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無冠の傑作

仕事出来る人と、仕事教えるのが上手い人と、仕事を管理するのが上手い人のスキルは、ほぼ重複しないのですよね。

『魔道を辞めたい人の為の本 』


 何百年か前の大魔導師が、書きあげ見事なぐらい売れなかった本だそうな。

 もっとも其れには理由があるらしい。


『この本は、魔道使いを止めた人間が何度か暴発事故を起こした為に書かれた本じゃぞい』


(暴発? 魔法って暴発するのか?)


『ある程度力を付けたが制御出来なくなった場合などには、起きるぞい』


 トレッキン曰く、魔道を突き詰める為の施設には、制御する結界魔道が込められてることが普通なんだそうな。そりゃ暴発前提で教えるならばそうなるだろう。そして、中途半端な状態で、その道を諦めた人が、一般人に戻ってから、昔の感覚で使って暴発させるのが暴発事故だそうな。


『この本は、揶揄込みで書かれた、独学で行える制御技術のマニュアルじゃぞい』


 あー、その道を諦めた後、事故起こさないように制御技術を高める為の物なのか・・・ん?


(なぁトレッキン)

『なんぞい?』


 自前の力を制御出来てないって落ちこぼれだよな。


(辞めてくような落ちこぼれってどんな状態なんた?)


 俺がそう尋ねると、トレッキンはとてもとても悪い笑顔を見せる。


『勿論、力が小さすぎて大成できなかったか、師がへぼ過ぎて制御能力を身に付けさせてやる事ができなかった場合が大半だぞい』


 まじかっ! じゃぁさっき言ってた揶揄って。


『力がある者と、導くだけの技術を持つことは全く同義では無いぞい。このぐらいまでなら独学でも全く問題ない事を提示した、入門魔道書の傑作中の傑作だと、トアル様は絶賛されてたぞい』


 うわーーーーっ。


(・・・もしかして、この本、入門書なのに、高レベルの人の方が評価が高いのか?)

『高レベルの人にのみ、評価が極めて高いが正しいぞい』


 まじかーっ! こりゃ書いた人、よっぽど鬱憤溜まってたんだろうなぁ。


『魔法の使い手をその道を極めようとする者を魔道士、その道を諦めたが今ある分を使う事はできるまじない士。それに対して、本当の意味で魔道士を作れる者の事を、魔導師と呼ぶぞい。どれも、玉石混交過ぎるのが問題ぞい』


 絵の中でオーバアクションで肩をすくめて見せるトレッキン。本当に何に拘って作られてるんだか。

 その様子に呆れながらも、俺はこの本を極めてやろうと心に決めていた。

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