女の子同士、なのです?
「ねえ、シュシュちゃん。その、とりあえずは3人でいいんじゃないかな?」
「あん?フィナは人見知りとかか?」
なんだかモジモジするフィナは新しいメンバーを入れる事に否定的なようだ。
「そうじゃないんだけど、このパーティってシュシュちゃんのスキルの影響下にあるんだよね」
「まあな。常時発動型でパーティを組めば自動的にそうなるな」
「それってわたしのアレの影響下でもあるってことよね?」
話すフィナの顔は次第に赤みを増していく。
「あー……たしかにそれは切実でデリケートな問題だわな。仕方ねえ諦めるか」
「お、おいスキルってのは何の話だ?常時発動だと?その話は聞いていない」
カウンターに座っていたシュシュが降りようとしたところをスキンヘッドがその手を取り引き止める。
「そりゃ言ってねえからな。それにこれはとっときの秘密だからよ──教えるわけにはいかねえんだわ」
“ブースター”のメインの効果はこのあたりの階層では殆ど恩恵はない。
熟練度最大化についてもランダムでフィナのような困った事にもなりかねない諸刃の剣な面もある。
秘密にしているうちだけが確かな価値を持つと判断してシュシュは語らずにその場を離れた。
「しゃあねえ、とりあえず3人で──新メンバーはフィナが恋でもしそうな男前にするか」
ギルドを離れ、飯を調達しながら話すフィナたち。
「ちょっ、そんなんじゃないって。それに入れるなら女の子の方が……」
「フィナ、お前はまさかそっちの──」
「ち、違うってば。女の子ならそんな一線を越えたりもしないでしょうってことで」
「一線?なのです?」
モエにはその意味が分からないでいる。
「フィナよ、一線てのは女の子同士でも越えられるもんなんだぜ?」
「んなっ、そんなっ……じゃあもうどうすればぁ」
「はっはぁ、そん時はそん時で楽しめばいいだろうよ」
「一線……?」
辛うじて理性を保っているフィナもいつまで耐えられるか分からない。
シュシュはそれも面白いと笑い、モエは言葉の意味を考えて分からないから忘れることにした。
「まあスキンヘッドの言う事は間違いねえ。俺たちはあまりにも正道を外れている。邪道と言ってもいい」
この先の階層で期待されるはずの魔法使いは普通の魔法が使えず、弓使いステータスは弓が下手くそで近接武器。
「俺に至ってはまだ戦闘を試してもいねえ。というより戦闘せずに金稼ぎばかりしてたやつで、100年以上も地下で徘徊していただけのやつだ。当てにする方がどうかしている」
グール魔法もその全貌は見えていない。
「近接、中距離・近接、無力」
フィナもその組み合わせが不味いことくらいは分かっているが、改めて口にするとより不味い気がする。
「魔法使い、入れちゃおうか」
「まあ、それが安パイだよな」
「にゃのですぅ」
それはモエの存在意義を根幹から揺るがすものだが、そもそもその根幹が存在しているかも怪しい。
「魔法使いが2人いるパーティも珍しくねえ。だから、構わねえだろ」
買い物を終えて部屋に戻ったフィナたちは食事を済ませたあとのその日の残りの時間を自分たちの能力の確認に割くことにした。