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【書籍化&コミカライズ】青薔薇姫のやりなおし革命記  作者: 枢 呂紅
19.ハイルランドよ、永遠に
136/155

19-1

長らくお待たせいたしました。



 一筋の流れ星が、藍色の空を駆け抜ける。


「おめでとう、アリシア。――そして、ありがとう」


 細く尾を引く星の欠片の下で、少年は色素の薄い髪を風に揺らす。星の使いの姿はすぐ目の前にあるのに、なぜだかアリシアは彼がとても遠い場所にいるように感じる。


「君は成し遂げてくれた。……ああ、僕にはわかるよ。彼が、喜んでいるんだ。彼だけじゃない。僕の大切な、古い友人たちの声がする」


 ああ、これが最後かと。そんな不思議な確信に、アリシアの胸はきゅっと痛む。それを見透かしたように、星の使いはひどく優しく、美しい笑みを浮かべた。


「もう行かなくちゃ。けれど、忘れないで。僕は守護星。ハイルランドの守り神。僕はどんなときも、ハイルランドに祝福を捧ぐ。そして君に――運命を変えた、奇跡の薔薇姫に」


 まるで、どこかで誰かが魔法をかけたように、星たちが夜空をゆっくりと流れだす。いくつもの光の筋が生まれる下で、星の使いはアリシアの両頬を白く小さな手で包み込んだ。


 君に、星の加護を。

そう囁いて、星の使いはアリシアの額に軽く口付ける。


 次にアリシアが瞼を開いたとき、すでに星の使いの姿はなかった。

 草原にひとり佇む彼女の頭上には、ただ、満天の夜空が広がるだけだった。







 車輪が石に乗り上げたのか、馬車がガタンと大きく揺れる。


その衝撃は、深い眠りのなかにあったフリッツ皇子の意識を無理やり浮上させたらしい。女性のように長いまつ毛がぴくりと動き、重く閉ざされていた瞼がゆっくりと開く。薬により眠らされたためか、気だるげに身体を起こした皇子は、瞳が焦点を結んだ途端にはっと息を飲んだ。


「ここは……っ」


「落ち着いてください、フリッツ様。あなたは今、安全です」


 カーテンをはねのけ窓の外を確かめようとしたフリッツが、差し込む光の強さに呻いて、とっさに手で目を覆う。その腕にそっと触れて、シャーロットは努めて落ち着いた声音でフリッツに語り掛ける。


 話しかけられるまで、シャーロットの存在に気づいていなかったのだろう。二三度まばたきをして目をならしてから、フリッツは訝しげに彼女を見つめた。


「シャーロット……? ここはどこだ? 私たちは、一体どこに向かっている?」


「オルストレです。ここはまだエアルダール国内ですが、明日の夕方にはオルストレの宮殿に到着する予定になっています」


「オルストレ!? なぜ、そんなところへ」


「留学です。しばらくの間、フリッツ様はあちらの国でお過ごしになるよう、陛下がお決めになられたんです」


 その答えに、フリッツ皇子は言葉を失った。


 彼の混乱も無理はない。キングスレー城での騒動のあと、フリッツは自室で軟禁状態にあった。それが、今朝になって突然、複数の兵を伴ってエリザベス帝が部屋を訪れた。そこで、まともな会話もないうちに妙な液体を飲まされ、目が覚めてみれば今の状況である。


 目を見開き呆然とする皇子に、シャーロットが一枚の書状を差し出した。


「こちらを。お目覚めになられたらお渡しするようにと、陛下よりお預かりしました。読めば、すべてわかるからと……」


「いらぬ‼」


 カサリと音がして、振り払われた少女の手から書状が落ちる。はっと我に返ったフリッツは、慌ててシャーロットを見た。だが彼女に皇子が手を出したことを責める様子はなく、まっすぐな瞳に皇子を映していた。


「殿下――フリッツ様。お願いです。手紙、ちゃんと読んでください」


「……必要、ない」


「どうしてですか? エリザベス様からのメッセージが書いてあるんですよ?」


「読まずとも、わかっている!」


 叫んだ皇子は、表情を歪めてシャーロットから目を逸らした。


 取り繕う余裕もなく、彼は己がみじめであった。底なし沼に足を取られたかのような絶望と怒りに、眩暈すら感じるほどだ。だから彼は、堰を切ったように嘆きを吐き出す。


「つまり私は、用なしというわけだ。オルストレに送るのが、その証拠だ」


「そんなことありません! だって……」


「人質だよ。君だって、わかるだろう?」


 隣国オルストレと言えば、強大化するエアルダールを警戒して長年いがみ合ってきたリーンズスと同盟を結んだことで、最近諸外国をざわつかせている。もともとはエリザベス帝も、そうした南方の動きを警戒してハイルランドからアリシア姫を招いたのだ。


