FILE.33 奈落の入口
千葉区532-住宅街。
『こちらは、公安庁です。このエリアは現在、国家安全法17条に基づく、特別規制の為、立入りが制限されています。案内に沿って迂回して下さい。なお、住民の立入りも禁止されています。規制解除まで、公安庁警務ドローンの指示に従って下さい。こちらは───』
真っ赤な警光灯が、住民のいない住宅街を照らしている。ホログラムの規制線が一帯に張り巡らされ、禍々しい空気が満ちている。
「やっぱりお前さん達に任せる事になっちまったなぁ。すまねぇ」
安浦長八は、バトンタッチをするかのように、空の肩をポンと叩いた。
奥では一課班長から引継ぎを受けている、梓と陽菜が警光灯に照らされていた。
「いえ、仕事ですから。それより、発見者の男子生徒達は?」
空は辺りを小さく見渡す。
「集中ケア中だ。あんなもん見ちまったんだ。メンタル汚染は免れんよ。それに、内1人は害者の幼馴染だそうだ。最悪、山中リップハイマン症候群の発症も考えられるんだと。
あの歳の者は、良い事も悪い事もすぐに吸収する。それが思春期ってもんなんだろうが、こればっかりは、一生癒えない傷となって残り続けると思うとやり切れんよ」
安浦は、切ない表情で溜息を吐く。
公安が唯一できない事。それは、被害者の心の傷を消す事だ。被害者にどれだけ寄り添い、どれだけケアをしようとも、一度刻まれた傷は消える事なく残り続ける。刑事になって36年もの間、あくまでも対処療法にしかならない刑事の職務に、牴牾を持ち続けてきた、安浦。今回も変わらぬ結果に落胆を隠せずにいた。
「えぇ…。一課の皆さんは大丈夫ですか?」
空は、安浦の表情から心情を察すると話を切り替えた。
「ん? あぁ。俺達も刑事だ。そういうのには慣れてる…と言いたいところだが、俺以外の者は相当堪えてるだろうな。ここまで全く進展が無かったにも関わらず、動き出した途端にいきなりアレだ。さっき、全員のメンタルケア命令が局長から出されたよ」
苦笑いする安浦の奥には、生々しい姿となった被害者の遺体があった。
「井川、お前さんに言う事でも無いが、無理はするなよ? この歳になるとな、若くて有望な者が潰れたり、死んだりするのを見聞きするのはキツい」
安浦は、再び空の肩をポンと叩くとその場を後にした。
"若い者の死"。きっと"彼ら"の事を言っているのであろう。安浦の痛嘆、空が推し量るには余り有るものであった。
空は、安浦の背中が見えなくなるまで見送ると、切替えるようにフッと強めに息を吐き、180度身体を回転させた。
「こりゃ想像以上に手が込んでるな」
遺体の左半身をしゃがみ腰で覗き込む、雫。
「テカテカする薬品を使ってるからってことー?」
深月の問に、雫は首を横に振る。
遅れてやって来た空は、遺体を前にしゃがみ込み、手を合わせた。
「筋繊維に沿って皮が剥ぎ取られてるんだよ」
遼子が口を挟んだ。
「基本的に、刃物で皮膚を剥ぐ時に筋繊維の方向を無視すると、筋繊維の溝に皮膚の一部が残ったまま剥がれてしまう。イメージしやすいのは、シールを無理やり剥がした時に残る、シール跡かな。でも、この遺体には皮膚片が全く無い。
つまり、この遺体の左半身は、皮膚を全ての筋繊維に沿って綺麗に剥ぎ取っているという事になるわ」
遼子は、両手を刃物と皮膚に見立て、実演してみせる。内容は、深月でも分かるような丁寧な説明だった。
それでも、深月が理解できているかは微妙なところではあるが、雫は絶賛する。
