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さすがにそんなものが付いていたら気づくのです

「おやおや?いつのまに人が……」


 赤子の泣き声でなくともこれだけ騒げば誰かは見に来てしまう。


「あ、おばあっ!」


「おやおや?お前さんはモエ……?」


「そうなのですっ!大きくなったのですよ」


 おばあはモエが生まれた頃から世話になっているおばあちゃんで、モエが知る限りずっとおばあちゃんである。


「あらまあー。大きくなって──」


 おばあはエルフっ子から離れて駆け寄って来たモエの頭を撫でてよしよしなんて言っている。


「その上、猫耳なんてのまで生やしてどうしたんだい?」


「はにゃ?」


 おばあはモエの頭を撫でて、そこにある何かをコリコリクニクニといじくっている。


 訳が分からずフィナを振り向くモエ。


「いや、その……モエの事だからそういう事もあるのかなって──」


「俺もモエだと思ってモエじゃねえのかと思ったけど、どう考えてもモエだから本当は獣人だったのかなってよ」


 さすがにそんな事は無いだろうけど、モエの事だからでやり過ごそうとしたフィナ。


 グールおじさんからエルフ少女になってちんちんの在処を気にしていたおじさんでさえ困惑している。


「にゃ、にゃんてことにゃのですぅーっ⁉︎」


「あらあらまあまあ」


 おばあに撫でられながらモエは頭の上の耳を掴んで叫び声をあげた。




「“ステータス”」


 しばらく頭を抱えていたモエだが、思い出したようにモエがそう唱えると、モエにしか見えない情報のパネルが顔の前に現れる。


「種族……ヒューマン / 猫獣人」


「いま希望が混じってなかった?」


「ち、違うのです。2つ書かれてあるのです」


「なんでえ。モエはそのハーフだったってか?」


「ハーフ?」


「別々の種族の間に生まれたのかってことよ」


「そんなことは──」


 分かるわけはない。


 この塔に生きるものはこの塔に生かされてもいる。


 グールの彼との話にもあったように、愛し合った者たちから直接産まれるわけではなく、どこでその愛が結ばれても1階層の祭壇で生まれる彼らは、両親を知ることはない。


 誰かの子どもではなく、塔の子どもという認識で生まれた子はおばあのように1階層に生きることを決めた者たちにより育てられる。


「あっ──」


「何かあるの?」


 しかしモエには思い当たる事がある。モエにだけ起きた不慮の事故。


「フィナさん……モエはヒューマンの穴に入らなかったのです……」


「んなっ⁉︎ええっ」


「おい穴って何のことだ?まさか、おい⁉︎」




「あの後にそんな事が──というか俺は踏み潰されて腕だけだったってのか。それでちんちんはついてねえのか?」


「固執しすぎじゃない?どうせグールだったんだし、私似の可愛いエルフ少女に生まれた幸運を喜びなさいよ」


「100年かけた結末が結局塔の中ってだけで俺には不運だっつーの」


 グールの彼が巨大な牛に踏み潰されてから祭壇に出てくるまでをグールでエルフな少女おじさんに聞かせたフィナ。


「ところでモエは入り損ねたのはそれだけ?それとも──」


「女の穴にも入れなかったのです」


「おい、いきなりの猥談か?」


「違うわよっ。種族のそれと同じで女とか男とか書かれたクルーンもあったのよ」


「おいっ、つまりそこに俺のちんちんがあんのかっ」


 女でないならモエの身体にはその違いがあるはずだと、少女おじさんはモエの股間を掴みにかかったのだが。


「おい、何にもねえぞ」


 ペシペシとモエの股間を叩いて「これは割れ目しかねえやつだ」とガッカリしている。


「はわわ……モエはモエはもうお嫁さんに行けないのですぅ」


「お、おい泣くなよ。嫁ぎ先がなけりゃ俺が娶ってやるからよ?」


「おじさんも今はもう女の子なのですぅ」


「ぐぅっ⁉︎」


「はあ……頭が痛い」


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