8.伝説の武器
宿屋で休憩中の五人。
「みんな、私薬屋行ってくるね」
緑はそう言って宿屋を出て薬屋に向かった。
「いらっしゃいませ。……あ!」
メリーナが緑に近づいてくる。
「本当に来てくれたんですね」
「お礼って何なの?」
「ちょっと待ってて下さい」
メリーナが物置から剣を持ってくる。
「これです。お父さんが昔、勇者を倒すために使ってた剣です」
「お父さんって、もしかして、シンドリーさん?」
「よくご存知ですね」
「私、二代目の魔王だから」
「そうなんですか。じゃあ、緑さんたちは勇者を倒すために旅を?」
「ええ、そうよ」
メリーナは世界地図を取り出した。
「ん?」
「噂によると南西の島に勇者は住んでるそうですよ」
「勇者ってどんな人物なの?」
「それはもう酷い人ですよ。道行く人からお金を巻き上げたり、村を襲ったり。だからお父さんは勇者を倒そうとしたんですね。でも……」
「逆にやられちゃったって訳か」
「はい……」
「この地図もらっていい?」
「旅のお役に立つならどうぞ」
緑は世界地図を畳んで懐へしまった。
「じゃ、私はみんなの所に戻るわね」
緑はそう言うと、宿屋の客室に戻った。
「ミドリー様、どうでした」
「先代の魔王、シンドリーが使ってた剣をもらったわ」
緑はもらってきた剣をみんなに見せた。
「お!? これは伝説の武具の一つじゃねえか!」
「本当!?」
「これは禍殿鎌鼬だ。間違いねえ」
「禍殿鎌鼬って?」
「妖怪カマイタチを封印した剣のことだ。これを装備出来るのは魔王だけだと言われている。それ以外の者が触れば体を乗っ取られるらしいぞ」
「何そのキケンなにおいのする装備は?」
「でもおかしいな。緑は魔王じゃないんだろ?」
「そう言えばそうね」
「魔王として召喚されたから魔王と認めてくれたんじゃない?」
「そんな都合のいい話があるか。でも不思議だ……」
「そんなことどうでもいいわ。早いとこ出発しましょう? メリーナから聞いたけど、勇者は南西の方向にいるそうよ。伝説の武具を集めながら勇者を捜しましょう?」
四人は頷いた。
「じゃあ、出発!」
五人はルイスを発った。