「流石、ナイフ戦術のプロだな」
「基本、筋繊維は、1つの部位に一方向に伸びているが、部位が違えば、筋繊維の方向も当然違ってくる。例えば、片腕には24の筋肉があるから、筋繊維の方向は24通り。まず、その知識が無いと、この犯行は難しいだろう。
それと、発見当時の害者は生きていたと、第一発見者達が証言している。となると、生きたまま解剖したって事になるが、相手は抵抗するなり、恐怖で震えるなり動くだろう。そんな相手にここまで綺麗な皮膚の剥ぎ取りを行えるなんて、相当な医療技術も持っているはずだ。その道で探っても良いんじゃないか?」
雫は、厚生省医療庁に登録済みの医療従事者情報をホロ展開した。
医療従事者情報には、今現在において医療現場に身を置いている者だけではなく、現場からは離れているが、医療庁が医療行為を許可し、免許証を交付した者も登録されている。そのリストには、雫も名を連ねていた。
「医療関係者って事ですね。でも、医療関係者がどうやって行方不明者23名を匿いながら犯行を繰り返しているんでしょう」
リストを覗き込むように見る愛華は、疑問点をボソッと呟く。
「たしかに。医療従事者は、医療と見做される行為前には必ず、親指付け根に埋め込まれているマイクロチップで、認証を行う必要があるわよね。
認証と言っても実質、デバイスに手を翳すだけの仕草で、医療従事者と患者の情報がリアルタイムで医療庁のデータバンクに蓄積される仕組みよ。それと、非公表だから一部の人間しか知らないけれど、マイクロチップは15分に一度、装着者の生体をスキャニングしているわ。仮に、認証を行わない医療行為を強行すれば、非認証情報が自動送信されて、確実に御用のはず。
もし本当に医療従事者による犯行なのだとしたら、未だ22人の行方が分からないという事の説明がつかないわ」
遼子の指摘に、状況は茫漠する。
遼子、空、愛華、雫、深月の5人は、打開策を見出せずにいたが、沈黙は突如として破れた。
「前提条件が違うのか…? 」
空が呟く。
他4人は、意表を突かれたように、空に目を奪われる。
「この事件、固定観念を取っ払うべきかもしれない。誰が犯人で、どうして被害者が見つからないのか、っていうね。
そもそも論、今回の遺体が発見され無ければ、"医療従事者による犯行の可能性" に至らなかった。犯人にとっても、公安の捜査が進展しないまま、未解決事件化する方が都合は良いはず。
でも、"敢えて"発見させた。なぜなら、"事実"から目を逸らさせ、"真実"という都合の良い結果にミスリードを誘いたかったから。
川東の自首にしたってそうだ…。協力者を逮捕させて、足が着く状況を作る意味が不明過ぎる。
今の状況から、予想した結果全てがミスリードなのだとしたら、視点を変えなきゃ解決しない気がする」
川東を取り調べた時から、"印象操作されているような違和感"を抱いていた、空。そして、その違和となる要素を廃した時、浮び上がる"ある人物"こそが、今回の黒幕であることに薄々と感じていた。
「私も空に賛成よ」
引継ぎを終え合流する、梓と陽菜。
「だけど、どの視点から切り込むかが重要よ」
梓は、空の考えを確かめるように言った。
「うん。これまで焦点が当たらなかった事件の盲点。被害者だ」
───翌日。
千葉区某高校 応接室。
「そうですか。つまり、学校側も失踪については認識が無かったということですね」
陽菜は聞き返す。その視線の先には、校長と学年主任、担任の3人が座っている。
