bottle happiness
一一そのボトルメールはなんぞや
昔から伝わる言い伝えがこの街にはある。
海から届いたボトルメールを見つけて飾ると幸せになる、と。
そのボトルメールはたったひとつだけ漂流し、それ以降漂流されていないと言う。
手に入れたのは、とある宿屋の主人の娘。
主人と娘のその家族はとても仲が良く、気前もよく、幸せに暮らしていた。
冒険者やその街の住人にも評判が良い一家だと言う。
ボトルメールの漂着により、街から街へ人から人へと伝わっていった。
その噂を聞き付けた冒険者が盗まれないように、と上級防御魔法を何重にもかけられた。
攻撃をされて盗まれないように。
とある冒険者は攻撃をせず盗むものが出てくる可能性がある、と上級の攻撃魔法をかけられた。
悪意も善意もなく盗まれないように。
とある呪術師達は宿屋の主人や血縁に化けて盗まれないよう、呪いをかけた。
盗まれてもこの宿屋に戻ってくるように。
とある神官の者達はこの宿を、この国を、いつまでも幸せで平和であるよう、祈りを捧げた。
一時も忘れられないように。
幾重にもかけられたまじないにより、ボトルメールは神秘のものとして崇められた。
住人達は自らの幸せを願い、冒険者達は道中悪い事が起こらないようにと願った。
何十年、何百年経った今でもそのボトルメールは宿屋に置いてあり、光り輝いていたボトルは色がくすんでいた。中身の手紙も真っ白だったが、茶色く端に切れ目が入ってきていた。
宿屋の主人は外見のボトルを毎日綺麗にするが、中身の手紙まで綺麗に出来ずにいた。
内容もなんて書いてあるかはわからない。けれど興味はある。
開けようと蓋に手をかけるが一向に開かず。どんな力をいれてもあかなかった。
何かあったら不幸になる、と祖父母からも親からも聞いたのを思い出し、開けるのを諦めた。その日だった。主人の部屋に戻った隙に、ボトルメールが盗まれたのだった。
のだが、主人が瞬きをしたらボトルメールは何食わぬ顔で戻ってきていた。
はて、と首を傾げた数日後に訃報が街中に駆け巡った。
街を治める元気だった王と、若い側近が病気で亡くなった、と。
主人はその朗報を聞いて、ゾクリと背筋が冷えたが、あぁ、そうか。と納得した。
このボトルメールの中身も何もしてはいけない、と。何重ものまじないが解けることはない、と。
何もしなければ安泰だということだった。
はぁと溜息をついて先祖の言い伝えを守っていった。
終
幸運の呪い、サイキョウの呪い。




