ダブルデート編
安乃「……は?ダブルデートって、私たちそういう関係じゃないし。」
圭吾「そ、そうそう。いや、ほんとに。全然そういうんじゃ……」
雅先輩「はいはい、そういうのはデートしながら自然に進めばいいのよ〜」
Y「さすが雅先輩、押しの強さは最強やな。」
安乃「……ま、暇だし。どーせ1人でうろつこうとしてたし。ちょっとだけ付き合ってやるか。」
(……お?)
圭吾「じゃあ……4人で? ほんとに?」
Y「うん、ええやん。今日は頭使うより、青春してこーぜ!」
まず向かったのは、whity 梅田のゲーセンフロア。
キャッチャーコーナーに入ると、雅先輩がいきなり目を輝かせた。
雅先輩「うわーこのぬいぐるみ欲しい!ねえY、取って♡」
Y「まかせろ、俺の“ギャンブラー魂”が火を吹くわ。」
安乃「……ああいうの見るとさ、カップル感って感じするよね。」
圭吾「そ、そうだね。うらやましいというか……」
安乃「……で?私には何か取ってくれるの?“圭吾くん”」
圭吾「えっ、いや、取るけど!?めっちゃプレッシャーかけるやん!」
安乃「ふふ、楽しみにしてる。」
(……これは、がんばらなアカンやつや)
何回か失敗した末、ようやく小さな白クマのぬいぐるみをゲットできた。
圭吾「はい、安乃さん。」
安乃「え、ほんとに取ってくれたの?やるじゃん!」
ふわっと笑って、ぬいぐるみを両手で受け取る彼女の顔は、今まで見たどの表情よりも柔らかかった。
(……これは、保存必須の笑顔だ)
その後はカフェで甘いものを食べ、プリクラなんて撮ったりして。
気づけば、Yと雅先輩の空気に引っ張られるように、圭吾と安乃も自然に会話が増えていた。
カフェの帰り道。
エスカレーターの片側で、二人ずつ並んで降りる。
安乃「ねえ、圭吾くん。」
圭吾「ん?」
安乃「今日は……楽しかったね。」
その声は、夕暮れの光に少しだけ溶けて、なんだかやけに胸に残った。
その日の夜、僕は甘い気持ち味わいながら眠りについた。