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神の塔の生と死って何よそれ

「何ですって?頭上の──祭壇?」


 この塔に生きる者たちが祭壇と呼ぶのはひとつだけである。


 1階層にある塔の子どもたちが生まれ出る祭壇しかない。


「じゃあここは49階層でも48階層でもなく」


「ああ、地下1階層、だな」


「だとすると次の風に巻き上げられればわたし達も帰れる……?」


 そんなはずはないという考えからの質問。


「帰れるさ。ただし、その時にはどこの誰ともつかない赤子になって、な」


「あの風とカケラ」


「──と水、だな。それらが合わさってお前たち塔の子どもとなる」


 それをみんなで育ててやがて上を目指すんだよな、とグールの彼。


「まるでそうしなきゃならねえように決められているみたいで、気持ちが悪いな」


 そこに空から砂原へと1人の人が落下してくる。


 力なく落ちるに任せた人影はそのまま砂に身体を埋め込んだ。


「わたしたちもああして落ちて来たのね。助けに行かなきゃ」


「やめとけ。行っても無駄だ。ここに来るなら拒まない。だけどあそこにいるなら──」


「いや、わたしたちも助けてもらった訳だし。行こうよ」


 話はあんまり理解出来ていないが風に巻き込まれるとただでは済まないと言うことは理解した。


 だからこのグールは自分たちを助けたのだろうと。


「お前たちとは違うんだ、あれは」


「何がよ。こうしてるうちにもほら、またカケラがっ」


「だからよ、お前たちとは違ってあれはだな──」


「?」


「死んでるんだよ」




「あの人、風と一緒に消えてったね……」


「塔で死ねばみんなここに来る。そして抗うことなく風に攫われれば新しい命に統合される──生まれ変わりってやつだ」


「抗うことなく、って。じゃあ抗うと?」


「グールになる」


「うげ」


 3人は青い湖の周りをただ徘徊する。


「そもそも死んでるならどうしようもないじゃない」


「あー、けどな案外そうでもないんだぜ?今はすぐにああしてカケラが降って来たからな。あんなにタイミングがいいのも珍しいもんだ」


「タイミングが合わなければどうなるのです?」


「もし48時間以内にカケラが現れなければ、その時仮の命を与えられて俺たちみてえになるんだ。そんで、その時にあいつはやってくる」


「ちょ、今度こそ怪談でしょ」


 これ以上変なことがあるならそうなのだとフィナはおびえる。


「なーに、別に恐ろしいもんじゃねえ。もんじゃあねえんだが、あいつは自分を“神”だと名乗ったな」


「神様に罰当たりじゃない?あいつ呼ばわりも騙るのも」


「騙る、か。なんでそう思うのかは聞かないでおこう。信仰とかはめんどくさいからな」


 グールの彼は湖を指差して


「あそこからよ、バカでけえ牛が現れてな──」


「牛?神様は牛なの?」


 いよいよ胡散臭い神様だとフィナは眉根を寄せて不信感をあらわにする。


「クレームを入れられたんだわ」


 グールの彼は遠い過去を辿るように空を見上げて語る。


「ぷっ、何よそれ。あなたに神様が何のクレームを入れるって言うのよ」


「何て言われたのです?」


 からかうフィナとは違いモエは真面目に訊ねる。


「神の塔の攻略が進まない、お前たちでクリアせよ、ってな」


「地下から抜けられない死骸がどうやってよ?」


 フィナも攻略の話が出て聞く気になった。


 それはつまり他の階層へと移動することに他ならないはずだと。


「残念だが思ってるのと違うぜ。何せ攻略の条件を追加するっつったんだ。その神様はよ。そんでその内容が“この場所で100年生き残れ”ってんだ」


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