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新生活

 高校入学から半年が経過した。私、智枝乃亜の新生活は順調とは言い難かった。市内を中心に歩き回って、かつて蘇生した人物を渡り歩いたけれど、いずれもまだ凶行には走っていないし、その兆候もまるでない。

 通っている高校にもかつて私が蘇生した人物がいる。しかも同じクラスに。名前は田辺はじめ。小学生の頃、交通事故で亡くなった、はずだった。父の病院に搬送されて、私が蘇生しなければ。彼はテニス部でクラスでも活発に過ごすごく普通の男の子だった。半年間、同じ教室で過ごした私は、彼がいつ凶行に走るのか気が気じゃなかったけれど、今のところそのそぶりはない。クラスに不満を抱えているとか、家庭環境に何か問題がありそうな雰囲気もなく、本当にこの子が人を襲うようになるのだろうかと私は早くも半信半疑になっていた。クラスの子たちからは私が田辺君のことを好きなんじゃないかとからかわれたりもしていて、私は少し心が折れそうだった。

 クラスはまもなく文化祭を迎えようとしていた。私のクラスはお化け屋敷をやるらしい。これまた準備が大変で、人の出入りも流動的なので実に監視がしにくかった。当の田辺君は呑気に青春を楽しんでいる。ああ、いいなあ。私もそんな無邪気に高校生活を送ってみたかった。場合によっては、どうせ殺人の後に自殺するなら、その前に殺してでも殺人を止めなければならないと覚悟している私は、今日も田辺君に視線を送り続ける。



 高校入学から半年が経過した。俺、フジミネリクトの新生活は何の変哲もなく過ぎ去っていった。このまま順調に高校生活を送って、それから大学、社会人と、久しぶりの人生を謳歌しようとしている自分にとって、それはこの上なく幸せなことに思える。ただ少しばかり気になることがある。智枝乃亜。彼女をどこかで見たことがあるような気がするのだが思い出せない。それと彼女が田辺はじめに熱心に視線を注いでいる理由。観察してみるに、どうにも恋煩いとかそういう類の視線には見えなかった。どちらかというと怖がっているような、警戒しているような、恨んでいるような感じがした。田辺はごく普通の男の子だ。何か裏でひどいことをしている、あるいはしていた話など聞いたことがない。何度か家にも遊びに行ったことがある仲だけれど、家庭もごく普通の様子だった。まあ人間、何を抱えているか分かったもんじゃないので知ったかぶるのもよくはないけれど。ただ、十中八九、彼が智枝乃亜に対してそのような感情を抱かせるようなことはしないだろうと思うので、俺はいつも不思議に思っていた。そして今日も。そろそろ本人たちに直接聞いてみるのもいいかもしれない。

 クラスはまもなく文化祭を迎える。俺のクラスはお化け屋敷をやるらしい。これまた準備が大変で、まあそれも含めて青春ってやつなのだろう。なんだか背中がむず痒くなる。自分の正確な年齢などとうに忘れてしまったけれど、まだそういう感覚を思い出せるくらいの年齢ではあるらしい。そう思うと途端に気持ちが軽くなった。人生これからって感じだ。実に清々しい気分だった。

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