FILE.7 一通から訪れる破綻の末路
コーヒーの香りが漂う店内は、黒を基調とした、レトロ風な洒落さを醸していた。
時刻は平日14時過ぎ。合間を楽しむ主婦達もいれば、Ul-Di*¹完備の店内を活用し、課題や仕事に勤しむ、学生と会社員の姿が疎らにあった。
「おや? 共通点は掴んだようですよ? 」
ホロキーボード*²でデバイス操作をしていた男の指が止まる。狐のような男の口は、不適な笑みを浮かべた。
目黒区青葉台914-樫木宅。
閑静且つ、高級感溢れる住宅街の一等地に3階建ての戸建てが建っていた。
インターホンを押す、空。
「はい。どちら様でしょうか。」
呼応する声の主は、樫木の妻だろうか。声で一目瞭然な程、か細く、豪邸に似つかわしく無い暗さが滲み出ていた。
それもそのはずである。樫木怜央は4ヶ月前に結婚したばかり、つまりは新婚であった。中央省庁、それも大臣秘書官だった樫木は、党の政略により、紹介者と結婚した。言わば政略結婚だった。時代と逆行した結婚ではあったが、樫木は妻を愛しており、妻も樫木を心底愛していた。だからこそ、樫木の死を受け入れられずにいた。
「公安庁です。ご主人の件で伺いました」
インターホンのカメラにデバイスを向け、ホログラム化した警察手帳を見せる、空。
「公安の方…どうぞ、お入りください」
その言葉と共に、門の警備ホログラムが解除されていく。空と遼子は、悲しみが包む豪邸に足を踏み入れた。
樫木邸リビング。
リビングに案内され、ソファーに腰掛ける、空と遼子。
深く濃い隈は、悲しみを超え、行き場のない感情に憔悴しきっている様を象徴していた。それでも、高級官僚の妻として、髪を整え、清楚な出立で来客を迎えるところは流石であった。
「私は公安庁第四課の井川空と申します。隣にいるのは、同じく四課の森原遼子です。お忙しいところ急に押しかけすみません」
顔色を窺うように、自己紹介を済ませた空は、瞬時に妻の心を読んで口を開いた。
「素敵なご自宅ですね。私がいては緊張もされるでしょうから、席を外しますね。ご主人の書斎を拝見しても宜しいでしょうか」
夫を亡くした直後、公安とはいえ、憔悴しきっている妻に男が質問攻めをするのは、あまりにも不躾と判断した、空の配慮だった。空が席を外す理由は他にもある。自己紹介の際、妻の肩が微かに動いたのを見逃さなかった。
ノンバーバルコミュニケーション。
人は無意識のうちに五感を使った信号を発する。心理学者、ポール・エクマンとウォレス・フリーセンは、5つにカテゴライズした。その中でも『AFFECT DISPPLAYS=感情表出動作』は、顔の表情や情緒的な反応を示すものとして提唱されている。
席を外すと言った矢先、それまでの怯えにも似た、強ばりが和らいだ。その変化が男に対する"抵抗感"や"怯え"からの開放を意味しているのであれば、女性同士、一対一で話すほうがいい、そう判断した。
「刑事さんがお求めのものがあるとは思いませんが、どうぞご自由に…。2階の奥が主人の書斎です」
か細く、今にも事切れそうな弱さだった。
空はらニッコリ微笑むと席を立った。部屋を出る刹那の間に、遼子にアイコンタクトを送った。遼子は、視線で空を見送り、扉が閉まる音を聞いてから口を開いた。
「実は私も男性恐怖症なんです。男の人で大丈夫なのは、父とここに一緒に来た空だけ。だからあなたの想いも含め全てを聞かせてほしいんです」
遼子が発した、"男性恐怖症"というワードに、思わず目を丸くし、顔を上げた妻。その表情を見て、優しい眼差しで妻を見返した。
妻が男性恐怖症というのは、事前に確認した情報ではなく、空が席を立つまでの僅かなやり取りで、見抜いたことだった。遼子に送ったアイコンタクトも、デバイスに送信した、その情報を見せるための合図だった。
「夫とは父の紹介で会いました…」
