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13 大切な時間





 その夜、何度も何度も自分が打ったメールを読み直し、そんで、何度も何度も打ち直して、迷った挙句メールを送った。また手に汗掻いてるよ。


  今日はありがとう。

  花火大会楽しみだね。

  時間が決まったらまた連絡入れます。

  屋上、晴れてる時にまた行こう。


 返事、来るかな。

 それから十分経ったけど、まだ来ない。ああ、変なメールだったかな。硬すぎたか? でもいきなり絵文字とかも引くよな。俺男だし。今日はありがとうハートとか、それは無いだろう。心の中はハートだけどさ。

 もう一度ケータイの送信履歴で確かめる。屋上の話題か? また行こう。ってちょっと命令っぽい? 何か図々しかったか?

 その間二件メールが入ったけど違う女の子。それは無視。彼女のだけ、メールの着信音変えてるからな。すぐわかるように。


 二十分経った。

 どうしよう。嫌われたのか? いや、まだたかが二十分だ。気がついてないのかもしれないし。ちゃんと送信できなかったのかな。何度もケータイを見るけど何の問題も無い。


 三十分経った。

 もしかして、事故にあったとか? 家が火事になってたとかだったら、どうしよう! 無事なのか? 無事だよな?

「ああ、何だよ俺は! 情けない!」

 目の前にあるからいけないんだ。椅子をくるりとベッドの方に向け、そこから布団の上にケータイをぽんと投げる。

「よし」

 前を向いて集中だ。勉強しろ勉強を。ぜったい今度の期末であいつを抜かしてやるんだ。学年一のあいつをな! メールなんか何時だって出来るだろ。勉学は今しか出来ない! さあ、やるぞ。えーととりあえず数学から、


 ~~♪♪


 鳴った!

 と同時に俺はすごい勢いで振り向き、椅子ごとひっくり返った。

「いっ……でえええ!」

 とんでもない音がしたせいか、廊下からドタドタと慌てて走ってくる足音が聞こえる。

「ちょっと、涼どうしたの?! 大丈夫?」

 母よ……頼む、頼むから今はほっといてくれ!

「な、何でもない、 ちょっと転んだだけ!」


 馬鹿すぎる。慌てすぎなんだよ涼、お前は! あー背中と腰打った。しかし、這いずるようにベッドにしがみ付く。

 待っててくれ、ケータイ。今行くぞ! やっとの思いでケータイを掴み開く。よ、よしメール開くぞ。


  鈴鹿 栞

  Re:吉田です。


 来た。名前を見ただけで、心臓が……! 落ち着け。何て書いてあるんだろ。何故か開けない。手が震えてきた。たかがメールだろ、しっかりしろ!


  こんばんは。

  こんばんは。


 やばい同じ所、二回読んじゃった。


  今お風呂に入ってて返信できな

  かったのごめんね。


 お、お風呂……お風呂……つ、次いこうか。


  今日は花火大会誘ってくれて

  ありがとう。

  嬉しかったです。

  本当楽しみだね。

  屋上、また誘ってね。

  花火大会の連絡、待ってます。



 嬉しかったですの後に、にっこりした顔のマークがあった。え、絵文字オッケー? 俺も入れてみようさりげなく。


  お風呂中にごめん。

  メールありがとう。


 ど、どうしよう後は何て打とう。お風呂中って書くのもヤラシイか。けどいいか。


  俺も今から風呂入ってきます。

  おやすみ。


 夫婦か! 何かどうだろうこれ。でも他に思いつかない。次の話題振ってしつこいと思われるのもいやだし。そうだおやすみ、の後に絵文字入れてみよう。無難な奴。そしたらそっけなくないかも。

 送信した。風呂風呂ってヤラシイと思われたかな。


 ~~♪♪


「わっ!」

 すぐ返信来た!


  私ももう少ししたら寝ます。

  おやすみなさい。


 うおお! おやすみなさいって言ってくれた! 同じ絵文字もついてるよ。嬉しい嬉しい! 永久保存版だぞこれは。もうすぐ寝るんだ。そうか。

 何だか胸の中があったかい気持ちで一杯になった。彼女の学校以外の姿を垣間見た気がして……。すごいなあ、メールひとつでこんな気持ちになれるなんて。


 俺はシャワーを浴びてから部屋に戻り、もう一度ケータイを手にした。


 彼女から来たメールを何度も何度も見て、彼女を想いながら眠りについた。






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