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おじさんで構わないんだがなあ

「なにはともあれ名前、か」


「おじさんにも名前はあるのです?」


「当たり前だ。けどまあ、なんていうのか今世?の名前とは違う可能性もあるよな。なんせ男から女になって種族まで変わってんだ」


 おじさん幼女はブーツの紐を縛って着用感を確認している。


「名前が違う可能性?」


「フィナはその名前をどこで教えられた?」


 うーん、と悩むフィナ。悩んでも出てきはしない。


 なんせ物心ついたころにはそれが自分の名前だと理解していたのだから。


「答えはステータスにある。“ステータス、ディスクローズ”」


「えっ⁉︎おじさんのステータスが、見える……って名前と年齢、種族にレベルだけじゃない」


 普段からフィナたちが自分で見るために使っているのは“ステータス”と口にして出てくる自分だけにしか見えない情報である。


「見せてもいいって内容だけを他人に見せられるのが今言ったもので、赤子が言葉を使い始めた頃にそこのおばあたちが躍起になって教える言葉でもある。そうして周りはその赤子の名前を知るんだ」


「じゃあさ、名前ってなに」


 おじさん幼女は袖口のヒラヒラも気になるのか、どうにかして蝶結びをしようとして苦戦している。


「おそらくは、塔が決めている。区別するために、な」


 誰も名前の由来など気にした事はない。みんながみんな、ただの呼び名であるとしか思っていないからだ。


 名付けという風習すらない。


「俺はもともと“ニト”っていう名前があったんだが……はあ、なんていうかまあ」


「“シュシュ”ちゃんなのです」


「“シュシュ”っ!似合わなぁっ!いや見た目はいいんだけど、中身と全然っ!」


「まったくだ。はあ……」


 おじさん幼女改めシュシュは自分の名前がやはり可愛いものでガッカリと肩を落としている。


「“ステータス”……まあ、能力的にもレベル1らしいわな。地道にやるしか……ん?」


 シュシュは自分向けのステータス画面で詳細を確認しているのだが、その中で気になるところを見つけてほくそ笑む。


「なあ、この先どうするにしてもよ。とりあえずそうだな、10階層辺りに行こうぜ」


「別に構わないけど、さすがにレベル1には辛いわよ?」


 この祭壇のある1階層もコミュニティの外に出れば小さなバッタのような魔物がいる。


 それらを地道に倒してレベルを2にするのが初めての目標ではあるが、シュシュにそれを言う必要などないのは明白。


「パーティを組めば、経験値は等分されるだろ?」


「あーっ、ズルしようってことね!でも、おじさん……シュシュちゃんの場合はそれでもいいか」


「ちゃん……。まあ、あれだ。俺の固有スキルがそのまま残っていてな。おかげで足手まといは最初だけで済みそうだなってよ」


 そうと決まればと1階層の転移ポータルを目指すと言って歩き始めたシュシュにフィナとモエも続く。


「あ、おばあ……また来るのですよ」


「そうだねぇ、またねぇ」


 塔の上を目指す者たちは滅多と下層には降りてこない。


 ましてや1階層などは年寄りか赤子から6歳児までの子どもしかいない。


 モエなりにその歳の間だけとはいえたっぷり可愛がってもらったおばあにお別れを告げて祭壇のある部屋を出た。


「あのおばあに別れを告げてきたのか」


「またねって、言ってくれたのです」


「──そうかい」


「?」


 おばあのことにはこれ以上触れることなく、モエとフィナにシュシュは転移ポータルを使って10階層へと移った。



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