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本当に酔ってねえだろうな

「というわけで、だ。俺たちはさっさと攻略を始めるべくギルドのあるコミュニティを出てきたわけだが──」


 誰に語るわけでもないシュシュのひとりごと。


「まあそう気にするな、かぼちゃパンツ幼女。俺たちもどのみち攻略しなきゃなんだからよ」


「──モエたちの火力をアテにしてんだろ?」


「ま、まあ……否定は出来んな」


 ユズたちを引き渡した翌日朝。コミュニティの集合場所とした外との出入り口には、シュシュたち一行と待ち合わせでもしていたかのようにオスメたちが揃って立っていた。


「シュシュちゃんは私が守るからねっ!」


「あー、そういうことなら、よろしく頼むよ」


 オスメにジト目を向けていたシュシュも、ユズに後ろから捕獲されてそんな事を言われれば悪い気はしない。


「リーダー、俺たちゃ前に出てればいいのか?それとも索敵に出る方がいいのか?」


「そうだな、ゲルッフはそれでいいとしてザーパフは後衛を守れるようにそばにいてくれるか?なにせかぼちゃパンツがいるんだ。恩人に死なれたら寝覚めが悪い」


「分かった」


 普段のオスメたちであれば、盾を持つザーパフがオスメたちの前に立ち、守りの要として機能するのだが、見た目にか弱いシュシュの守りを優先するために、槍のゲルッフが索敵と排除を任される。


「もちろん俺も前だ。ユズとララもかぼちゃパンツと一緒にいてくれ」


「うん、まっかせてよ」


 ユズからシュシュを受け取ったララは、抱きかかえたシュシュの頭を撫でながら元気よく返事する。




「──シュシュはえらく気に入られたみたいね」


「口は悪いが見た目は良いからな」


 されるがままになっているシュシュを見るフィナとリハスはそんな会話をしながら、まだここに来ていない1人を待っている。


「それにしても──あの子が遅刻なんて珍しいわね」


「昨夜また酒でも飲んでたか?」


「今回はそんなに飲んでないわよ。ジョッキに5杯くらいだけよ」


「飲んでんじゃねえか……」


 リハスはすでに嫌な予感がする。なにせこの地雷ゲロコンビは酔い潰れた挙句に行方不明になっているのだ。無慈悲な禁酒令を出してやりたいほどである。


「お待たせなのですっ」


「うえっ⁉︎なんで外から来たの⁉︎」


 コミュニティで寝泊まりしてこれから出発しようかと集まった面々なのだから、モエが遅いなと眺める向きはみんな安全地帯コミュニティの宿である。


 そんな当たり前を裏切ったモエはコミュニティの外から現れて、何やらいい香りまでさせている。


「──モエ、あなたもしかして」


「狩ってたな?」


「うえへへ……なんだか近くに気配があったので、抜けがけしちゃったのです」


「はあ……」


 だから血に塗れた体を原生林フィールドの中で朝シャンして流してきたのだと言う。いい香りはそのためである。


 ついでに言えば吐息にいくらかのアルコールが混ざっているが、朝シャンの甲斐あってリハスにはバレていない。


「うちの猫ちゃんの索敵能力もアテにしてもらっていいぜ」


 そんなモエの行動を咎めることなくオスメたちにアピールするシュシュ。


「ただ、俺たちも困ってるんだが、うちの猫ちゃんは敵を見つけたらすぐに駆け出しちまうからな。うかうかしてると、あくまで別パーティのそっちには経験値も入らねえかも知れねえ」


「なっ……そんなに、なのか?」


「ああ。そんなに、なのだ」


 真似て返した結果、シュシュの語尾が変なことになったがオスメたちとしてはそれでは困る。


 シュシュたちは同じパーティで経験値が当分されるのだから、モエがハッスルしていてもそれぞれに勘を磨けるくらいの戦闘が出来れば構わない。


 モエの実力は話でしか知らないオスメだが、本当にとんでもないものであった場合、配置を指定しなければ収穫ゼロもあり得ると考え、モエの方を見る。


 そこには誕生日を迎えて22歳となった猫獣人が体操をしていた。


 これからが本場とばかりに体を伸ばすモエは、やはり獣人の要素が多く出ているのだろう。


 周りを警戒するかのような猫耳の動き。


 動きやすさを重視した薄手の長袖シャツを着たモエが、腕を上げて伸びをすれば強調される豊かな胸部。


 丈の短いスカートは、屈伸をすれば捲れてその綺麗なお尻を惜しげもなく晒してしまう。下にはスパッツのようなものをはいている為にパンチラとはならないものの、ハッキリとわかる曲線と健康的な太もものハリは眩しいくらいである。


 加えて、顔もいい。美人と称して間違いないフィナと話すモエの笑顔が可愛くてオスメだけでなくザーパフもゲルッフも少しの間、言葉を発することなくそのふたりに見惚れていた。


「あれで武器が鉄球じゃなく、頭もマシなら」


 誰が呟いたのか。そんな言葉に現実に引き戻されたオスメがやっとモエに提案を持ちかけようとした時には。


「あっちなのですっ」


 スパっと走り行くモエ。


「んじゃ、ま。行くかね」


 シュシュが言い、「まったく、モエったら……」とフィナが追いかけて無言でリハスも付いていく。


「ん?オスメたちは行かねえのか?」


「……お、おうっ!行くぞおおっ!」


 パーティとは。陣形とは。


 そんなものを考えていても猫ちゃんは離れて行くだけである。


 少し遅れてシュシュを交えた“南風”も走り出した。


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