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2 失恋と出逢い (2)





 昼休みも終わり、教室に入り席に着き、改めて周りを見渡してみた。


 いた。彼女だ。名前は確か鈴鹿すずか しおり

 今は6月。クラス全員の事もまだよくわかっていなかった。それに俺に声をかけてくる女の子とはちょっと違うタイプのようで、あまり気にも留めてなかった。

 そして告られてた男。相沢あいざわだっけ。こいつもまた俺とは違うタイプ。確かメチャクチャ頭がいい奴だった。かと言って暗いとか、勉強だけってわけでもない。友達も多い。


 二人は雰囲気が似ている。そうだこの二人落ち着いてるんだ。彼女の方は、派手ではないけれど普通に可愛い。この男もそうだ。結構かっこいい。よく見ると二人はお似合いのような気もする。


「ったく、何で振るんだよ」

 何故かイライラして、口から無意識に独り言が出た。

「何々? りょう、なんか言った?」

 隣の席の女子が手を伸ばしてきた。ねえねえと俺のワイシャツの半袖を引っ張る。

「え、何でもないよ」

 何だか鬱陶しく感じて、でも笑顔は作って、さり気無く腕を離した。


 俺はモテるらしい。いや、らしいじゃなくてモテる。みんなに言わせると、学年一、いや学校一モテるんだそうだ。確かにしょっちゅう告白されてて、一年の時から彼女もいない時はないってくらいだった。

 ちなみにこの隣の席の子は彼女ではない。やたらくっついてはくるけど。一応礼儀はわきまえて、二股だのはした事はない。

 楽しければいい、ずっとそう思ってきたし、多分これからもそれは変わらない。けど、さっきの彼女の告白と相沢の返事を聞いて、自分が否定されてるみたいで何だかいやな気分だった。


 俺は机に突っ伏した。

「涼、どうしたの?」

 隣から声が聞こえたけど、やっぱり何故か返事もしたくない。

「……頭痛いから、ほっといて」

「え、じゃあ保健室一緒にいったげるよ」

「いや、いいから」

「あ、じゃああたしが行く」

 斜め前の席の女子が言った。

「……マジで、ほんとほっといて」

「ほんとに? 大丈夫?」

 二人の交互に心配する声が聞こえたけど、無視した。

 何だろう。よくわからない。こんな事初めてだ。女の子の声がうるさく感じるなんて。

「ほっとけって。ゲームやり過ぎで眠いんだろ。な、涼?」

 高野たかの、ほんとたまにいい奴だなお前。後ろの席の高野の言った言葉にこくこくと頷き、そのまま俯いてこのイライラの原因を探ろうとしたけど、やっぱりよくわからない。


 たださっきの彼女の声が離れない。

 ありがとうと言った彼女の声。何だかもう一度聞きたい。


 ゆっくり顔をあげ彼女の席の方を見る。彼女は背筋を真っ直ぐ伸ばし、黒板を見ていた。そして時折、少しだけ違う方に顔を向けていた。

 その視線の先はあいつ、相沢だった。

 ああやっていつも見てたんだろうか。でも、断られちゃったもんな。

 好きだと言った彼女と言われた男。それを見ていた俺。変な関係だ。俺が何も言わなきゃ二人とも知らないんだろうけど。


 焼きそばパン全部食べたのかな。コロッケパンも好きだって言ってた。けどあのパン屋で会った事あったっけ?

 もしかして、あるのかもしれないけど意識したことなかったからな。俺が忘れてるだけかもしれない。


 もう一度机に突っ伏す。そのまま顔を横に向け、窓際に視線を移した。さっきはあんなに晴れてたのに、もう空は雲に覆われてる。



 不思議と彼女の事が、気になってしょうがなかった。








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