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今と昔を結んだのは何だったのでしょう……
それは昔の夢でした。
母が話してくれた、ヤマトタケルの物語のような夢でした。
とある国では、兄王子と弟王子が王になるために争っていました。
しかし、本当は弟王子は王になりたくなかったのです。
ただ愛する人と幸せになれればそれでいい。
弟王子は生き延びるため、女性に扮して逃げようとします。
女性に扮していると知っているのは、恋人である王の召し使いのみのはず。
しかし弟王子は敵の兵士に見つかり、殺されてしまうのです。
死ぬ間際、最後に見たのは、兄王子に抱き締められ、弟王子から顔を背けた恋人の姿……
裏切られた絶望と哀しみが、痛みとなって襲ってくるようでした。
あの時、かみさまが抱き締めてくれなければ、私は気絶していた事でしょう。
悲しくて、哀しくて、愛しくて。
どうして、と嘆く声なき声が、恋など知らぬ私の心を強く揺さぶって。
そうして場面は変わります。
弟王子が死んだ場所には岩が立てられていました。
鬱蒼と繁る草に囲まれて、ポツリと立った岩。もはや墓どころか、なんのための岩なのかもわからないでしょう。
傍らにはピンク色の小さな花を咲かせた木が、ひっそりと息づいています。
さく、さく。微かな足音を立てて現れたのは、赤い袴の巫女。
岩に手を触れ、微笑むその顔は……京子と名乗る彼女のものと瓜二つでした。
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