6.宿屋のいじめられっ子
次の朝、緑たちは目を覚ました。
ロビーへ行くと、クロルが倒れていた。
「クロル!」
緑がクロルに駆け寄ってその体を揺さぶる。
「クロル、大丈夫!?」
「う……ううっ……」
目を開けるクロル。
「何があったの?」
「昨日の人たちにやられたんです……」
「ああ、あのいじめっ子たち」
(赦せない……!)
緑は宿を飛び出した。
広場で昨日のいじめっ子たちが屯してる。
「ちょっと貴方たち!」
「げっ! 魔王だ! 逃げろー!」
いじめっ子たちは逃げて行った。
カルロスたちが外に出て来る。
「いじめっ子たちは?」
「逃げたわ。さて、行きましょうか」
緑たちは町を出ることにした。
「ミドリー様、伝説の武具はどうするんですか?」
「冒険が始まってすぐ手に入れられるわけないじゃない」
「そうなんですか?」
「知らない。でも、大概のRPGはそうなってるわ」
「RPG……?」
「ゲームよ。ゲームではそうなの」
「ここは現実世界ですよ?」
「私から見れば異世界だけど?」
「そう言えばミドリー様は魔界から来たんでしたね」
「魔界じゃないわよ。人間界よ」
「人間界? 魔王なのに?」
「カルロスくん、君の中では私が魔王になってるみたいだけど、私はれっきとした人間よ」
「ええ!? じゃあ僕は召喚に失敗したってこと!?」
「そうなるわね」
「そんな……」
「カルロス、そんな落ち込むなって。失敗は誰にだってあるんだぞ」
「そうですよね。じゃあ行きましょうか」
五人は町を出た。
「で、結局私の役割は魔王なの?」
「召喚されたからには魔王になってもらいますよ」
「マジですか……」
緑は溜め息を吐いて肩を落とした。
その時、目の前に地球の猫に似たモンスター、プリニャンが現れ五人に襲い掛かった。
五人は慌てて回避し、反撃に出た。
「うりゃ!」
ドリューの攻撃。
プリニャンに三のダメージ。
エヴァンジェリンの魔法攻撃。
プリニャンに五のダメージ。
プリニャンは倒れた。
それぞれ六の経験値を手に入れた。
タラタラタッタッター♪
緑はレベルが二に上がった。
ドリューはレベルが二に上がった。
エヴァンジェリンはレベルが二に上がった。
クロルはレベルが二に上がった。
カルロスはレベルが上がらなかった。
「ええ!? 何で僕だけ!?」
「知らないわよ。地の文に聞きなさい」
「地の文って何ですか?」
「私たちの物語を進めてくれるストーリーテラーよ」
「すとおりいてらあ?」
「俺っちも初めて聞くな」
「もうういわ。行きましょう」
緑は歩き出した。