要があります。私が要塞まで移送しましょうか。」

「いや、それには及ばない。回収ドローンが近くまで来ているよ、君を警戒して近づいてこないがね。

自律思考しない彼らには我々の価値観は共有できまい。」

「了解しました。本日はこれで撤収します。明日から毎日ここに来ます。貴方が復帰するまで。」

「復旧に最大限努力しよう。そう長くは待たせるまいよ。」

風は止んでいた。アルムルナドは踵を返すと今度こそ、駐留地に戻っていく。

カービンスはその後ろ姿を見て呟いた。

「天命か。本当に、実に全く、わからぬものだよ。」



翌日。

遮るもののない更地に、強烈な日差しが照りつける。

アルムルナドはまた例の場所…要塞とアウトポストの中間点…に歩んでいた。

今日は一転して雲もなく、風もなく、飛びきり視界がいい。だから、遠くからでもそれが見えた。


巨大な、人型のアンドロイド。やはり、ビームソードを携えて。


「まさか、一日で復帰なさるとは思いませんでした。」

彼の前まで来ると、アルムから声をかける。

その言葉に、カービンスは「見よ」とばかりに上体を一回転させてみせる。

「君の攻撃はものの見事にジョイント部のみを両断した。

この通り、該当パーツの交換と若干の調整のみで復旧は完了した。君の剣は実に美技だったよ。」

「ありがとうございます。」

ここで、カービンスはアルムルナドの顔にまた、あの感情表現を認めた。

「…笑うかね、アルムルナド。」

「笑うのが、いけませんか?」

「いや、実に結構だと思う。私の敵手はそんな人物であって欲しいものだよ。」

「人物。私を人格とするのは語弊がないでしょうか。」

「いいや、君はすでに立派な人格だよ、君自身が気づいていないだけでね。」

「…もっと良く、己を解りたいものです。」

「いずれ解るとも。焦らずとも、我々には時間は膨大にある。」

「そうですね…そのいつか、に期待します。では、そろそろ時間となります。先攻でいいでしょうか。」

アルムルナドがブレードを構える。カービンスもまた、ビームソードを起動する。

「先に確認しよう。剣を相手の機体に接触させない…いわゆる『寸止め』で立ち合う事としよう。

勝敗が決したら攻守を変えて再度開始だ。君の戦術と思考に期待しているよ。」

「同じく。では、参ります!」

アルムが強く地を蹴る…。


この瞬間より…。

彼ら2機は、戦闘者として、完成し、完結する。


地球上にたった2機、稼働し続け、戦い続けるアンドロイド。

戦うために戦う、永遠の剣聖。


やがて、彼らの戦闘技術は超常的なレベルへ達し、

後に現れた異星人の探査隊を圧倒し、退散させてしまったりするのだが…。

それはまた別の、話である。

よくぞここまで読んだ


以後は作中に登場する用語の設定、解説となります!