 そのオルストレに、第一皇子であるフリッツが送られる。留学といえば聞こえはいいが、要は、外交の道具として売り渡したということなのだろう。


「陛下の血を引くのは、何も私だけではない。……皇帝にたてついた皇子など、下手に処分しても醜聞が広がるばかりだ。ならばいっそ、人質として有効活用したほうがまだいい。実に母上らしい、合理的な判断だ」


「違います! 陛下があなたをオルストレに送ると決めたのは、そうじゃなくて」


「なら、なぜ私を裁かない‼」


 悲痛な響きに、シャーロットはぐっと言葉を飲み込む。そんな彼女の前で、フリッツはぎりっと奥歯を噛みしめた。


「私は、私の意志で、あの場所に立った。帝国の――皇帝の、駒として生きることはごめんだと。なのに、この様だ。……いっそ、殺されたほうがまだマシだ。陛下には、私の意志など意味がない。糾弾する価値すらない。だから、私を……!」


「いい加減にしてくださいっ‼」


 ぱんと乾いた音が響き、頬がじんと傷むのをフリッツは感じた。だが、痛みよりも何よりも頬を張られたことそのものに驚いて、フリッツは目を丸くして前を見た。その視線のさきに、愛らしい顔に怒りを浮かべて、こちらを睨むシャーロットがいた。


「どうして、フリッツ様はいつもそうなんですか⁈ なんで、そんなにひねくれているんですか⁈」


「ひねくれてる? 私が?」


「そうです! ひねくれものの、わからず屋です!」


 とても一国の皇子に向けたとは思えない発言に、フリッツは張られた頬を片手で押さえたまま唖然とする。一方シャーロットは興奮が冷めぬまま、女帝からだという手紙を拾って皇子に付きつけた。


「手紙、読んでください」


「だが、」


「今すぐ読むの‼」


 ぴしゃりと有無を言わさない剣幕に、思わずフリッツは息を飲む。やや逡巡してから、皇子は手を伸ばして書状を受け取り、丸められたそれを仕方なく開いた。


 ――そこに書かれていたのは、確かに予想通りの内容ではなかったが、といって目を瞠るものというわけでもなかった。見覚えのある字で、事務的に、端的に、オルストレの文化・政治を学んでくるよう指示が書いてある。


 しかし、最後の一行に行きついたとき、皇子の目はそこに吸い寄せられた。言葉もなく、ただ食い入るように文を読むフリッツに、シャーロットがそっと声を掛ける。


「陛下は、フリッツ様にやりなおして欲しいんです」


「やりな、おす……?」


「そうです。けれど、どうしても今は、国内にいてはフリッツ様をお守りできない。だから陛下は、フリッツ様の留学をお決めになったのです」


 信じられない思いで、フリッツはもう一度手紙に視線を落とす。


 オルストレと友好を結び、己の力を証明してみせろ。

その後、エアルダールへ戻ってこい―――。


 手紙の最後は、そう締めくくられていた。


「父は、すべて自分の罪だと認めました。けど、一部のひとびとはあの日の光景を見て、あなたに疑いの目を向けています。……いまは、時間が必要です。それにちゃんと功績があれば、国に戻ったあともみんながあなたを認めてくれる。陛下はそこまで考えて、オルストレを選ばれたんですよ」


 かさりと音がして、フリッツの手から手紙が滑り落ちる。とっさにそれを拾い上げようとして、彼は自分の手が震えていることに気づいた。


「なぜだ」震える手を押さえて、彼は呟いた。「なぜ、母上はこんなことをする?」


「まだ、わからないんですか」


 少しだけ呆れたように、シャーロットが肩を落とす。上目遣いで皇子を見つめる大きな瞳には、ちょっぴり非難の色が混じる。


 短く嘆息してから、シャーロットは唇を開く。


「愛しているから。あなたに、期待しているから」


 だからに、決まっているじゃないですか、と。

 その一言は驚くほど素直に、すとんとフリッツの胸に届いた。


「――………あ」


 気づいたときには、ひと滴の涙が頬を滑り落ち、床に落ちた手紙に染みを作っていた。驚き、なすすべもなくそれを見つめる皇子の目から、さらにふたつの滴がぽたぽたと落ちる。


 言葉もなく、身じろぎひとつしない彼を、ふと、柔らかな感覚が包み込んだ。


 言うまでもなく、それはシャーロットだった。向かいの席から皇子のとなりへと移った彼女は、そっと彼を抱きしめたのだった。


「大丈夫ですよ。もう、大丈夫です」


 優しく、温かく。まるで泣く子を慰める母親のように、シャーロットがフリッツの髪をなでる。


「いろんなものを見て。たくさんの人と会って。もう一回、やりなおすんです。心配しないで。フリッツ様がなやんだときは、私がそばにいます。一緒に空でも見ながら考えましょう。だから――だから、今度はちゃんと自分を、みんなを好きになってくださいね」


