死にたがり、夜に落ちる。
死ネタを含みます。
胸糞注意。
私は死にたい。
他人を傷つけることしかできない無能、クズ。ゴミの塊だ。この世に存在しちゃいけない。なのに死ねないんだ。リスカだってカッターを軽く通して跡が浮かび上がってくるくらいにしかできない。
なんで生きてるの?なんで死ねないの?
自殺志願者のくせに。
「なんかあった?」って言われて「はい」なんて答えられず。「他に生きたい人がいるんだよ」なんて言われても「そんなの知らない」としか答えられず。
「死ね」と言われれば「わかってる」
「死なないで」と言われれば「わからない」
何度繰り返した。
何度言われた。
何度答えた。
何度嘘をついた。
止めてくるくせに面倒くさくなったら捨てるんだ。
だからそこに救済があってももう私は諦めるんだ。
ご飯は出る。友達は少なからずいる。家族もいる。なのに私の心はいつもぽっかり空いている。恋人が欲しいわけじゃない。
なのに私は満たされない。
世間から見れば幸せなはずなのに。
なぜ私は幸せを感じれない?
なぜ私は幸せを恐れてる?
怖いんだ。幸せになったあとにくる不幸が。
怖いんだ。バチが当たるんじゃないかって。
怖いんだ。幸せになるのが。
だから死にたいんだ。
勝手に出てくる涙。勝手に痛くなる腹。もう嫌なんだ。嫌いなんだ。自分が。
他人に認められたい。自分を認めてあげたい。吐き気がする。とっととくたばった方がいい。
さぁ早く飛び降りよう。
この世界にさよならしよう。
私が悪い。私の存在が。全てが。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。そう思って生きる日々ももうやめよう。
「今度は止めないでね」
私は屋上のフェンスを乗り越えて月を眺めた。後ろには私を睨む友人が1人。
俺はお前を止めたい。
幸せを感じてほしい。幸せになってほしい。
お前がお前になれないのもわかってる。お前が偽ってるのも知ってる。
また言われるかもしれない。
また捨てられるかもしれない。
また遊ばれるだけかもしれない。
俺はお前をわかってあげたいよ。
善人ヅラすんなよって話だよな?わかってる。
「頼れ」って言えば「また気遣わせた」
「大丈夫?」って言えば「大丈夫」
お前の欲しい言葉がわからない。
お前に出してほしい言葉を出せない。
何度見失った。
何度助けようとした。
何度引き出そうとした。
何度苦しめた。
俺はお前を捨てない。それさえも信じてくれない程にお前は苦痛を感じてるんだよな。今までどれだけの人間がお前を苦しめたんだ、誰がお前を殻に閉じ込めた。俺は知る由もない。でもお前を見ただけでわかるよ。
からげんき
あいそわらい
だいじょうぶ
げんきだよ
またあした
全部苦しんでる。大丈夫じゃないのにお前は言うんだ。「大丈夫」「大丈夫」「大丈夫」「大丈夫だから」って。自分に言い聞かせるみたいに言う。お前にとって「大丈夫」って言葉は「動かない体を無理矢理動かすときに使う呪いの言葉」になっている。
もう、やめようよ。大丈夫じゃないだろう。お前は悪くない。お前は存在してもいい。全て受け止める。幸せな日々にしよう。お願いだから。
「ごめん、今日も止める」
俺は屋上のフェンスの向こう側にいる彼女に言った。
「止めないで。君は人生楽しんで」
今日こそは死なせてほしい。
「違う、俺と一緒に楽しんでほしい」
俺には君が必要だ。
「それは無理。怖いんだ」
「俺が守ってあげるから」
「君にはいい王子が見つかるよ」
君は綺麗な顔してるから。
「俺に王子はやってこない。君という姫を迎えに来た」
お前を死なせはしない。
「・・・なんでかな、いつも夜遅い時間にここに来てるのに君が来る」
「お前が死のうとするときは決まってリスカ未満した腕になってるからだ」
「・・・上手くできなくてごめん、生きててごめん」
「そんなのやらなくたっていい、生きてていいんだよ」
「無理だよ、限界だからもう死にたい」
「そっか」
俺は泣き出した彼女の元へ向かう。
フェンスを越えて、手を繋いだ。
「じゃあ一緒に死のう?」
「それはだめだよ・・・私一人でいい。それに、綺麗な顔が台無しになっちゃうよ」
「それを言ったらお前のかわいい顔だって台無しになっちゃうよ」
「なんでかな、なんで君はこんなに優しいの」
「泣かないで、俺のお姫様。顔は守って一緒に飛ぼう」
「でも、でも、」
俺は彼女の頭をゆっくり撫でてあげた。
「大丈夫、怖くないからね」
「うんっうんっ」
俺は彼女の手をしっかり握った。
彼女は俺の手を握り返した。
一緒に生きる道を選べなくてごめん。
一緒に死ぬ道を選んでごめん。
屋上から落ちた2人はふわりと静かに落下していく。それを目撃する者は誰1人いなかった。