エピローグ
「明人!そっちいったわよ!」
「邪魔をするなあ!」
黒橋の声が近づいてきた。前方には、エアガンを乱射しまくっている男、クラスメイトの宝田の分身が走っている。
「まかせろ!」
「失せろ! これでもくらえ!」
エアガンの銃口と視線が合った。ちょっとまてこれ、なんかレーザーポインターが光っているんだが、当たったらかなりいたいやつじゃないか?
「ちょちょ、ちょっとまて!」
説得を試みようとするが、時すでに遅し。すでに時計の秒針は30°傾いている。オレンジ色のBB弾が、僕の方へ直線運動を開始している。ますい、顔の当たったらけがする。もし目に入ったら。そうだ、目をつぶろう。
黒橋の「なにやっての!」を無視して渾身のガードをかます。
「痛っ!くない……?」
「大丈夫です。すべて受け止めました」
目を開けると目の前にシロが立っていた。宝田モドキが続けざまに発砲するが、シロはそれをまるで漫画のワンシーンのようにすべて受け止めた。
「な、なんなんだよお前らぁ!」
慌てふためいたニセ宝田モドキは反対方向へ逃げ出そうとしたが、生憎、そっちには黒橋が立っている。
「いい加減諦めろっての!」
黒橋は男の腕に蹴りをかまし、そこから背負い投げをした。いくら柔道を習いはじめたからって、人間離れしてきているな、こいつも。
「ぐはっ」
男は地べたに叩きつけられ悶絶している。急いで宝田ではないやつの方へ駆け寄る。
「シロ、あれを」
シロは懐から手錠を取り出し、僕に手渡した。
「しばらく施設で頭を冷やしてもらうぞ。運が良ければすぐ消失できる」
本物を探して解決できればな。
「あとは本部に連絡してこいつを収容して、それから本物を探さなくちゃ、もう! 骨が折れるわ」
「ああ」
このたび、俺達とほかの区画のメンバーの要請で、危険種のドッペルゲンガーを施設に収容することになった。聞いたところによると、他所のやつらも僕らと同じような目に遭っていたらしい。“あいつ”め、そこまでしていたのか。
それに伴い、組織の中である法案ができた。
それは、分身の命を尊重する。というものだった。
「明人―。いつものファミレスで休憩するわよ。早くしなさい!」
「そうです!パンケーキが待ってます!」
シロは楽しそうに笑顔を見せる。
「あんたそればっか。ホント甘いもの好きなんだから」
「そんなこといって、奈々子だって昨日家でシュークリームを食べていたじゃないですか。甘いもの食べられるようになったんですね! さあ、早く行きましょう!」
「もう! わかったってば!」
黒橋とシロは笑顔で話している。最近は一緒の家で暮らしているらしい。特にシロは、以前が嘘のように感情豊かになっていた。
「今行くよ」
僕は二人の方へ、笑顔で走り出した。
真っ直ぐ、前を向いて。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!次回作も読んでいただけると嬉しいです!