ヘタレな俺の、告白する勇気
勇気がテーマという事だったので、浮かんできたものをそのまま思いつきで書きました!
楽しんでいただけると幸いです!
俺、平間一也はヘタレだ。
高一のとき、幼馴染の佐川優香に告白されたのに、そろそろ3年生になるという今まで、約2年近くも返事が出来ずにいた。
返事をしなきゃといつも会う度に思うのに、いざ言おうと思うと毎回話をそらしてしまう。
「はぁー……」
俺は今日も溜息をつきながら玄関を出る。外には、幼馴染が待っていた。
「おはよっ、かずくん。また今日もくらい顔して。そんな顔してるといいことも逃げちゃうよ?」
「おはよ優香。いいんだよ。元々いいことなんてないんだから」
「そう……? 私に告白されたのに?」
「うっ……」
「あーあ。早く返事してくれないかなー! 早く! 返事してくれないかな!」
「うぐっ」
早く返事しなきゃとは思ってるんだよ。思ってるんだけど、どうしても返事ができない。
怖いんだ。2年も経ってるから。もう愛想をつかされていてもおかしくない。というか、それが普通だ。
だから、今更「好きだ」なんて言ったって、断られるんじゃないか。そんな考えが頭を支配する。
「早くしないと取られちゃうんじゃないかな〜。昨日だって後輩の子に告られたし」
「あはは……優香は美人だからな……。俺なんかじゃ到底……」
「美人なんて褒めちゃって、も〜! 誰にでもそういうこと言っちゃダメだよ?」
「言えないよ。……仲がいい女子なんて他にいないし」
「ふふん。かずくんの唯一の女って訳だ」
「その言い方はなんか誤解を与えない?」
俺が優香に告白できない理由は、俺がヘタレなこと以外にもうひとつあった。
それは、優香がとてもモテることだ。美人で誰にでも優しくて。そんな優香がモテないわけがない。去年はサッカー部の先輩とか、若い新任の先生にも言い寄られてたっけ。
だから、運動も勉強もできない顔がいい訳でもない俺が、 何も持ってない俺が優香と付き合うなんて。絶対に俺は優香に釣り合わない。
なにより、それを言い訳にして返事を先延ばしにしている自分が許せない。俺は、俺が大嫌いだ。
「あのさ、優香」
「なーに? かずくん」
「……いや、何でもない。ごめん」
「そう?」
今日も俺は返事が出来そうにない。
☆
そして土曜日。今日で、俺が告白されてからちょうど2年が経つ。未だに俺は返事が出来そうにない。
やることもないから、勉強でもしようかと思って参考書を取り出したその時、インターホンが鳴った。
「宅配か?」
そう思いモニターを見に行くと、そこには優香が居た。
「ごめん優香、今開ける」
『…うん』
「……?」
何故俺の家に来たんだろうか。嬉しいけれど、特に約束をした訳でもないし……
それに……心做しか、優香の声がいつもより暗かった気がした。気の所為だろうか?
優香が待っているので、俺は急いで玄関に向かい鍵を開ける。
「おはよ優香。どうしたんだ? 今日は特に会う約束とかしてなかったと思うけど」
「私が来たら迷惑?」
「そんな訳ないだろ! 取り敢えず中入って」
「ありがと、かずくん」
やっぱり。何故か優香の元気がない。どうしたんだろうか……嫌なことでもあったのか?
俺は優香を自分の部屋に招き入れ、麦茶とお菓子を少し持ってくる。
「……」
「……」
気まずい沈黙が、部屋の中を埋め尽くす。いつもなら元気に煽ってきたりする筈なのに、今日の優香は俯いて暗い顔をしている。
「……どうしたんだ? そんなに暗い顔して。何かあったなら、俺でよければ相談に乗るけど」
「そんなに分かりやすかった?」
「いやまぁ…幼馴染だからな。優香のことなら何となく分かるよ」
「……そっか」
やっぱり何かあったのか。少し笑ったと思ったら、また暗い顔に戻ってしまった。
流石に幼馴染と言えど、相手が考えていることが完全にわかる訳では無い。
「かずくんはさ、今日がなんの日か分かる?」
「え……?」
そりゃあ、俺が告白されて2年経った日だけど……それを言ったら気持ち悪がられるんじゃないか? だったらここは分からないふりをした方がいいのかな。
「……分からない、かな?」
「そっか……今日でさ、私がかずくんに告白してから2年だよ? 覚えてないの?」
「覚えてるけど……」
「なんでずっと、返事してくれないの?」
優香の目に涙が浮かび、ポロポロとこぼれ落ちる。あぁダメだ。ついに泣かせてしまった。
「えっと、そのっ……とりあえずこれ使って」
「ありがと。なんで返事してくれないの? 誰に告白されても全部断って来たよ? ずっとかずくんの返事待ってるんだよ?」
「……」
「勇気出して告白したの。かずくんが好きで好きでたまらなかったから。ずっとかずくんのことが好きなんだよ……? うぅ…うわぁーん!」
「……優香」
「バカっ! かずくんのバカ! アホ! なんで返事してくれないのよぉ〜!」