夫の死後、妻は現実と自身の感情に折り合いを付けることができずにいたが、遼子と話し始めてからは不思議と背負っていた感情が薄れるように感じていた。やはり、遼子が発した、"男性恐怖症"というワードが同類としての共感を得ていた。
「中学生の頃、知らない人に乱暴されたことが原因で男性恐怖症に陥り、それからというもの、男性と話すことさえできない状況が続きました。結婚なんて夢の話だと思っていたのですが、25を過ぎた頃、父が縁談の話を持ち帰ってきました。父は政治家です。昔から政治家として利用できる物は何でも利用する父でしたので、この縁談でさえも政治に利用されるのは明確でした。私の人生、父の政治の道具じゃない、そう言って私は拒否しました。それこそ親子の縁を切るつもりで。結婚ともなれば、夫となる人に尽くすだけではなく、子作りもしなくてはいけません。ですが、私には汚れきった過去と身体があり、私の全てが男性を拒んでいました…」
遼子と2人になってからの妻は、これまでの苦しさや辛さを吐き出すかのように語り出していた。その様は、指で無理矢理抑えていた水道口から、指を退かした際に水が勢いよく真っ直ぐ落ちるかのようであった。
樫木邸書斎。
樫木が残した手掛かりを探す、空。妻が男性恐怖症となった経緯は、デバイスの骨伝導技術で聞こえてくる。遼子がかつて男性恐怖症になった原因を誰よりも知っている、空。やりきれない気持ちを紛らわすかのように、机の引き出しを探した。
「これは…」
樫木邸リビング。
「え?」
妻は、遼子の異変に気付いた。自分の話をこれまで真剣に聞いてくれる人物は、今は亡き夫の樫木だけだった。
"運が悪かった"。"お前の身体が男を誘ったから悪いんだ"。被害者であるはずの妻に対する周囲の視線は冷ややかだった。それは実の親でさえ、周囲と同じだった。誰もが当事者になる事を恐れたからだ。
しかし、樫木は妻の苦難を自分の事のように受け止め、涙を流し、一緒に怒り、悔しさを噛み締めてくれた。そして、今、初対面の遼子もまた、涙を流して話を聞いてくれている。
「ごめんなさい。全くあなたと同じ状況という訳では無いのだけれど、私も思い出してしまって。話を続けてください」
ハンカチを取り出し、涙を拭う、遼子。その濡れたハンカチを見て小さく溜息を吐いた。
「はい…ある時、手紙が届きました。この時代に直筆の。差出人は夫でした。そこには、この結婚に対する想い、妹さんを亡くされた過去、そして父から聞いた私の過去についての想いが記されていました。その手紙を読んで、心が揺れました。私のことを知っても尚、想いを率直に伝えてくれる人は初めてだったから。それからも3日に一度の頻度で手紙が届きました。その日の出来事、今の社会に思うこと、どんな家庭を気づきたいかなど、内容はバラバラでしたが、いつしか夫に興味を持っている自分に気付きました。それからは、手紙が届くのが楽しみで、この人と結婚したら自分も変われるんじゃ…なんて考えるようになっていました。だからある時、自分から父に話し掛けた事なんてなかった私から、"一度会ってみたい"と伝えたんです。会ってみても手紙のまんまでした。私を一番に考え、無理は言わず、選択肢を与えてくれる。何度も何度も会っているうちに、夫の存在は特別になっていました。そして私は夫と結婚したんです」
アルバムを見ながら話すかのように、樫木との思い出を口にする妻。夫への溢れる想いが、瞳に涙を溜めた。
夫の死を知らされて以降、愛する夫の尊厳を守るため、気丈に振る舞う努力をしてきた。だが、心は限界だった。夫を喪った悲しみは堰を切って溢れ出ようとする。そんな最中に現れたのが、同じく男性恐怖症の遼子だった。誰にも話せなかった想いをついに口に出してしまったのだ。自ら発したことで、最愛にして、最大の理解者である、樫木怜央が故人となった事実を受け止めてしまった。
