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日銀ペイ






 木の葉が舞う学校の中庭

 金色の木の葉は太陽と共に眩しい世界を創りあげる

 その輝きも君にはまるでかなわない

 僕だけの女神

 ほんの少し前にした遊びは、僕らを童心に帰した

 楽しかったねと君が笑う

 童心もいいけれど、僕が求めるのは……。

 二人で時を重ねようなんなら体も重ねよう

 季節を超えて

 ほら、冬の匂いが近づいてくる



 かさ ぎゅ かさ ぎゅ かさ ぎゅ



「マーイマイ!」



 ももしおかよ。邪魔ばっかしやがって。わざわざ銀杏踏みながら歩くんじゃねー。



「シオリン、今来たの?」



 すでに昼休み。



「大変大変、マイマイ。これ」



 ももしおはiPadを見せてくる。画面には、スクープっぽい文字が踊っている。


『激白! 陽キャ大臣のトカゲの尻尾』


 大きく扱われている写真には3人の男。真ん中で椅子に座る経済産業大臣、後ろに陽キャ大臣、もう1人は知らないおじさん。場所は紛れもなく、アヤC横の喫煙所。SNSに1時間ほど存在していた写真。

 

 記事は、解雇された陽キャ大臣秘書インターネット担当の暴露もの。それって、京が小学校で会った人じゃん。


 大きな件は2つ。表向きには、写真をSNSにアップした陽キャ大臣が、それをインターネット担当のせいにしたことと、もう1つはネット環境が悪く仕事が滞った責任をインターネット担当に負わせたこと。



 写真の3人の男は、経済産業大臣、環境大臣、内閣府特命担当大臣金融担当。

 環境大臣がSNSに写真をアップしたことは、政界の大物、経済産業大臣の逆鱗に触れた。


『呼んでないのに来るな』


 環境大臣はそこまで言われてしまった。SNSの記事は即刻削除。

 インターネット担当は自分が罪をなすりつけられたことを、後に同僚から聞かされた。もちろん秘書という立場であるインターネット担当は、大臣から指示されてSNSに写真をアップした。


 不信感が募っていたとき、2つ目が起こった。

 ある日曜日、ネットが繋がらなかった。SNSの記事は用意されていた。その記事は環境省一推しの法案の追い風となるもの。ところがネットが繋がらなくてSNSにアップできなかった。

 さらにはその日、大臣は大切なイベントに連絡もなく大遅刻してしまった。もう1つおまけに要人からの連絡を受け取れなかった。



 2つ目の日曜日の件は、かもめプラザホールで京が発表した日のことっぽい。あの日、予定よりもかなり時間が遅れていた。おまけに母猫を轢きそうになってタイムロス。

 

 オレは記事のその部分を読み直した。


ーーー写真は人ではなく資料を使うことになった。しかし、ネット環境が悪く、SNSのアプリが立ち上がらなかった。

『通信障害ですよ。誰のスマホも繋がらない。施設内どこでも全て。車での移動中も繋がらなくて。不可抗力じゃないですか』ーーー



 オレたちのやったことは無駄じゃなかった!

 インターネット担当は京の夏休みの研究の一部を使ってSNSのアップを試みていた。オレたちが麦色の胞子を飛ばしたから、ネットが繋がらなかった。車の中で繋がらなかったのはブタ猫のせい。それも、オレたちが仕掛けたカビを踏んで、首にカビのテープを巻いていたから。やるじゃん、オレら。



「ちっちっちっち、宗哲君、問題はそこじゃなくて」



 ももしおは人差し指をメトロノームのように振る。オレは暴露記事を読み進めた。


 

 環境省が通したい法案がクラウド事業に対する課税だと暴露されている。んー、法案は公開されてっから暴露じゃないんじゃね?

 データ税と勝手に命名されていた。1つ小さな穴を開ければ防波堤は決壊する。クラウド事業に課税されることを認めれば、ゆくゆくは全ての企業と納税者にデータ税が降り注ぐと書かれている。煽ってるなー。


 問題はどうして経済産業大臣が激怒したのか。極秘プロジェクト、日銀ペイに関わることだから。そう書かれているのに、日銀ペイの内容はなし。記事はそこで終了。



「「日銀ペイ!?」」


「つまりね。この記者が言いたいのは、陽キャ大臣が秘書に罪をなすりつけたことじゃなくて、陽キャ大臣が実はSNSを自分でやってなかったじゃんってことでもなくて、データ税と日銀ペイなわけ」



とももしお。へー。どーでもよー。



「あ、いた」


 

 そこへ、ミナトが来た。ももしおのiPadを見ると「なーんだ。知ってっじゃん」と笑う。

 4人で5時間目の授業をサボった。それぞれ飲み物を持って体育館の外階段の踊り場へ行く。



「「「「かんぱーい」」」」



 まずは、オレたちすげーって自画自賛。

 続いて、ミナトがアヤCについて語る。



「アヤCは日銀ペイの立ち上げ部隊なんだろーな。日本人限定ってとこに引っかかってたけど、納得。海外にデータが渡る危険を極力避けたいんだろね」


「やっとスッキリ。アヤC横が暑かったのは、たぶん、もともとあった建物を利用してたから。大容量のデータを扱うのに建物の構造、温度対策がされてなかったんじゃない? エアコンの室外機、いっぱいあったもん」



 ねぎまは気になっていたことが分かって満足そう。



「日銀ペイってさ、

 要するに、デジタルマネーってことじゃん。

 そんなにすげーもんなん? 

