店員募集
金欠の金尾呉はある日、好条件の求人記事を見付けた。『洋菓子店のマスコットの中に入ってみませんか?年齢は問いません。時間一日のうちいつでも大歓迎!日給一万円~勤務地最寄りのぷぢ屋。連絡方法、直接お越し下さい。履歴書不要。仕事内容、マスコットに入って、お店の横に立っているだけでOKです!ご応募お待ちしております!』「おおおっ!日給一万円?良い!こりゃ誰かに先を越される前に行くぞ!」鼻息荒く呉は急いで出掛ける準備をし、最寄りのぷぢ屋まで走っていく。家からぷぢ屋まで約五分、まずまずの距離だ。自動ドアを潜り、息を整える呉。「いらっしゃいませ」「あの……求人をみて来たんですが、マスコットの……」店員は呉をみて、笑顔を見せた。「ああ!ピコちゃんマスコットのお仕事、ご希望ですね!」店員の様子からだと、他にまだ希望者は来店していないものと見た。(やったぞ!ライバルは零!後は面接をクリアすれば、日給一万円……!)呉の目は¥マークと化していた。(ガツガツしてたらイカン!誠実に接せねば!日給一万円……)頭の中は、一万円の事しかない。面接の際は、ほぼ何を話していたか『記憶に御座いません』だ。帰宅後ぷぢ屋から、連絡が来た。『面接合格となりましたので、明日からお仕事宜しくお願いします』「あ、ありがとうございます!こちらこそ、宜しくお願いします!はい、失礼します」(一万円!五日勤務で、二十万円‼)呉は暫く自室で小躍りした。そして初勤務の日。ぷぢ屋の店の真横に……マスコットに入った呉がいた。(痛い……狭い……しかもずっと体育座り……)ピコちゃんのあの、小さな人形の中、オムツを装着させられた呉が半泣きでいた。着ぐるみではなく、あの人形。現実とは厳しいもの。(食事はエナジードリンク……しかもこの中冷たい……しんどいけど、一万円……!)収入の良さを自身に言い聞かせ、呉はただただピコちゃんの中で耐えるのだった。(一万円!)