モエのはじめて
「それで隠していたもうひとつの効果って?」
話は戻りシュシュが言いかけていたことを聞き出すフィナ。
「それは、だな……んん。熟練度最大化っていう効果……だ」
フィナはシュシュの言うその効果を今ひとつ理解できないでいる。
「モエ、もう少し下も頼む」
「任せてなのです。卵肌ってこういうのなのですね」
「んっ……」
「シュシュちゃん、その効果って実際にはどういうものなの?」
2人のやり取りは無視してフィナは話を先に進める。
「人は剣が上手かったり弓が上手かったりするだろ?何もそれって武器の扱いだけじゃねえんだよ。料理もそうだし石を投げることだって走る事だって上手い下手がある……んっ」
フィナは目を閉じてただ頷き先を促す。
「それはステータスで確認出来ないもので体感でしかないんだが、俺は俺のスキルの影響範囲下にある人の何が熟練度最大化しているかを知ることができる」
「つまりその人が得意とする事が分かるってこと?」
「俺のスキルの影響でそうなったものに限り、だ。そしてそれは2つまで、しかも何がとは選べない。モエの“指使い”なんていう熟練度が最大化しているのは俺のせいじゃねえ……っああっ、気持ちいいなおいっ」
先ほどまでシュシュの髪の毛を揉んでいたモエの指は、下に降りて素っ裸になったシュシュの首筋から鎖骨、腕、胸、お尻にお腹ときてまだ下が残っている。
「これで全身臭く無くなるなんてシュシュちゃんは発想が素敵なのです」
「モエの“指使い”なんてのに気づいたせいだけどなっ、あまりそこはいじるな。幼女は目覚めるにはまだ早え」
真面目な話をしながら行われているのはゴッドフィンガーを手に入れてしまったモエによるフレグランスマッサージである。
「──わたしは何を見せられているんだろうか」
冒険のパートナーが幼女の裸体を余す所なくその指で揉みしだいているのだ。
匂い消しにしても余りに気持ちよさそうなシュシュの表情は本当に気持ちいいだけなのか。
「ちなみにモエのもうひとつは“水使い”だ。どっちも今役立っている。上手く働いたものだ、よっ」
「ええぇ、魔法が上手くなったりではないのですぅ?」
「明確なスキルとかがある奴ってのはなかなか当たらねえ。モエの場合は有効活用出来るからいいじゃねえか」
モエの手を逃れてさっぱりしたと息をつくシュシュ。
「んん……ふぅ。ところでわたしのは何なの?」
モエに発動しているなら自分にも発動しているはずだと気になるフィナ。
「あ、あー……聞きたい?」
「嫌な予感しかしないけど聞きたいわ」
“モエの場合は”などと言ったシュシュの言葉を思うと自分は大した事ないのだろうと思いつつ聞かずにはいられないフィナ。
「……料理」
「えっ!ちょっといいじゃない!わたし料理上手っ⁉︎」
何も役に立たないよりは全然いいと喜ぶフィナ。
「……あと、感度」
「んん?それは──魔力の感知能力とか?それって魔物が近くに来たり、魔法攻撃が来たりしたら気づけるんじゃないの?すっごいじゃない!」
勝手に解釈して喜ぶフィナに申し訳なくてシュシュは視線をそらしてモエで遊ぶ事にした。
「モエも脱げ。汁だけ出し続けてれば俺が綺麗にしてやる」
「えっ⁉︎いいのです?じゃあお願いするのですよ」
いそいそと服を脱ぐモエは全く警戒心がない。
もはや目の前の幼女がグールの前は元男性だなんて記憶にないかのようだ。
「んっ、猫耳がくすぐったいのです」
「こういう毛だらけのところは匂いが残るからな」
「んんんっ!なんか揉み方がテクニシャンなのですよっ!」
「仕方ねえだろ。そういう時しかした事ねえんだからよ。それにしても……Eか、いや、Fだな」
「はうぅっ、そそそ、そんなところまでっ!」
「モエは汁を出し続けろ。こっちの汁じゃねえ、指からの魔法の方だ」
「しか、仕方ないのですっ!モエも別に、そんな、あうっ、指!そこは必要ないのですっ⁉︎」
「ああ、すまねえ、つい滑り込んじまった。なんていうか……未使用、だな」
「ひぃっ、なんで分かるのですっ⁉︎」
「──カマかけただけだ。けど、そういうのが通じるんだな。案外モエも……」
「ななな、何のことなのですっ⁉︎モエは何も知らない、いたいけなレディなのですっ!ああっ、しっぽっ!しっぽが気持ち良すぎるのですぅぅ──うぅっ……」
「今なら何しても許されそうで怖えよ。と、まあ……フィナの“感度”ってのはこっちのことでよ──最大化すると他人にも少なからず影響を及ぼしちまう、みてえだ」
モエが果てるまでその痴態を“まるで自分のことのように”息を切らせて見ていたフィナは突然に話を振られて驚き固まる。
「敏感どころじゃねえ、それが最大化だからよ。見てるだけで共感して自分はもう──。他人への影響ってのも馬鹿になんねえ。ウブなモエもこの通りで、幼女のこの身体でも少し反応しちまったくらいなんだからよ」
何の話か理解出来るまでにいくらかの時間を要したフィナは想像とは全く違う内容にひどく落ち込みもしたが、それ以上に頭がピンク色で、話が出来るようになるまでに落ち着くのにはもう少し時間を必要とした。