「えぇ、親御さんからも病欠だと聞いておりましたので…」
目を合わせない校長の額には、大量の汗が付いていた。
「センセーでもさー、その5ヶ月前にも松長優果ちゃんって子が消えてるよね。しかも、今回見つかった土田真央ちゃんと友達だったみたいじゃん。同じ学校で、友達同士の2人が消えるって、フツーに怪しくね?」
深月は、ソファーの背凭れに、まるでバランスボールに乗るかのように座っていた。陽菜とは対象的な行儀の悪さだ。
「そ、それは…」
校長は口を濁らせた。いつの時代でも学校というものは、不祥事やリスクへの対応が甘い。事態が起きてからも学校という施設としての適切なリカバー力が無いのだ。
「今、うちの捜査官が土田真央さん、松長優果さんの自宅へ訪問中です。土田真央さんに関しては、残念な結果をお知らせする事になりますが、学校側との認識があっていればいいですね」
陽菜は微笑む。その直後、陽菜と深月のデバイスからコールが鳴った。
「陽菜、今大丈夫? 」
遼子からの応答だった。奥には、母親を慰める愛華も映っている。
「うん! それで、どうだった?」
やり取りする陽菜を前に、顔色が悪くなる教員3人。陽菜は、指向性音声からスピーカーに切り替えた。内容を敢えて、目の前に座る3人の教員にも聞かせるために。
「母親は泣き崩れているわ。行方不明だった娘が変わり果てた姿で見つかったのだから当然よね。で、肝心の失踪後の動きなんだけど、帰りの遅い土田真央さんを心配して、学校に問い合わせたそうよ。学校側からは、『公安に捜索願いを出す』という回答だったそうなの。でも、翌朝になっても公安から連絡が無かったのを不審に思って、母親が公安に問い合わせたら、学校側からの捜索願いは受理していないって言われたそうなの。それと、最初、学校側に問合せた時、『公安庁の捜索に支障が出る可能性があるから、保護者からの捜索願いは出さないで欲しい』って言われたらしいの。今にして、すぐに公安へ連絡しなかった事を後悔しているわ」
遼子からの報告を、3人の教員はどういう思いで聞いているのだろう。
「了解よ。私達もここでの聴取を終えたら、合流するわ」
陽菜はそう言うと、通信を切った。冷ややかな視線を教員達に向けながら。
「おっけー」
深月は通信を切ると、ニタニタ顔で教員達を見た。
「結構やんちゃな事してるじゃん」
そう言うと、ソファーの背凭れから飛び降りると、ゆっくりと歩き出す、深月。
「2人目の行方不明者、松長優果ちゃん。クラス内で相当虐められてたそうじゃん。しかも、虐めてたのはクラスメイトと担任。クラス一丸となって、1人を虐めてたわけだ。クラスの絆は最強ですって? ウケるんだけどwww」
ケラケラと笑う深月。だが、その目に映るのは、軽蔑だった。
「家庭にも問題あって、父子家庭の優果ちゃん、父親から毎日のように虐待を受けてたみたい。手首切って自殺未遂までしてんじゃん。ホントなら、学校が守ってあげなきゃなんないのにね。
でも、1人だけ心の拠り所があった。それが、土田真央ちゃん。クラスは違ったけど、屋上から飛び降りようとしたところをたまたま見つけて救った。それからというもの、真央ちゃんは、優果ちゃんにとっての心の支えとなった。でも、そういう正義感って、虐めてる側からすると厄介よね。しかも、学校側にも改善の意見を出すもんだから、学校としても目の上にたん瘤。もしかして、文科省への告発でも持ち出された?
