真実は、常に空の下に
AIさんと書きました。
フォルダを整理していたら発掘したので投稿。
合わない方はブラウザバックを推奨します。
ある日から、王都の上空にやけに立体的な、物語のような “ビジョン” が投影されるようになった。
ビジョンは何度も繰り返し投影され、中には動きを伴う映像も投影された。
平民たちは娯楽に飢えていたので、最初のころは戸惑いつつも、やがて心待ちにするようになる。
とある娯楽小説の宣伝であるだとか、さまざまに噂が飛び交い、誰もが続きを待ち侘びるようにもなった。
そんな噂は、やがて貴族たちにも広まってゆく。
下働きの下男下女から、メイドたち、侍女や侍従へ噂は伝播し、当然当主一家にも伝わる。
自らビジョンを見もしたし、社交界でもお茶会でもすぐに人の口を介して拡がりゆく。
《上空》に映し出されているわけで、それは少し距離があるだけの隣国にも波及して行く。
物語のようだ、聞いたことがある。だとか、見たことがあるシチュエーションに、噂の拡大はさらに拡散されて行く。
何より、登場人物が豪奢なのだ。
中心人物はこの国の王族や宰相子息、近衛騎士団長の子息もいる。
他にも王族の側近は数多くいて、そして物事の中心には一人の少女がいた。
◇ ◆ ◇ ◆
「カロン・ヴェンリエッテ・ロゼンワイヤ侯爵令嬢! この場をもって、貴様との婚約を破棄させてもらう!!」
卒業パーティーでも、王家主催の夜会でもなく、前期終業式の式次第を学院長が述べている最中に、複数の生徒たちが壇上に上がってきた。
前期生三年、後期生三年分、全部で六年生全員の目が、前期生二年生でしかない生徒たちを見やる。たとえソレが王族であっても。
「お、王子殿下?」
学園長がお伺いを立てるが、そんなこと知ったこっちゃない、とばかりの王子。
そこへ、当事者のロゼンワイヤ侯爵令嬢──カロンが現れる。その手には扇を持ち、なんの感情も映さない瞳は、壇上の男女を睥睨する。
「本題に入る前に」
カロンが、口を開く。
「空に映っていらっしゃるのは、ご本人たちでよろしいかしら?」
その言葉に、王子たちは戸惑う。『空に?』
「何のことだ?」
代表して、王子が問う。
「あら、ご存じではいらっしゃらない。外へ出ていって、ご覧になってくればよろしいのではなくて?」
いったん『本題』は置いといて、侯爵令嬢が言う『空に映っているもの』に興味を示した面々。王子たちだけでなく、生徒たち全員が、我先にと空が見える学園の中庭へ移動した。
その大きな画面に映っていたのは、紛れもなく王子たち。現在のリアルタイムの映像や、個人個人の部屋での痴態。
この集団での『まとまった計画』を話す場面。過去の一部も映っている。
それが、延々と、延々と繰り返しているのだ。
言われなければ、一切気づくこともなかったろう。秘密にしておきたい物事を、不特定多数に知られた恥は、『本題』どころではない。
「で、婚約破棄でしたっけ」
カロンは、そんな彼らに問いかける。
「王子殿下が有責の?」
そう、傍らに立つ、赤髪の子爵令嬢、キャロル・ティアンテと、睦み合っている『数人』がいた。王子だけでなく。
ざわめきは、まるで爆発だった。
学院の中庭。王都の大通り。屋敷の庭園。酒場。市場。ありとあらゆる場所で、人々が空を見上げていた。
そして、理解してしまった。
──あれは芝居ではない。──作り物でもない。──本物だ。
映像の中では、王子たちが密談を重ねていた。
『ロゼンワイヤさえ潰せば、キャロルを正式に妃へ迎えられる』
『証拠は先に処分しておけ』
『学院側にはこちらから圧力を』
次々に映し出される会話。
さらには、侯爵令嬢へ嫌がらせを指示する場面。虚偽の噂を流す場面。教材を隠させる場面。侍女を買収する場面。
そして極めつけに。
『殿下ぁ……』
『キャロル、可愛いな』
人目を忍ぶどころか、もはや隠す気すら感じられない密会映像まで流れ始めた瞬間。
「ぎゃあああああ!!」
王子の絶叫が響いた。
だが、空は止まらない。むしろ親切なことに、別角度からの映像まで追加された。
しかも字幕付きである。
「誰だ!! 誰がこんなものを!!」
「知らん!!」
「止めろ!! 止めろぉぉぉ!!」
男子生徒たちは半狂乱。女子生徒たちは顔を覆い、一部の野次馬は笑いを堪えきれず肩を震わせている。
なお、六年生たちは。
「前期終業式で婚約破棄やろうとしてたのか……」
「馬鹿だろ」
「しかも有責側」
「終わってるな」
冷静だった。むしろ若干引いていた。
カロンは、そんな騒ぎを静かに眺めている。
「続けます?」
優雅に扇を開きながら、彼女は問う。
「婚約破棄のお話」
王子の顔色は、死人のようだった。
「き、貴様……!! 何をした!!」
「さて?」
「こんな大規模な幻術、個人で出来るわけが……!」
「ええ、本当に」
カロンは、ゆるく首を傾げる。
「では、誰がやっているのでしょうね?」
空の映像が、ぶつりと切り替わった。
映し出されたのは、暗い部屋。中央の円卓。そして、フードを被った複数人。
『“聖女計画” は順調か』
『はい。王子は完全に傀儡化できております』
『ロゼンワイヤ侯爵家は邪魔です。排除を』
『国外勢力との調整は?』
『問題ありません。“次の戦” の準備は整っています』
誰も、声を出せなかった。王子本人すら。
「……は?」
間抜けな声が漏れる。
空の映像は続く。
『キャロル・ティアンテの魅了適性は非常に高い』
『王族複数の掌握にも成功』
『学院内世論も操作済み』
キャロルの顔から、さっと血の気が引いた。
「ち、違……っ」
『万一失敗した場合、王子側に全責任を押し付ける形で』
『よろしい』
「違う! 違うの!!」
叫び声。
けれど空は、残酷なくらい止まらない。映像の中で、キャロル自身が笑っていた。
『男なんて簡単よぉ?』
六年生の誰かが、ぼそっと呟いた。
「……うわぁ」
その一言で、完全に空気が決壊した。
ざわざわざわざわ!!
「え、え、国外勢力?」
「魅了?」
「戦って何!?」
「いや婚約破棄どころじゃねぇ!!」
学院中が、完全な大混乱へ叩き落とされる。
そして、空の映像は最後に、たった一文を映し出した。
【真実は、常に空の下に】
戦指示をしてた国はビジョンが見れた隣国とは別の国。




