あ、一緒にじゃないんだ……
「あでっ⁉︎」
「大丈夫?怪我してない?」
意気揚々と、ポークは短い脚で早歩きしていたのだが、背丈80cmほどの彼にはフィナたちについて行くだけでもひと苦労もふた苦労もある。
ぬかるみに足をとられ、落ち葉に滑り、石ころでさえつまずけば今みたいに簡単に転んでしまう。心が大人であっても体はしっかりと未熟なのだ。
「無理すんなよ?臭くてもよけりゃうちの筋肉ハゲの背中もあるからな」
後衛の塊に加わって頑張るポークをララとユズが応援して、時折転ぶポークを助け起こしたりもしている。しているが抱いてあげたりということはない。
「大丈夫です。ぽくは男の子ですから……っ」
ポークが拒否するから。それは早く体力をつけて生きていけるようにとの想いと、シュシュにカッコつけたいという下心からだ。
「つってもなあ……じゃあ俺がおぶってやろうか?」
「いっ、ダメですっ。それじゃあシュシュさんが大変で……」
シチュエーションが違えば、ふたりきりならお願いしていたかも知れない。あの黒ゴスの背中におぶってもらえたらどんなに幸せだろうかとポークは想像するが、男の矜持がそれを即座に否定する。
「──とか言ってシュシュよ。どうせそいつを背負った上で俺にのしかかるつもりだろう」
「はっは、バレてたか。まあおっさんなら子ども2人くらい訳はないだろう?」
勝手に貸し出されそうになったリハスもため息をつくばかりだが、このままではまともに進むことさえ出来ない。
見かねてポークを後ろから担ぎ上げたリハスが肩に乗せてやる。いまだに着る服もなくすっぽんぽんのポークは落ちそうになりながらもリハスの頭にしがみついてその高さにビビってしまう。
「うえっ、ななな、ぽくはまだ歩けますぅ」
「歩く練習はまた後で、だ。この階層を越えて次のギルドで」
「……はい」
ポークはこの体で生まれて生き延びるうちに歩く走るなどはいくらか出来るが、当然として彼ら冒険者並みになど無理である。
「そうだな、次のギルドで……だな」
リハスとシュシュではこのひとつを取っても意味合いが違う。
安全地帯での練習なら許容するという考えはもとより、高階層とはいえギルドになら預けて任せられるというリハスの考え。
一方でこの得体の知れない存在を手元に置いて監視したいシュシュは、お披露目する機会もなかったからとまだリハスに話していないシュシュの“ブースター”により最短のレベル上げを行うためにギルドでのパーティ登録が必要だとの考えである。
(ギルドの登録は自己申告。服着せて俺たちがとりなせば問題もないだろう。こいつは知りすぎているし、何より俺たちがこんなことにしちまったんだからな。連れて行って、その中でどうにか道を見つけてやれたらいいか)
ドライに見えてなんだかんだ面倒見のいいおじさん幼女もモエの背中に飛び乗ると、一行はのんびりした分を取り戻すように走り出した。