第47話:その頃彩乃は
本当は告白をする流れで一緒に渡すはずだったものの、ちょっと色々あって順番がぐちゃぐちゃになってしまったがちゃんとチョコレートを渡せて一安心と思ったのもつかの間、ひーくんが自分のリュックから何やら小さめの紙袋を出してきて
「いらないとかそういうわけではないんだけど、彩乃から貰ったやつがあるからこれあげるわ」
(私から貰ったやつがあるからってことは多分中身はチョコレートだと思うんだけどこれを義理で、しかも高校生に渡すにはちょっと不釣り合い過ぎない?)
「………これ、紙袋からしてもう既にかなりの値段がしたであろうことが分かるんだけど、一体誰に貰ったの?」
「誰って仕事先の人だけど、まあそこら辺も全部教えておいたほうがいいか。ちょっとここだとあれだから校長室に行こうぜ」
そう言うとひーくんは私の手を握ってきただけでなく、そのまま私の歩幅に合わせながらも校長室へと走り出した。
(この前は私から手を繋いで引っ張っていったけど今日はその逆……じゃなくて!)
「えっ、あの、学校にも内緒にしてるようなことをそんな簡単に教えちゃっていいの?」
「別に俺が秘密にしてることを彩乃が誰かに話したところで最悪高校を退学になって、個人情報が世界中にばら撒かれる可能性があるくらいだからいいよ。まあその時は彩乃のも一緒にばら撒かれることになるだろうけど」
「全然よくないんですけど⁉」
「はははっ、だったらずっと内緒にしといてくれ」
多分本当はかなり重要なことなんだろうけどそんなことを一切感じさせない、子供のような表情で。それも幼稚園児がゆびきりをするかのような軽さでそう言ってきたと同時に私達は校長室へと足を踏み入れた。