探検僕の街(極少)4
病欠です。はい。
どれだけ見返しても、爺さんが描かれた肖像画だ。白髪を伸ばした髭もじゃのサンタクロースのような爺さんが礼服のようなものを身に纏い、立派な作りの帽子をかぶって俺の方を見ている。あ、頬が紅潮してきた。
『そんな、まじまじと見られると恥ずかしいぞい』
頭の中に響く声と共に、絵画の爺さんの口元がもぞもぞと動く。どうやらマジで、この絵が喋ってるっぽい。
「ばぁあーあ?」
・・・あー、喋れんかったや。どうしたもんか・・・
『この部屋の管理者と言った所かの。トレッキンと言うぞい』
・・・俺の言葉、分かるのか!?
『わからん!』
即座の返答に項垂れる。と言うか首が痛い。
『だが、表層意識は読めるでな。念話と組み合わせれば意思疎通ぐらいはできるぞい』
マジか! 俺は其の後、めちゃくちゃ話した。
いや、言葉が通じないって、物凄いストレスなんだよ。ともあれ、トレッキンは、この部屋を管理する魔導人格なんだそうな。主は誰かと聞いたら、この部屋に無事に入ってきた人だとか。本当の意味で、部屋の管理こそが主体なんだと実感しました。廊下が綺麗だったのもトレッキンの仕業らしい。
(魔導人格ってどのぐらいの人数いるんだ?)
『大した数はおらんのでは無いかな。儂の力の源が力の風で有るからして』
(力の風?)
何でもこの地は、この間見た高地〜風の棚〜から、エネルギーが込もった風で吹き下ろしてくる場所の一つなんだそうな。まぁ、形式的には色んなものが有るらしく、風だったり波だったり、歌だったり波動だったり、水だったり湯だったり、この世界には濃いエネルギーを撒き散らす場所が幾つもあり、色々な呼ばれ方をするそうだ。トレッキンは、降りてくる風をエネルギーに、限定的な範囲で莫大な力を行使出来るように作られたとの事。
もっとも其れゆえに、消費コストが高すぎて、他の場所には移動出来ないらしいので、完全に特化型なんだな。ピーキー! 良いじゃ無いか。ロマン其のものだとも。現実じゃ無茶出来んが今ならやりたい放題だ。
俺は其の後も、トレッキンと、色んなことを話した。