……ほんとに俺は駄目だな。ヘタレて返事をしなかった挙句、女の子を泣かせてしまった。勇気出してくれたのにな。でも、こんな俺じゃ駄目だ。優香が苦しいだけだ。
優香は、床に崩れ落ちて子供のように泣きじゃくっていた。
「……優香」
「ぅぇえんっ……ひぐっ、何?」
「ちょっとだけ俺の話を聞いてくれないか?」
「くずっ…うん」
俺は深呼吸をしてから、ゆっくりと優香に話し始めた。
「俺は凄いヘタレなんだ。どうしようもないくらいヘタレだ。返事をしようと思ってずっと言えなくて、今日まで先延ばしにしてた。
優香は美人で優しくて、俺みたいな普通の顔のなんの取り柄もない奴とは明らかに釣り合わないんだ。それに、俺は優香を泣かせてしまった。
……だから、俺なんかじゃ優香の彼氏は務まらない。もっと、優香には良い奴がいると思う」
「……」
俺の本心だった。俺なんかじゃ釣り合わないんだ。たとえ俺が優香のことが好きだとしても、そういう問題ではなかった。
今まで優香が振ってきた男の方が、俺なんかよりも何万倍もいい男だ。そいつらの方が優香を幸せにできるだろうし、きっとこれからもいい男が現れるはずなんだ。
だから、こんな俺じゃなくてもっと……
「…………れ」
「え?」
「何それ! 私は顔やスペックで人を好きになるわけじゃない! なんの取り柄もない? そんな事ない! いつも私に優しいし、困ってたら無条件で誰でも助ける。自分のことを気にせずに相手を助けれる人なんてそういないよ?! 私の好きな人を悪く言わないでよ! 釣り合わないなんて、周りの人が決めることじゃない。私たちが良ければそれでいいでしょ!
かずくんの本心を教えてよ! ねぇ……」
「……っ」
優香は俺の肩を掴み、訴えるように、縋り付くように俺に向かって叫んだ。俺の本心……本心……
「……俺は、その…優香のことがっ」
「……うん」
「……っ…ぁ……」
声が出ない。怖い。気持ちを伝えるのが怖い。
優香はこんなことをして、2年間も待ち続けていたのか? 俺は待たせていたのか?
黙りこくった俺を見て、優香が少し悲しげに微笑む。
「大丈夫だから。どんな返事でも、私は受け止めるから。かずくんの……一也の素直な気持ちを、教えて?」
……ほんと、俺は駄目だ。どうしようもないヘタレで、ここまでお膳立てされなきゃまともに告白の返事もできない。もしそんな俺でも、優香がいいと言ってくれるのなら……
「……優香のことがっ」
「うん」
「優香のことが好きです! こんなヘタレな俺でも良ければ、付き合ってください!」
「……え?」
泣きそうな顔だった優香が、きょとんとした顔になる。
「私を振るんじゃ、なかったの?」
「むしろ、俺が振ると思ってたのか?」
「うん……だって、何しても変化ないんだもん」
「あはは…振るわけないよ。好きな子が、こんな俺でもいいって言ってくれるんだから」
「好きってっ!」
優香の顔がボンッと赤くなる。可愛いな。
「それで、返事は……?」
「ふふっ、ダーメ」
「えっ」
そうだよな。俺みたいなやつやっぱり嫌だよな。泣いてたのとかは、俺みたいなやつに告白の返事を先延ばしにされたのが悔しくて悔しくて言っただけだよな。俺なんかを好きなわけないか。
「ちょちょちょ、なんで泣きそうな顔してるの? ……そうじゃなくて、結婚を前提にお付き合いしてください!」
「けっこ……?!」
「絶対にかずくんじゃないと嫌だから」
優香は真剣な顔で言う。あ、これガチなやつだ。ヤバい。
……でもまぁ、そうだな。俺も、優香がいいな。
「俺、ちゃんとゆうかのこと好きだから。結婚を前提で、よろしくお願いします」
「きゃ〜!」
この日から、俺たちは全国が認めるバカップルとなった。
☆
そして数年後、今度はプロポーズが出来なくて優香にまた突っ込まれるのだった。
「早くプロポーズしてくれないかなー! まだかなー! 高校卒業してすぐでも良かったんだけどなー! まだかな! まだかな!?」
「うっ……善処します」
「……でもまぁ、いつまでも待つよ。今はちゃんと、かずくんが私のこと大事にしてくれてるって知ってるから」
「……可愛い」
「んもぅ、かずくんったら。……それじゃあ、キスしよ」
「うん」
俺の彼女は、今日も俺には勿体ないくらい可愛い。でも、そんな彼女を幸せにできるのは、きっと俺しかいない。
だから今度は、俺が勇気を出してちゃんとプロポーズする番だ。
密かに練っている計画を、そろそろやらなきゃな。
どこまでも続くような青空は、俺たちの未来を映し出しているようだった。
読んでくださりありがとうございました!
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また、私の作品「幼馴染に裏切られた俺、幼馴染を捨てたら最高の生活が始まりました」も是非お手に取っていただけると嬉しいです!