涙は塞き止められず、静かに流れた。
遼子は静かに立ち上がり、妻の隣に座ると肩を撫でた。
「ごめんなさい。少しだけ。少しだけですから」
我慢していた声が漏れ出し、咽び泣いた。
───樫木邸書斎。
リビングの様子を聞き、妻の想いが空の心に流れ込む。そして、かつて無力で、大切な人が傷付く様子をただ見ているだけしかできなかった自分を思い出す。
日があまり入らず、暗い書斎に一人佇んでいた。
その手には封切りされた封筒があった。
───樫木邸リビング。
妻は一頻り泣くと、落ち着きを取り戻した。そして、深呼吸の後、夫の異変について口を開いた。
「結婚してから2ヶ月が経った頃だったと思います。自宅に手紙が届いたんです。差出人の書かれていない手紙でした。たまたま家にいた夫にそれを渡しました。最初は見覚えが無いと言っていましたが、封を開けてから夫の表情が明らかに変わったのを覚えています。あんなに怖い顔を見たのは初めてでした。私は『大丈夫?』と聞きましたが、その時は何でもないよって笑顔で手紙を持って書斎に上がりました。その日から夫の行動に変わった様子はありません。ですが、何か隠しているような、私に心配を掛けないよう、1人で背負っているような感じがしました。何となくですが…。もしかしたら、あの手紙が原因で夫は…何かに巻き込まれたんでしょうか? 」
必死な顔で訊ねる妻を、遼子は優しく落ち着かせた。
「お部屋を見せてくださりありがとうございました」
妻がパニックに陥る寸前で、空が割り込んだ。
「奥さん、今日は話してくださりありがとうございます。ご主人の件を調べる鍵になったと思います。もし、その他何か思い出したり、気がかりなことがあればいつでも連絡くださいね」
遼子と話をした妻は、多少やつれ感が薄れているようだった。
遼子は、妻が少しでも悲しみから抜け出し、一歩踏めるようになることを祈り、樫木邸を後にした。
世田谷区893-天元会。
指定暴力団・天元会の事務所は混乱していた。それもそのはずである。創始者にして、会長の片岡祐治を始め、側近幹部達が突如として執行、逮捕されたのだから。片岡によって、実力者、有力者が束ねられていたが、片岡不在の緊急事態に各派閥の対立構図が出来上がりつつあった。
「お集まりの皆様方には、現状、由々しき事態であること承知の上だと思うが、先日の公安急襲の一件以来、組の風紀が乱れております」
円卓上で、50代くらいの一人の男が口を開いた。オールバックで、目つきは鋭い。如何にもな風貌だった。
「依然、親父の生死、所在は不明。組が始まって以来の事態に動揺される方も多いでしょう。そこで、事態を収束し、再度組を一枚岩にする為、この場で長を決めたい」
片岡の生死を問わず、新たな組長の選出を宣言したことに、幹部会はざわついた。
「少し待ってください。小関さん。長の生死も確認せず、新たな長を決めるのは性急過ぎませんか? それよりはまず、この幹部会で組の方針を決め、徹底した管理のもと、事の究明や公安への対処を行うべきでしょう。それとも、この場でご自身を組長として発足に踏み切りたい理由でもありますか?」
40代の若い幹部が、ざわつきの中反論した。小関は、公安の急襲により命を落とした最側近、佐藤至率いる佐藤派のナンバーツーだっただけに、事件前から組を自派閥で支配する策略を巡らせていた。そしてこの機に乗じてという腹積もりが今の発言で見え隠れしていた。佐藤派といえば、栗原派と並ぶ、二大派閥と言われ、組を決定を左右する発言力がある。もし、新たな組長が小関となれば、間違いなく一派閥による一強状態となることは免れない。そして、栗原派は弾圧される。その企みは何としても阻止せねばならなかった。
「まるで私が自らを組長とするために、組の意思決定そのものを支配しようと企んでいるように聞こえるがね?馬場副本部長」
