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セキセイインコ、君に敬す  作者: 多奈部ラヴィル
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セキセイインコ、君に敬す

セキセイインコ、君に敬す


 セキセイインコは被捕獲動物である。ゆえに病気になっても元気がなさそうに、どこかを病んでいますっていう風にはふるまうわけにはゆかぬ。そういう風にもしふるまってしまったら、捕獲動物たちの格好の標的になるからだ。

 以前飼っていたセキセイインコのプーチンちゃんもそうだった。元気だったころと病にむしばまれていた時期をはっきりと区別できるわけでもないけれど、つまりおそらくは元気だったころ、昼寝はよくしていたが、休憩をとっているような様はあとから考えてみると見たことがないような気がするのだ。

 プーチンちゃんは元気いっぱいにケージ内を暴れ、少し覇気がないような様子を見せたのち、ことりと死んだ。セキセイインコの死に方とはそういうあまりにもあんまりな、悲しい死に方なのである。

 しかしそこにセキセイインコの少しの武者震いを感じてはもらえないだろうか? ぎりぎりまで戦い、力尽きて覇気が出ず、勢い余って死ぬ。そこに尊さを感じえないだろうか?


 そういうわたしもセキセイインコ並の被捕捕獲動物なのである。 それゆえの迎合性、それゆえの饗応性。情けないといわないでほしい。

「プライドはないのかっ」

「うるせい!」

それこそがわたしの誇りとする、プライドポイントなのだ。病を持ち、いたずらに己を傷つけていたころはやっと過ぎ、今掃除をしたり洗濯をしたりご飯を作ったりして、いつも脈は早く、なにやら胸がドキドキし、掃除機を持ったままいたずらに部屋部屋を行き来し、いつのまにか身体はぽっぽとしだし、熱を測ればなにゆえか七度五分。おでこに貼った冷えピタをはがれ落ちてこぬよう豆絞り。滑稽な姿に見えるのならば、笑ってもよろしい。人に会えば、なにかを求められれば、おっしゃる通り!と迎合しつつ笑い、泣き、意見を述べるようにみせつつ饗応し、笑顔を見れば心からほっとする。お追従をいっているわけじゃない。ただ笑顔が見たいのだ。

けれどもしかしたらその直後に倒れるかもしれぬ。その性質を笑い給うな。か弱きセキセイインコの小さな胸に宿る精一杯の矜持とプライドを笑い給うな。セキセイインコ、君に敬す。


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