だから、今度は学校と生徒が一致団結して、土田真央ちゃんを虐めた」
校長の横に着くと、歩みを止め、哀れにも保身を考えているのが見え見えな教員達を見下す、深月。
「そ、そんな事は…」
冷や汗が止まらない、校長。
「だったら、校内全員に識別スキャンを行ってもいいんだよ?」
校長の胸倉を引っ張る、深月。
「深月!」
陽菜は、深月を静かに宥めた。深呼吸をして、突き放すように校長の胸倉から手を引く、深月。
「優果ちゃんは、真央ちゃんが虐めの対象になった事を知ると、恩人への虐めを何とかしたくて、いろいろ考えただろうね。そして、ある日突然、姿を消した」
落ち着きを取り戻した深月。心無しか寂しさのある声だった。
「深月が受けたコールも、仲間の捜査官が聞き込みをした結果報告です。最初に聞き込みをした父親からは有力な情報は得られなかったようですが、もう1ヶ所の文科省で今の情報を得られたようです。学校は信用できない。そう思い、土田真央さんは、国の機関に直談判していた。私は彼女の行動を賞賛すると共に、あなた達には幻滅せざる得ない。残念です」
陽菜はスッと立つと、深月にアイコンタクトを送る。
そのまま、2人は部屋を出た。
教員3人は顔を上げられずに、その空間に取り残される。生徒2人の失踪、そして1人の死亡という結果を招く一因は、間違いなく学校側にある。それを通知するかのように、校長のデバイスには文科省からの家宅捜索礼状が届いていた。
千葉区某高校 正門。
陽菜と深月は目を疑う。正門の外には多くのマスコミが押し寄せていたからだ。
「どうしてマスコミがこんなに。報道規制はどうなったの?」
陽菜が驚くのには無理もない。土田真央が遺体となって発見された事がきっかけとなり、この学校に来ていた2人。公安ですらやっと辿り着いたこの学校に、情報規制によって遺体発見どころか、行方不明の情報すら知らないはずのマスコミがいたのだ。
状況が飲み込めない中、梓からコールが鳴る。
「陽菜、深月。裏手にルートを確保したわ。その場から離脱して」
「了解よ。だけど、どうして…」
「分からないわ。でも、空と雫さんが向かった文科省、遼子と愛華が向かった土田真央さん宅、そして公安庁舎にもマスコミが押し掛けているわ。とりあえず全員、現地離脱して、家に集合よ」
梓の通信はプツリと切れる。
指示通り、マスコミにバレないよう裏手に回ると、自動操縦車が止まっていた。
2人は乗り込み、その場を後にした。
某マンション。
初めて入る愛華は息を飲む。梓、空、遼子、陽菜、深月の5人が一緒に暮していることは聞いていたが、いざその空間に足を踏み入れると、緊張する。
まるまるワンフロアが居住スペースになっていたとは驚きだ。もしかすると、四課オフィスより広いんじゃないかとさえ思う、愛華。
半円の螺旋階段の上には、5つの部屋があり、それぞれの個別スペースになっている。
梓、空、陽菜、深月、そして雫は既にソファーに座ってニュースを観ていた。
「私達が一番最後みたいだな」
遼子は呟くと、コーヒーを取りにリビングへと向かった。
「うちへようこそ。オフィスだと思ってくつろぎなさい」
梓は手招きする。緊張気味に「はい」と返事すると、ソファーに腰掛けた。
ニュースでは、大々的に事件について取り上げられていた。行方不明者22名の顔写真や、いつ、どこから撮影したのかが分からない、土田真央の遺体が、モザイク処理されてはいるものの映し出されていた。
当事者でも無ければ、専門家でも無いコメンテーターが独自の意見を述べ合っている事に、愛華を始め、四課全員が違和感と抵抗感を覚えていた。
「ということで、どこからか情報はリークされ、真偽に拘わらず拡散されてしまったわ」
溜息を吐く、梓。
「被害者の権利は無しかよ」
被害者の情報が公開されている事に、雫は怒りを覚えていた。
「なってしまった事は致し方無いよ。マスコミの目を躱しながら捜査するのは骨が折れるけれど、とにかく状況を進めなきゃだ」
手を叩き、空気を切替える、空。
「ひーちゃん、聞き込み結果の共通点出せる?」
空の質問に二つ返事で情報を出す、陽菜。
「やっぱり、失踪した被害者23名は共通して、虐めや家庭内暴力、引篭もり、自殺未遂など、自己を中心とした生活環境で何かしらの問題を抱えていたんだ」
空は、黒幕に繋がる自身の立てた仮説が、この情報から確証に変わった事に、手放しで喜べないでいた。
「陽菜、23名の失踪日から3ヶ月前まで遡ったアクセスログを出して」
腕と足を組みながら指示する、梓。
