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誤解

「と、いうわけでして」

 時は戻って乃亜との話し合いの場。私が悪いんです、ごめんなさいと繰り返す乃亜を制して、俺は事件のあと空と話し合ったことを大体伝えたところ。

「それはほんとう、ですか」

 乃亜はしばらくの間ポカンとしていたが、ふとそう言った。

「ええ、改めて、あのときはありがとうございました」

「兄さん、猫兄さんを助けていただいてありがとうございました」

 くすっと笑いながら妹も俺に続いてお礼を言う。

「は、はい。えっと、どう、いたしまして?」

 乃亜はお礼を言われ慣れていないような感じで頭を下げた。さっきから何度も頭を下げていて、そろそろ首が折れちゃいそうだ。そろそろ緊張や誤解を解いてあげないと可哀そうになってきた。

「智枝さん、お伝えした通り、智枝さんはおそらく何か大変な誤解をされているんじゃないかと俺たちは思っています。聞きたいことがあります」

 俺は乃亜の両目をしっかり見据えた。乃亜は心配そうな目でそれに応じてくれる。

「田辺の犯行、それからその他多くの通り魔的殺人事件、それらは乃亜が魔法で仕組んだことですか?」

「し、仕組んだわけではないんです。でも、私が蘇生した人たちがみんな事件を起こしていて、だから、そうなんじゃないかと」

 言葉じりがどんどん萎んでいって、後の方はほとんど消え入りそうな声で乃亜は言った。

 なるほど、と俺は空と目を合わせた。

「乃亜さん、私の魔法はさっきお伝えした通り、願いを聞く魔法です。乃亜さんが魔法を使ったところを私は見ていましたし、蘇生される三人の方の願いを聞いてもいました。確実とはいえませんが、おそらく、乃亜さんの魔法は傷を癒して蘇生する魔法で間違いないと思います。蘇生された後、田辺さんから、人を殺したい、という願いは消えていましたし、被害者の二人に関しても、魔法の後にそういう願いは聴こえませんでした」

「で、でも、じゃあ、どうして」

「それは分かりません。偶然、ということはほとんどありえないでしょうし。誰かが意図的にそうしたと考えるのが妥当だと思います。あくまで想像ですが、俺たちのような魔法使い、例えば、人に人を襲わせる魔法、なんかを使える人がどこかにいるのかもしれません。もしいた場合、それは状況的に智枝さんと近しい関係の方かもしれませんが」

「そ、そんな」

「智枝さんの病院で起こった事件については俺たちもニュースで取り上げられて知っています。誰か、心当たりのある人物はいませんか?」



「きゅ、急にそんなこと言われても……」

 長年の罪悪感と責任感によってある意味支えられてきた私の心は今ものすごく動揺していた。私の魔法は、人に人を襲わせる魔法、じゃない? ただの、死者蘇生? ただの、ということはないが、それじゃあ私は今までずっと勘違いを? それも誰かに意図されて? でも私が魔法を使えることを知っているのは両親だけのはず。私にきょうだいはいない。意図せずに誰か、病院の関係者に知られてしまった? 誰だろう。数が多い。蘇生した患者さんと接触できる人なんてたくさんいたはずだ。分からない。第一、私は今までに何人の患者を蘇生したのかも正確には分からない。覚えていないし、記録もされていないだろう。じゃあどうすれば。



「……さん」

「智枝さん?」

「は、はいっ」

「大丈夫ですか? 今日はもう帰りましょうか」

 藤峰君が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「い、いえ、大丈夫です。ちょっと混乱してしまって」

 私は慌てて取り繕う。

「無理しないでください、送っていきますよ」

「あ、ありがとうございます。だ、大丈夫です、本当に」

「兄さんが嫌なだけだったら遠慮なく言ってくださいね。私がおともします」

「それは傷付く」

「そ、そんなこと、ないですよ」

 嫌ということはないけれど、あの拳銃の感触を思い出しそうになって、少し怖いかもしれない。そんなこと本人には言えないけれど。

「やっぱり、今日のところは帰らせていただきたいと思います。まだ頭が整理できていないというか」

 私は正直なところを伝えてみる。

「そうですね、俺たちももう少し考えたいこともありますし、続きは次回に」

「はい。ありがとうございます」

「あ、連絡先、交換しておきましょう」

 そう言う藤峰君と妹の空ちゃんと携帯を示し合わせて連絡先を交換する。

「あ、乃亜さんのアイコン、サボテンですかね、可愛い」

「見てると癒されるんです、可愛いですよね」

 そんな話をしながら、私たちは最寄りの駅に向かった。

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