 包み込む腕のなかで、声もなく、フリッツの唇が歪んだ。


 力なく下ろされていた手が、恐る恐る彼女の背へと回される。怯えるように慎重な手つきでシャーロットに触れた皇子は、初めはそっと、続いてぎゅっと強く、彼女を抱きしめた。


 ひとつの動乱が過ぎ、回る車輪がふたりを運んでいく。

 だがきっと――この道は、きっと。必ず、どこかへ繋がっている。


 なぜなら彼らも、新たな世界に生きるひとりであるからだ。






エアルダール皇帝エリザベスは、一連の騒動の首謀者として宰相エリック・ユグドラシルを捕らえた。ほかにも、彼の協力者として数名が牢に入れられたが、基本的には重く責任を負うのはユグドラシルひとりであった。それが女帝の意向であり、同時にユグドラシルの望んだことだ。


ユグドラシルはただひとつの真実――第一皇子フリッツが協力者であったことを除いて、長年にわたる策謀のすべてを速やかに明らかにした。これにより、ユグドラシルによるハイルランドへの内政干渉とロイド・サザーランド暗殺への関与が正式に認められ、女帝エリザベスはそれらについてジェームズ王に謝罪した。


 すべての罪を告白したユグドラシルは、宰相地位の剥奪はもちろん、キングスレーからの追放、名家ユグドラシルからの除籍と極めて重い処分が下されたのち、最終的に僧院へと送られた。


 なかには、これを疑問に思うひともいた。エリザベス帝であれば、ユグドラシルの処分は即刻処刑か、そうでなくてもダンスク城塞へ幽閉するかと思ったのだ。


 なぜ、彼女がそれをしなかったのか。そのことについて、エリザベスは最後まで側近の誰にも明らかにしなかった。とにかく言えるのは、僧院に入ったユグドラシルは静かな日々のなか、死んでいた者、そして犠牲にしてしまった者たちへ祈りを捧げて過ごしたという。


 一方、ユグドラシルと共謀していたことを伏せられたフリッツ皇子はというと、二年のオルストレ留学へと旅立った。その付き人、ないしは御目付役として彼に同行したのが、シャーロット・ユグドラシルである。


 ユグドラシルが失脚したのち、彼の妻とその子たちは窮地に立たされた。エリックは女帝に逆らった罪人であり、すでに名家ユグドラシルから除籍されている。おまけに妻は元王族、子は血のつながりのない貰い子たちと、どちらにしても扱いが非常に難しい。こうした事情もあって、ユグドラシルの親戚たちは救いの手をなかなか差し出さなかったのだ。


 そんななか、彼らの後見人として名乗りを挙げたのが、クラウン外相夫妻だった。


 結果として、それは妥当な収まりどころと言えた。ベアトリクスとユグドラシルの妻は元王族という点で共通していたし、娘のシャーロットはもともとクラウン外相邸に行儀見習いに出ていて交流がある。それに、先の混乱のなかシャーロットがベアトリクスと行動を共にしていたことを、多くの人が知っていた。


 とにかく、シャーロットはクラウン家という後ろ盾を得たうえで、皇子と共にオルストレへと渡った。――実はその裏には、女帝とベアトリクスのとある思惑があったことを、シャーロット本人ですら知らない。


 様々な点で不安定ではあるものの、女帝は皇子に期待をしている。そんな彼の心の支えとなりうる、強く勇気があり、芯の通った娘。彼女がもしも留学を経たあと、変わらず皇子のとなりにあることを望んでくれるなら、そのときはと――――。


 こうして、アリシアにとっては前世から続く長いながい闘いの旅は、ようやくゴールを迎えたのであった。


「まさかの宰相告発、女帝陛下の異例の謝罪、おまけに第一皇子の突然の留学……。その全部に関わっているなんて、まったく君はケタ外れな子だね」


 そういって首を振るのは、オルストレの第二王子ナヴェルだ。やれやれと髪をかきあげる様は、いつかの式典と同じに南国仕込みの色気がぷんぷんと香る。


 その向かいに座るアリシアは、澄ました顔で紅茶に口をつける。フリッツのオルストレ留学を女帝に提案したのは自分ではない――そんなことを内心で思いながら。


 かちゃりとカップをソーサーに戻し、アリシアは逆にいたずらっぽく微笑む。


「ナヴェル様は、こちらにいていいのですか? 明日が、フリッツ殿下がオルストレへと入られる日だったはず。てっきり国境へお迎えに上がるのはナヴェル様かと」


「いいんだ。国境には兄上が出迎えに行くから。兄上は大喜びだよ。フリッツ皇子と友好関係を築ければ、兄上の評価は急上昇だ。王太子としてこれ以上ない功績になる。――って、君にはそんなこと説明するまでもなかったね」