空間にホロ表示された、膨大な量のアクセスログを目で追う、梓だったが何かを見つけ確信したのか、目の動きをピタッと止めると口を開く。
「その中のウェブプロトコルで、SSL*¹を使っていない情報をピック。さらに、特定のユーザーのみに開示され、利用後にDelete Programsがバッチ処理*²されている、ダークウェブをピックして」
梓の指示通りに、次々とホロ情報が消えては整理されていく。
そして、残った1つのアクセス先。跡形もなくデリートされていた情報が、陽菜の手により復元されていく。
「"貴方の居場所"…か」
復元されたページのトップに記載された、タイトル。
空は、無意識にそのタイトルを口にすると、ホログラムで表示されたページの"入口"を指でタップした。すると画面が切り替わり専用ページに遷移。真っ白な背景に、短い言葉とURLが書かれている。
『このサイトは、社会から孤立し、虐げられて来た貴方だけに用意した、貴方が居るべき場所へと案内するサイトです。もう苦しむ必要は無いのです。』
「まるで宗教のような文言ね」
溜息混じりに、感想を口にする、遼子。今回は全員が女子学生だ。遼子にとっての学生時代には、負の思い出がある。かつての自分がこの言葉を目にしたらと思うと、言い知れぬ不安に支配されるような気がしたのだ。
「そうですね。でも、否定され続けてきた人にとって、肯定の言葉って救いになるんだと思います。だから彼女達も…」
愛華は呟く。
「たしかに、耳障りの良い言葉ってのは、良くも悪くも人を盲目にするからな。
カルト教や詐欺ビジネス、テロ組織に嵌まる一般人が後を絶えないのも、こういう背景が起因している事が多い。
本来、全ての言動は自己責任だ。他人の肯定を得たければ、行動で勝ち得るしか無い。だけど、越えられない壁が立ちはだかった時、人は言い訳として"ソコ"に傾倒してしまう。このサイトもそういうのを利用しているのかもしれないな。空は詳しいだろ?」
雫の意見は厳しくも正当だ。しかし、誰しもが強い訳では無い。そういう人達が、人生から転落する前に何とかならないものか、と思い俯く、愛華。
「うん。マズローの欲求のピラミッド*³。その第三階層Social needs / Love and belongingだ。これは、社会に必要とされ、自らも果たせる社会的役割があるという『社会的欲求』と、情緒的な人間関係や、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという『愛の欲求』からなるカテゴリーだよ。このカテゴリーが満たされないと、人は社会不適応や重度の病理、孤独感や社会的不安、鬱状態に陥るという。彼女等も現状の脱却を願い、このサイトに行着いたのかもしれない」
空は、ページに記載されたURLを指でタップした。
「場所のようね。ここに被害者達を誘き出し、待機していた川東に拉致させたと言う事かしら」
マップには星印がマークされていた。梓は立上り、ホロ表示されているマップの前に立った。
「待って。これは誰のアクセス記録?」
梓は何かに気付いたかのように、陽菜に確認した。
「発見された土田真央さんだけど…」
「他の被害者達も出してもらえる?」
「待ってて」
陽菜がカタカタと指を動かすと、破損データがみるみる復元されては表示されていく。
マップは全て別の場所を示し、共通点が無いように思えたが、超直感の冴える深月は違和に気付く。
「ねぇ。マップじゃ無くて、そのマップの送信元ってどーなの?」
「そうか…。流石、深月!」
陽菜は前のめりになり、ホロキーボードを打つ。その様子を見て、深月はニシシと笑っていた。
ほんの1〜2分程度だっただろうか。静まり返る室内には、ホロキーボードを指で叩く音が響く。
そして、新たに展開されたマップに蜂マークがマッピングされると、周辺マップへと急拡大する。
「ここに黒幕と被害者がいる」
空の目に映るマップには、廃校となった小学校が表示されていた。
*¹ SSL:WebサーバとWebブラウザとの通信においてやりとりされるデータの暗号化を実現する技術。通信の途中で、情報が盗み見られることを防いだり、電子証明書により通信相手の本人性を証明したりできる。
*² バッチ処理:あらかじめ登録した一連の処理を自動的に実行する処理方式。
*³ マズローの欲求のピラミッド:心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したもの。