先程までざわついていた空気が一変、両名の睨み合いにより冷戦状態のように張詰めた。
「ぶっちゃけ、そう言ってるんでしょ」
小関の発言に対し、馬場が再反論するよりも早く、高い声がその場を飲み込んだ。
それは誰もが予期していなかった。何故なら、その声は、幹部会の誰一人として発することができない声、女性の声だったからだ。
一同が驚きと同時に声の方を向く。
そこには小柄で、暴力団事務所には似つかわしく無い可愛らしい女性がそこにいた。
深月だった。
「ハロ〜」
暴力団幹部が呆気に取られてる中、にこやかに言うと、瞬時にエンフォーサーを小関に向けると、右肩を射抜いた。射抜かれた小関の右肩は弾け、肩から下が宙を飛ぶ。
幹部達は慌てて机の下から拳銃を抜く。しかし、全員の銃口が深月に向くより早く、幹部1人の頭が風船のように破裂した。幹部達は、目を剥いた。誰もが深月に集中し、当の深月は微動だにしていなかったからだ。そもそも、予想外の角度から攻撃されている。
馬場が辺りを見渡した時、一筋の硝煙が揺らめいでいるのに気付いた。視線を煙から上に向けると、もう1人の部外者がそこに立っていた。
「全員、頭の後ろで両手を組み、その場に伏せろ」
梓の怒号が空間に響き渡る。しかし、伏せる間も無く、そこにいた幹部のほとんどが深月の特殊部隊顔負けの動きによって制圧されていた。
「馬鹿な。表には何人もいたはず。どうやってここに。しかも2人で…」
小関は激痛と流血で、冷や汗を流し苦しみながら何とか言葉を口にする。
「もちろん、全員執行したよ。それにあなた達程度、私一人でも十分なくらい」
嘲笑うかのように言い放ち、警務ドローンにあとの拘束を任せる、深月。
警務ドローンが、小関の右肩を瞬間冷凍し、止血するのを横目に、幹部達を一箇所に集め、エンフォーサーを向け尋問する、梓。
「私達が何者か分かるわよね? あなた達に聞きたいことがあって来たの。先日、あなた達の組長が密入国者と取引をしたわ。どうやって密入国者を手引したのかを教えてもらえないかしら」
「こちらの質問に答えたら教えよう」
他の幹部達と同様に、両腕を後ろに手錠をかけられ跪く、馬場。暴力団の世界に於いても、情報は時に命より重し。情報を簡単に口にするという馬場に幹部達は驚きを隠せなかった。
暴力団事務所で、暴力団幹部が2人の女性に人質のように尋問される光景は、異様と言わざるを得ない。
「内容によるわね」
エンフォーサーを馬場に向け変え、一言放つ、梓。
「会長は無事なのか?」
向けられるエンフォーサーに臆することなく、安否を確認した、馬場。自分の派閥のトップ、栗原達裕ではなく、片岡の安否をまず確認したのは、天元会の象徴だからである。片岡祐治の存在は、日進月歩で変わりゆく情勢の中、社会においても存在感が失われることなく、畏れを率いて有り続けた組織概念そのものだった。
「片岡祐治は生きてるわ。少なくとも無傷じゃないし、話してもらうこともたくさんあるから、これからの保証はしないけど」
梓はサラッと答えた。
「そうか。十分だ」
馬場もサラッと答える。必死に隠そうとしていたが、顔の強ばりが消え、安堵していた。
「識別スキャナー*³の位置も対策も俺達は理解している。だから、対スキャニング装置*⁴の支給し、領海侵入、上陸から交渉場所へのルートを確保した。公安の目も鼻も完全につぶしてたはずなのに、どういう訳か、公安には抑えられたがな」
「なるほど。確かに対スキャニング装置は押収したわね。何故、あなた達は外国人テロリストとの取引をしたの?」