 今だって、オレら、デジマネ使ってっじゃん?」



 オレが素朴な疑問を抱くと、ミナト先生が教えてくれた。



「日銀ペイはさ、たぶん最初に税金、補助金、年金に使われる。そこから給料振り込みとかも絡みそうじゃん。データ量が半端なくなる。日本って結構人口多いじゃん。そんだけのデータ扱うってなると、やっぱ、それなりに技術がいるんじゃね?」


「シオリン、何見てんの?」



 ねぎまがももしおのiPadを覗き込む。iPadにはグラフや数字がパタパタ変わる表が並ぶ。



「下がんないんだよね。出来高は大きいんだけど」



 意味不明。



「ももしおちゃん、株?」


 

 ミナトの問いにももしおは嬉々として答えた。



「地銀の空売り」



 チキンの唐揚げ?

 ねぎまも分からなくて聞いている。



「どーして地方銀行?」



 え、地方銀行? チキンじゃなくチギン?

 ももしおの別バージョンが降臨。



「日銀ペイができたら、国民は日銀に口座を持つでしょ? だから銀行に流れるお金が激減するかもかーも。銀行の仕事が減る、弱い銀行からヤバくなる。みんながそう思うと売りが売りを呼ぶ」



 瓜売りが瓜売り?

 ももしおは続ける。



「経済ってね、銀行がお金を貸すとその分膨らむの。いーっぱい貸すと、いーっぱい経済が成長するの。

 銀行が貸せない、経済成長が鈍くなる、円の価値が下がるって構造。銀行が次々に潰れて不景気の嵐、円の価値がゴミになるかも」

 


 何そのホラー。


 が、地方銀行の唐揚げとやらは、どうも、ももしおの思惑通りに行っていないっぽい。ももしおはiPadをそのままに、スマホで何か調べ始める。それを覗き込んだねぎまが読み上げた。



「『陽キャ大臣はクビですね』『日経に打撃与える陽キャ砲』『にゃん太郎ちゃん、辞めないで』『罷免罷免罷免罷免罷免』あ、動画上がってる」



 ねぎまは動画を再生した。

 動画は経済産業大臣が記者に質問を受けているところ。


『日銀ペイ構想があるのは本当ですか?

 リークした湘南太郎大臣はどうなるんですか?』


『根拠のないこと言っちゃいかんよ。そもそも事実がないのにリークもない。それにね、実力もあって人気もある、にゃん太郎ちゃんみたいな人、なかなかいないよー?』


『日銀ペイが実現したら、多くの銀行が潰れるんじゃないですか?』


『君ら、妄想すごいね』


 終了。「にゃん太郎ちゃん」ゆってるし。

 ねぎまは再び、ももしおのスマホを読む。



「『クジラさん出てますね』『銀行とにゃん太郎ちゃんを守れ』」



 段々ももしおの眉間のシワが深くなり、目が鋭くなって……いや、死んでいく。あ。



 ぱたり



 幻のうさぎの耳をなびかせながら、ももしおは倒れた。息も絶え絶え。



「……カオス……恐るべし、往年のアイドル。

 じーさん&ばーさん票持ってっから。

 クジラには勝てん……撤退……」


「クジラ?」



 首を傾げるオレにミナト先生が教えてくれた。



「日本の機関投資家。資金力がすげーの」



 勝てない相手らしい。

 ももしおはスマホで何やら操作した後、長調だったオータムリーブスの歌を短調にして歌う。



「にゃん太郎ちゃん♪ 

 にゃん太郎ちゃん♪

 アイドルってすごーいよ♪

 ドルオタは♪ 経済♪

 がーっちりー♪ 守るよ♪」




 生レンレンは回復しつつある。今は退院して自宅療養中。勅使河原さんが一緒に住むようになった。いーなー、同棲。

 生レンレンはカビのテープを安価で購入し、それをネット販売している。



「そんなん誰が買うん?」



 ネットが繋がらなくなるなんて迷惑なもの。



「試験を主催する会社とか学校とか?

 受験生の親?

 盗聴器や隠しカメラ仕掛けられると困るとこ?」



 とねぎま。



「んー、浮気されてる人」



 とミナト。

 怖っ。オレも使われちゃったりして。嫉妬されるほど愛されるとか、ちょっと憧れ。

 最後にももしお。


 

「愉快犯、

 事故物件でオカルト的にスマホ鳴る人、

 もっとご主人に構ってほしい、ワンコとニャンコ」



 ん?








       〜〜 おわり 〜〜


読んでくださった方、ありがとうございます。

執筆中、毎日が楽しくてたまりませんでした。


読み返すと、辻褄が合わないところや、計画通りに書けず未回収の伏線が散乱しております。できる限り修正する予定です。


いつか寝食を忘れる小説が書けたらと願ってやみません。

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