あと2人欲しいのです
「モエは……魔法使い、と。レベルが30で使える魔法は……ない?武器は鉄球?まじか、おい」
「まじ、なのですよ」
翌日、ギルドで話を終えたモエたちは、どうするにせよとりあえずはパーティとして登録しておこうとなった。
「フィナは……弓使い、と。レベルがこっちも30で、武器は剣?弓じゃねえのか?」
「その、真っ直ぐ飛ばないんだよね……」
フィナはここに来るまでに試していて、やはり弓の下手くそ度合いが変わらないことに肩を落としてやって来た。
「シュシュは……弓使い、と。レベルが──30とか嘘をつくなよな」
「本当さ。“ステータス、ディスクローズ”」
カウンターに座って話すシュシュもフィナと同じルートを辿ったためにジョブは弓使いとなっている。
皆の登録を進めるスキンヘッドはそんな馬鹿なと呟き、種族を確認したところで目を疑う。
「なんだ“エルフ / グール”ってのは」
「そりゃあれだ。グールのように貪欲だっていう表記さ」
シュシュの言い分にそんな訳あるかと言いたいスキンヘッドだが、そんな表記は初めてでしかも他人にステータスを見せる手法を心得ているシュシュがただの子どもではないと、見なかった事にする。
「この、3人パーティでいいんだな?」
「もちろんなのです」
はあ、とため息をつくスキンヘッド。
1年前に心配したコンビに成長が見られるのかどうか分からないが、神隠しから仲良く帰還して、今は同レベルの仲間が1人増えたのだからと一応の了解をする。
「──とはいえ、出来れば5人パーティを組んで欲しいところだとだけは言っておく」
「サンキューな。入りてえやつとかはいそうか?」
スキンヘッドの気遣いの言葉には1番謎で不安材料なシュシュが気安く答える。
「いない、ことはない。分かっていて聞いているのだろうが、塔の攻略はその性質上いつ死んでもおかしくない。そうして数を減らしたパーティや1人になった不幸なやつがこの階層にもいる」
「リスト、あんだろ?見せてくれよ」
「何故か色々知ってるようだが、見せられる訳ないだろ。お前たちが選ぶ側なわけはない」
「ちぇっ、ケチだなあ」
やけに物知りなゴスロリルックのエルフ幼女の口の悪さにスキンヘッドの開いた口が塞がらない。
「シュシュちゃん、リストってなんなのです?」
「今言うところのリストはパーティ募集や応募している連中の情報の載ったやつだな。俺たちも募集を掛ければそこに仲間入りすることになる」
「そうなのですか」
モエはそれなら募集をかけるのですと提案する。
「モエ、俺からも言っておくが、お前たちは去年に応募登録していて誰からも拾われなかった稀有な人材だ。それが募集側に回ったところで変わりはしないぞ」
「は、はいなのですぅ」
首からプラカードを提げていた頃を思い出してモエはしょんぼりする。
「ところでモエは獣人だったのか?」
スキンヘッドは今更にモエの変化に関して尋ねてみた。
「ああ、モエは“ヒューマン / 猫獣人”だな」
「はいなのです」
素直なモエが嘘をつくとは思えないが、もはやスキンヘッドには何がどうなっているのかさっぱり分からなくなってしまった。