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第三十一話 噂


「・・・ところで、聞いたぜ嬢ちゃん、俺が居ない間にコアダンジョンが崩壊したんだって?」


「悪いわねアクセル、その話は、ギルマスから口止めされてるのよ」


「・・・何か、厄介ごとに巻き込まれたみたいだな」


「まぁね、おかげでこの魔獣討伐作戦に参加できなかったわ」


「・・・嬢ちゃんとお兄さんが居てくれれば、こっちも楽だったんだがな」



 私たちを戦力的に見てくれてたんだ。


 リチャードと言い、こいつもやはり見る目があるわね。



「私たちも参加したかったけど、ギルマスにギルドカードを取り上げられてたからね、あ~私も参加したかったな~」


「・・・そう言えば聞いたかい、嬢ちゃん」


「何をよ?」


「・・・何でも、今回の魔獣の活性化だが、この街だけじゃないらしい」


「それなら、聞いてるわ、この街どころかこの国、更には近隣の国にも被害が拡大してるみたいね」


「・・・その話は本当みたいでな、冒険者ギルド総本部は、事態を重く見たらしく、Sランク冒険者たちに魔獣の活性化の原因を調べるように依頼を出したって話だぜ」



 へ~、大したモノね。


 ライラに会ったのは今日だっていうのに、もう、そう言う話が出回っているのか。


 ・・・・・・ん? Sランク冒険者・・・・・・たち?



「えっ? Sランク冒険者が複数人動いてるの?」


「・・・あぁ、何人動いているのかは、分からないが、噂ではヤバイ三人組が動いてるって話だぜ」



 ライラ以外にも、魔獣活性の調査をしているSランク冒険者がいるの!?



「誰よ? 噂の三人組って」


「・・・嬢ちゃん、Sランク冒険者の武勇伝って、聞いた事あるかい?」


「それってアレでしょ、1000の盗賊団を潰したとか、一国の騎士団を壊滅させたとか、ドラゴンの群れを討伐したとかって話でしょ」



 正直な話、それらの噂話は眉唾物だと思っていたわ。


 しかし、ライラに出会い、その実力の一端を見た今なら、それらの噂も半分くらいは本当かもしれないと思える。



「・・・その噂の、1000の盗賊団を潰したって話の出所が、その三人組なんだ・・・これは知り合いの冒険者ギルド職員から聞いた話なんだがな・・・」



 そう言って、アクセルが話し始める。


 何でも、そのギルド職員がこの街に来る前、別の国の冒険者ギルドで働いていた時の事。


 その街の近辺に大規模な盗賊団が現れた。


 往来する乗り合い馬車や商業馬車などが軒並み襲われ、冒険者ギルドに討伐の依頼が出されたのだが、馬車を護衛していた冒険者たちも軒並みられており、その規模と凶悪さに冒険者たちも二の足を踏んだと言う。


 これはもう国の騎士団に頼るしかないと冒険者ギルドが考えていた時、三人組の冒険者がギルドを訪れた。


 一人は女性、もう二人は小柄な少年と大柄な男性であったらしい。


 その三人組は、ギルド内のボードに貼られていた盗賊団討伐の依頼書を見つけると、迷うことなくカウンターに持って来たそうだ。


 多くの冒険者たちが躊躇する依頼だと言うのに、まるでピクニックに出掛けるかのように、楽し気にギルドを後にしたそうだ。


 そして、僅か半日後、討伐完了の『のろし』が上がったのを確認したギルド職員は、確認の為に街の衛兵たちと共に盗賊団のアジトへと向かった。


 アジトに向かう途中、まるで道しるべのように盗賊の遺体が落ちており、アジトに到着すると、そこには、盗賊たちの遺体が無数に転がり、辺り一面血の海だったらしい。


 盗賊たちの遺体は、潰され・切り刻まれ・首の無い状態で発見された。


 凄惨な現場にギルド職員も衛兵たちも言葉を失っていると、先ほどの三人組の冒険者が現れた。


 その内の一人が、ギルド職員に丸いボールを一つ投げて寄こした。


 受け取ったボールをギルド職員が見ると、それは討伐依頼の出されていた盗賊団の首領の生首だったそうだ。


 のちの調べで、盗賊団の生存者はゼロ、皆殺しだったらしい。



「・・・何がヤバイって、その盗賊団だけじゃなく、潰した盗賊団は軒並み皆殺しだって話だ」



 私も人の国に来てから、野盗のような盗賊退治を何度かした事はある。


 基本的に、悪党に人権は無いと思っているが大抵は、手足の骨などを折って戦闘不能にする。


 もちろん、私は不殺の精神を持っていると言う訳ではない。


 る時はるし、実際、何人かを手に掛けた事はある。


 しかし、わざわざ皆殺しにするって。



「それが本当なら、一体どんな連中なのよ」


「『通称・盗賊殺しのSランク』盗賊相手なら合法的に人殺しが出来ると思っている、血を見るのが好きな連中よ」



 その言葉に振り返ると、ライラが立っていた。



「ライラ、用事は済んだの?」


「えぇ、終わったわ」



 ライラの後ろには、リチャードとメグも一緒だ。



「・・・ライラ!? まさか、Sランク冒険者、雷鳴のライラ!?」



 アクセルが驚きの声を上げる。


 すると、周りに居た冒険者たちが一斉にこちらを振り返る。


 そして、私の獣の耳が彼らの声を拾う。



『Sランク冒険者!?』 


『本物?!』 


『始めて見た』 


『女性なのか』 


『凄い美人』



 っと、口々に囁き合う。



「ライラよ、よろしく」


「・・・あ、アクセルです、お会いできて光栄です」



 冷静沈着なアクセルが、動揺しているのは、傍から見ていて面白い。


 すると、アクセルは、私に近づき囁く。



「・・・お、おい、嬢ちゃん、Sランク冒険者と知り合いなのか?」


「知り合いって言うか、知り合ったばっかりって言うか」


「・・・何でSランク冒険者がこんな街に?」


「さっき、あなたが言ってたでしょ、魔獣活性化の調査に来ているのよ」


「・・・マジかよ」



 アクセルは、私とライラを交互に見比べ、唖然とした表情を浮かべる。


 そりゃ、まぁ、驚くわよね。


 冒険者の中でも最高峰の、Sランク冒険者が目の前に居るんだから。



「あなたの事は、ギルドマスターから聞いているわ、今回の魔獣討伐作戦では、ずいぶんと活躍したみたいね」


「・・・きょ、恐縮です」


「魔獣を討伐した時の状況を聞きたいのだけど、良いかしら?」


「・・・は、はい、それでしたら共に討伐した仲間もおりますので、その者たちも交えてご説明いたします、どうぞこちらへ」



 アクセルはそう言うと、ライラを連れてゴブリンキングの方へと歩いて行くと、仲間に集合をかける。


 それを眺めていると、メグが声をかけてきた。



「あのシャオさん、ライラさんから聞いたんですけど、この街を出るんですか」


「えぇ、成り行きでね・・・メグも、ギルマスも短い間だったけど世話になったわね」


「脅威度Cランクの魔獣を倒したり、ギルド内で喧嘩したり、鍛練所を破壊したり、その他いっぱいトラブルを起こしていましたけど、居なくなるのは悲しいです」


「そうだな、君たちが居なくなると、静かになって寂しくなるよ、いや、本当に」



 メグもリチャードも、本当に悲しんでいるのかしら?


 そう思ってるのなら目を合わせなさいよ。


 何で目が明後日の方向を向ているの!



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