「さあ? 私には見当もつきません」


 にこりと笑って首を傾げるアリシアに、ナヴェルは肩を竦めた。


 一連の騒ぎについてフリッツ皇子の責は問わず、すべてユグドラシル個人の犯行とする。ミレーヌ殿に乗り込んだクロヴィスは、そのように女帝に約束した。その中で、彼は皇子の国外留学をエリザベスに持ち掛けたのである。


 エリザベス帝が毒に倒れたあと、臨時とはいえエアルダールの指導者としてフリッツは立ち、そのうえでハイルランドを糾弾した。当然、フリッツもユグドラシルと組んで、わざと隣国との関係を悪化させたのではと疑う者が出てきてしまう。


 だからこそ、ほとぼりを冷まし、汚名を返上するほどの手柄を立て得る場所に皇子をしばらく送るべきだと、クロヴィスは女帝を説得した。


 留学先としてオルストレをすすめたのも、クロヴィスだ。


オルストレと言えば、エアルダールに対抗するため王子と王女の結婚という形でリーンズスと同盟を結んだのが記憶に新しい。しかし、二国がエアルダールに戦争を仕掛けるかというと話は別だ。なぜなら同盟にハイルランドが加わらなかったことで、国力、地理の双方において、優位性に欠けているのだ。


そうなると、彼らが取る道はひとつ。エアルダールおよび他国との関係を地道に深め、諸国のなかでの影響力を強め、エアルダールと対等に渡り合えるだけの力をつけることだ。これに関し、オルストレの第一王子が積極的に外交に乗り出しつつあると、補佐室では情報を摑んでいた。クロヴィスはそこに目をつけたのだ。


彼の提案を認めたエリザベス帝も、ただちに動いた。


同盟国側から見れば、第一皇子の留学はまたとない申し出だ。間違いなくエアルダールと歩み寄るチャンスとなるし、ここで恩を売ることで、互いに対等な外交相手であると女帝に認めさせることも出来る。


とはいえ、オルストレも突然の申し出に警戒の色を見せた。しかし、ハイルランドが間に入って交渉にあたったことで、同盟国側も皇子を受け入れるメリットのほうに目を向けると決めたらしい。こうして、異例の速さでフリッツの留学がまとまったのである。


「オルストレとリーンズスの同盟国。そしてエアルダール帝国に、中立国ハイルランド。3つの軸からなる均衡は、絶妙なバランスで調和を保つ――。民の興隆こそが国の繁栄。ハイルランドは、君は、そう言いたいのだろうね?」


「どうでしょう。しかし、皆がそのような考えのもと選択を行えば、世界はもっと平和になるでしょうね」


「ふふ。ロマンチックな夢を語るものだよ。たまにはその夢に溺れるのも悪くない」


 組んでいた長い脚をはらりと崩し、ナヴェルが立ちあがる。合わせて立ち上がったアリシアに対し、彼は白い歯を見せて南国らしい笑みを浮かべた。


「そろそろ行くよ。馬を飛ばせば、明後日の友好式典には間に合うだろう。フリッツ皇子のお相手は兄上に任せるけど、麗しの乙女たちが私を待ちわびているから」


「お気をつけて。兄君さまにも、よろしくお伝えください」


「ありがとう」


 ウィンクをひとつ残し、ナヴェルは立ち去りかける。だが、ふと何かを思いついたように立ち止まると、夜会でよく彼が見せる、情熱的な流し目をアリシアへと送った。


「ところでアリシア、覚えているかい? 前に言ったよね。君が恋破れ涙に頬を濡らすことがあれば、私の胸はいつでも空いていると。今でもそれは変わらないけど……どうかな?」


 面白そうにこちらを見つめるナヴェルに、一瞬アリシアは言葉に詰まった。それから少しだけ考え、年相応の娘としてはにかんだ。


「必要ありません。受け入れてもらえるまで、何度でも想いをぶつけるつもりだもの」


「いい答えだ! 強い乙女は好きだよ。応援したくなる!」


 けらけらと嬉しそうに笑うと、「チャオ!」と手を振って、今度こそナヴェルは背を向ける。そうして扉の近くに控えていた側近を伴い、サロンを後にした。


 残されたアリシアは、己の頬にそっと触れる。その掌にはわずかに熱が伝わった。


「アリシア様」


 ふいに掛けられた声に、アリシアは扉のほうへ目を向ける。そこには、ナヴェルとその側近を見送り、戻ってきた王女付き補佐官クロヴィスの姿があった。


「ありがとう。ご苦労さま」


 労うアリシアの声には、ほんの少しだけ緊張の色がある。おやと小首を傾げる補佐官に、アリシアは天井にまで届く大きな窓から広がる空を指し示した。


「とても気持ちのいい天気よ。すこし、外を歩かない? ――あなたに、ちゃんと話したいことがあるの」




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