第49話:仕事について (中)
「俺は自己防衛的な理由から『世界最強の元一般人』及びその作者である『ITIRiN』についての情報が極力自分の目や耳に入ってこないようにしているんだ。ということで絶対にとまでは言わないけど出来るだけ俺の前でその話をしないでくれると助かる。って言っても彩乃はあんまりこういうのに興味がないだろうからそこまで気にすることはないと思うけど一応な」
「う、うん。まあひーくんがそこまで言うのなら」
「ありがとう。んで本題はここからなんだが………えーと、まあこの作者ことITIRiNって俺なんだわ」
「………え?」
「いやだからこれの作者が俺で、いつも通り授業中に執筆をしていたら勝手に人のPC画面を見た校長が一瞬でそのことに気付いただけでなく、その後脅され今の関係に至るって感じだな」
(あの時は入学してまだ数ヶ月とかだったからマジで退学にされたらどうしようって焦ったのを今でもハッキリと覚えてるわ)
「失礼な。私はただ君をこの部屋に呼び出してサインをくれとお願いしただけだろうに」
「その言葉の前に『君が学校に内緒で作家活動をしていることを黙っていてほしければ』が入ってたけどな。……って、少し話が逸れちまったけどなんとなくは分かったか?」
「………………」
(あれ、固まっちゃってる。まあ突然『自分小説家なんだ』って言われればそんな反応になってもおかしくはないけど、ぶっちゃけ売り上げや人気がどんなもんだとしても小説を書いてれば小説家、漫画を描いていれば漫画家って名乗れるからあれなんだけどね)
(だから俺は必要最低限の人以外には自分がラノベ作家だっていうことを教えないし、極力情報をシャットアウトしていたりするんだけど)
「その様子だと佐々木君はある程度この小説について知っているようだね」
「だっ、だってこの小説って―――」
「おっと、これ以上は駄目だよ佐々木君。そして私はここで一つ君に忠告をさせてもらうよ」
そう言った後校長は雰囲気をガラッと変え
「イチはまだ高校生という心身ともに未熟な状態にありながら一人の小説家としてこの現代社会で戦っている。それがどれだけ大変なことなのか、何故私達にこの件については触れないようお願いしているのか一度しっかりと考えたまえ。………今後彼と付き合っていくのなら尚更ね」
「………はい」