1.魔王の使いに召喚されました
十八歳の少女、成瀬 緑。職業は警視庁の警察官。所属部署は刑事部捜査一課だ。
それは仕事明けの帰宅中のことである。
緑の前にいきなり変な物が現れた。
これは緑以外には見えていない。
緑は指でそれを触れてみた。
すると、緑はその中に吸い込まれてしまい、気が付くと、どこかの森の中に居た。
「やったー、召喚に成功したぞー!」
「……?」
緑は声のした方を向いた。
その先には短髪の男の子がいた。
「あのー、ここは?」
「オラクルーの森ですよ」
(オラクルーの森?)
「僕、魔王の使いのカルロス。貴方の名前は?」
「成瀬 緑だけど……」
「ミドリー様ですね?」
「あ、いや、緑……。まあいいや。で、カルロスくん、私は何でこんなところにいるのかな?」
カルロスは魔法のランプのような物を緑に見せた。
「これで貴方を召喚したんです」
「は? 変なこと言うと誘拐罪で逮捕するわよ?」
緑は懐から警察手帳を取り出した。
だがカルロスは疑問符を浮かべた。
「何ですか、それ?」
「警察手帳よ。知らないの?」
「警察手帳って?」
「警察官に配布される手帳よ。警察官は知ってるでしょ?」
「警察官? 貴方は魔王ミドリー様でしょ?」
(魔王? もしかして異世界に来ちゃった?)
「ここはなんて言う国かしら?」
「ニーホン帝国です」
(ニーホンって、もっとマシなネーミングはないの?)
「で、私は何のために呼ばれたの?」
「新しい魔王を誕生させるためです。早速ですが、ニーホン帝国の侵略はどうしますか?」
「以前の魔王はどうしたの?」
「勇者とその仲間たちに……」
「ようするに、貴方は勇者に復讐を?」
「はい。シンドリー様は何で負けちゃったんでしょうか?」
「それは一人だったからじゃない? 勇者さんみたく仲間がいれば勝てたと思うけど?」
「じゃあ戦える仲間を捜しませんか?」
「そうねえ……悪人を捜しましょう」
(本当は捕まえる立場だけど、異世界だからいいよね)
緑とカルロスは近くの町、オムロンを訪れた。
「くっそ、あの野郎……!」
二人の下に怪我をした男が現れた。
緑はその男に声をかけた。
「おじさん、大丈夫?」
「ああ? 何だてめえ?」
「この方は新しい魔王です」
「ま、魔王だって!?」
「私たち、仲間になってくれる人を捜してるの。勇者に復讐するために」
「勇者に復讐? そう言えば、あいつ勇者を名乗ってたな。面白い、あんたの仲間になってやるよ。あ、俺、ドリューって言うんだ。よろしくな」
タラタラタラタラ、タラタラタラ、タラララーラー♪
ドリューが仲間になった。