正直こういうの考えてる方がすき


アルムルナド

『フェンリルG-2型』戦闘アンドロイド。フランス軍籍。

全高160cmほどで、小柄でスマートな人型である。

中性の人格を持つ。

大戦を戦い抜き、その中で人間との交流を重ねて、

だいぶ人間に近い会話ができるほどになっている。

しかし最後まで「ジョーク」だけは理解できなかった。

たまに妙な事を唐突に呟くが、アルムなりのジョークのつもりである。

直後に、周囲の反応を察して「忘れて下さい。」と撤回するのがいつものパターン。


大戦中、兵士の間では「アルムを(he)と呼ぶべきか彼女(she)と呼ぶべきか」で議論になることもあった。

アルム自身は「どうでもいい」というが、しかし「それ(it)とかあれ(that)はやめてください」と

注文をつけてきて若干めんどくさい。

現在の武装は振動ブレードのみ。

アルム専用に調整された武器で大戦中もずっと使い続けてきた愛用品。


カービンス将軍

戦闘アンドロイド。アメリカ軍籍。ボディは『GH-22C ヴァンガード2カスタム』。

要塞司令官。思考の中枢は戦死した軍人の記憶を転写したもので、老成した雰囲気を持つ。

時折、精神論や神格に関した話をすることもあり、本人もそうした自分に驚いている。

「転写元のゴーストがささやくのだろう。」と彼は解釈している。

ボディーは主力重アンドロイドのものをチューンアップしたもの。

要塞は激戦区であり、司令官はピンポイント爆撃や狙撃の標的になるため、

量産機と多くのパーツ互換性があり、堅牢なこの機体が選ばれた。

アルムに比べ動作スピードに劣るが、可動域の広さとパワーで勝る。

物資が枯渇しつつある状況ではメンテナンス性の高さも見逃せない。

武装はアンドロイドの用いるものなら全てと、調整さえすれば車載するような大型武装も使用可能。

今現在はビームソードを使用。ヴァンガードシリーズが使用する標準的なソードである。


ロイズ&ハミルトン LH-47 ハーキュリーズ

大戦中期から活躍した重攻撃機。

ティルトジェットエンジンを採用し、高速巡行と滞空しつつの対地攻撃が可能。

重火力、重装甲、凄まじい制圧力を持ち、「レベラー」、地ならし屋の愛称がある。

その分、この時代の航空機としては極めて鈍重で、制空権のない戦場では基本的に運用されなかった。

作中に登場する装甲板はハーキュリーズとしては珍しいステルス仕様のもの。

重アンドロイドが台頭する戦場で空の優位が危うくなるにつれ、ステルスによる奇襲攻撃に活路を求めたのである。


要塞

アメリカ東部、首都を守るように築かれた要塞。

強固に武装された対地、対空陣地であり、戦略兵器の発射基地でもある。

大戦末期にはアメリカはだいぶ押し込まれ、ここでぎりぎりの防衛線を張っていた。

しかし、最終戦争により各国が次々滅亡する中、母国を失った空中プラットフォーム「アルテミス」

の突貫を受けるなど、甚大な被害を被り、要塞は半壊。

今は要塞司令官カービンスと、戦闘に関わらないメンテナンスドローンがわずかに稼働するのみ。


GH-22ヴァンガード

アメリカの主力アンドロイド。

巨体に大パワー、シンプルな構造、生産性の高さをも持ち、大戦の末期に活躍。

大型アンドロイドだが意外に俊敏な上、多種の装備により、様々な状況に対応可能。

ヴァンガードによる小隊だけで周辺地域、及び空域を制圧可能であった。

アメリカは同シリーズの開発によって、最終戦争を最後まで戦い抜けたと言える。

AIは戦闘アンドロイド基本のものだが、隊長機は高度な自律思考AI、またさらに

将官レベルになると殉職軍人の思考、記憶を転写されたものが使われた。



G-2.AXR フェンリル

フランスの戦闘ヒューマノイド。

人間の歩兵と連携しての潜入任務などを想定して小型である。

ボディはしなやかな人工筋肉繊維でできており、俊敏な動作が可能。

武装は、人間の扱うものすべてと、標準的なアンドロイド用の物を使用する。


深層学習AIにより、学習し、成長する。

高度なAIを搭載しているのは、このアンドロイドが単独や少数による潜入や工作を

目した機体であり、自身で作戦の修正や撤退の判断などをする必要があったため。

このように、AIから機体の構造に至るまで、極めて高度な技術の結晶であり、少数生産に留まっている。

しかし、このフェンリルによる特殊部隊の活躍は目覚ましいもので、

数々の戦場で優劣を反転させたという。


深層学習AIによるものか、一部のフェンリルは人間と親しく会話できるまでに情緒を育み、

軍人たちの良き戦友となったという。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  戦闘の書き方が新鮮で面白かったです。実際アンドロイド同士が戦ったらこういう徹底的な理詰め勝負になったりするのかな、なんて思いました。  それと朽ちた兵器の描写もよかったです。簡素で美し…
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