4.誘拐されたエヴァ
その夜、緑は目を覚ました。
ベッドを出て窓から夜空を眺める。
(私、元の世界に帰れるのかな?)
緑は自分のいた世界のことを考えた。
警視庁の同僚、実家に住む家族。
ガチャリ──扉が開き、エヴァンジェリンが入ってきた。
「おや、目が覚めてしまったかい」
「ああ、エヴァさん」
「緑、だったね。あんた、本当はこの世界の住人じゃないんだろ?」
「どうしてそれを?」
「ワシは魔法使いじゃが、同時に夢占い師もしているのじゃよ」
「夢占い師?」
「先刻、あんたの世界を水晶玉で見させてもらった。そこは科学が発達した世界じゃったな」
「エヴァさん、私は元の世界に帰れるんでしょうか?」
「使命を果たせればな。まあ、帰れなかったとしても、ワシがその方法を探してやるさね。さて、今日はもう遅いから、早く寝なされ」
緑はベッドに戻った。
翌朝、緑たちは目を覚ました。
寝室を出る三人。
「あれ?」
「エヴァさんがいませんね」
「あのばあさんどこ行った?」
緑はテーブルの上に置かれた紙切れに気付く。
「何か書いてあるわ」
緑はこの世界の字が読めないので、カルロスにその紙切れを渡した。
「ええ!?」
「どうしたの?」
「ばあさんは預かった。返してほしくば、イカロスの涙を今日の夜に村の墓地に持ってこい、そう書いてあります」
「イカロスの涙って?」
「宝石さ」
「それで、その宝石さんはどこに眠ってるのかしら?」
「さあな。それを知ってたらとっくに俺が取りに行ってらあ!」
「取り敢えず、エヴァさんを助けに行きましょう」
三人は夜になるのを待ち、エヴァンジェリンを助けに墓地まで向かった。
墓地ではエヴァンジェリンが縄で縛られており、その傍らにフードの男が立っていた。
「イカロスの涙は持ってきたんだろうな?」
「持ってきてないわ」
「何だと!? ばあさんがどうなってもいいのか!?」
「魔王をナメないでもらえます?」
「ま、魔王だと!? ひええええ! お許しをおおおお!」
フードの男は慌てて逃げて行った。
「何も考えてなかった割には何かうまく行ったみたい」
「お前さんたち、助けてくれてありがとうな」
「仲間だし、当然よ!」
こうしてエヴァンジェリンを救出した緑たちは、彼女と共にカボチーの村を後にするのだった。