「この社会で天元会が生き残るためだ。この社会は間違っている。国民を家畜の如く、監視し、都合が悪くなれば社会から消す。集合的社会の最大幸福? 唯一、世界暴動の悲劇を免れた国? ふざけるな。公安・国家は、都合よく管理する為に、耳障りの良い言葉だけを並べて、洗脳しているだけだ。暴動が起ころうと、内戦が起ころうと、人が人らしく、生きる社会を実現するためにはこの社会を一度壊す必要がある。だから、テロリストと武器、麻薬の交渉に踏み切ったし、テロリストを国内に引き入れた。平和という嘘だらけの鏡を壊し、俺達が───」
これまで冷静だった、馬場の目が血走るかの如く、狂気の気迫だった。
しかしその狂気すらも捻り潰すかのように、梓は話を遮った。
「そんなことどうでもいいわ。あなた達の不満など、どうでもいいのよ。勝手に疎外感を抱いて、さも国民全員の代弁者であるかのように、社会の奴隷だと豪語しているだけに過ぎないわ。くだらないわね。そんなに不満なら法の外に出るのではなく、法の中から変えてみなさいよ」
その眼には、暴力団幹部など映っていなかった。興味も無ければ、議論もしない。梓は完全に否定し、まるで向ける価値すらないと言わんばかりにエンフォーサーの銃口を馬場から外した。
一瞬、沈黙の空気が支配した。
「最後に、外国人テロリストを利用する考えに至った経緯を話しなさい」
この場の全てを支配したのは梓だった。完膚なきまでに否定され、幹部達は遇の音すら出なかった。
「ある日、若い者が殺された」
口を開いたのは小関だった。
「殺された暴力団組員は、一切の服を纏わないで、裸のままで門の前に寝そべっていた。事務所に足を向けてな。外傷は無かったが、口に手紙が咥えられとった。暴力団組員は、落とし前付けるだのと盛り上がったが、親父と側近は中身を見て驚いた。中にはタロットカードと外国人傭兵集団のリスト、世界の武器、薬の流れ、日本で密入国した傭兵と密輸した武器を使ったテロの効果、公安の動きがシュミレーションされたデータが入っていた。国家転覆すら可能なレベルの情報だ。今、天元会は最大勢力になった。だから、存在意義を懸け、主権を握るために誰だか知らない奴の口に乗ったんだ」
痛みに耐えながらも、絞り出すように答える様は、天元会の壊滅を幹部全員に印象付けるものだった。
「おうおう、随分派手にやりやがってよぉ。お姫様」
嫌味を全面に出し、ズカズカと入って来たのは、暴力団事務所に似つかわしい、ヤクザのような男だった。
「あら、木嶋 一課長。せっかく抑えやすいようにしたのに遅かったじゃないですか」
梓も嫌味を全面に出すような口調で言った。
まるで龍と虎の睨み合いである。
続けて、第一課捜査官達が次々の入る。
「井川は?」
宮下直也が一度辺りを見渡して訊ねた。
「空は別動中なんだよね〜」
まるでお留守番を言われた子どものように、寂しそうな口調で答える、深月。
そんな深月の肩をトンと叩く梓。そして、
「第四課の仕事は終わったわ。あとはお好きなように」
尻目にそう言うと、梓と深月はその場を後にした。
都内某所 マンション一室。
「そろそろ次の仕掛けを動かそうか」
ソファーと机だけの生活感の無い一室で、一人の男が呟く。
*¹ Ul-Di:Ultimate Dimensionの略。Wi-Fiに継ぐ、新規格無線LAN方式として、2086年から普及している。Wi-Fiの7倍の速度と容量を有し、5倍の秘匿性暗号化に優れ、ホログラムが主流となった現在には欠かせない通信技術。
*² ホロキーボード:空間上にホログラムで表示されたPCのキーボード。ハードとして形あるPCは無く、全てデバイスから空間に立ち上がったホログラムで操作する。
*³ 識別スキャナー:常駐・常時可動型の防犯デバイスで街の至るところに設置。行動だけでなく、脳波、体温、心拍数などの生体反応を検知、即時演算を行い、公安庁データバンクにこ個人情報として記録される。
*⁴ 対スキャニング装置:識別スキャナーを妨害する。光学迷彩と特殊電波を組み合わせ、応用したもので、使用は違法。