第46話:バレンタインデーⅤ
咄嗟に出た割には結構面白かったと思うのだが、彩乃的には微笑ましく映ったらしく笑うといういうよりは優しい笑みをこちらに向けてきたがまあ白けるよりはいいだろう。
「それで用事ってなんだ? 今からどこかに遊びに行くっていうなら悪いけど一回銀行に寄らせてくれ」
俺的には凄く真面目に聞いたつもりだったのだが彩乃からしたら『⁇⁇⁇』だったらしく、きょとんしたような顔で
「えーと、ひーくんちゃんと私のL○NE読んでくれた?」
「あん? そりゃー読んだからここまで来たんだろ」
「………もう一回最初から読んでもらってもいい?」
(はあ? 悪いけど俺はそこまでまだボケちゃいな)
彩乃:《どうしても今日中に渡したものがあるから何時もの教室に来てくれると嬉しいんだけど、来られそうかな?》
「ちょっと気付かないうちに頭がボケ始めてたみたいだから病院に行ってくるわ」
「本当は?」
「ちょっとスマホが壊れてるみたいなんで春休み中に買い替えときますわ」
「ほ・ん・と・う・は?」
「………今年もチョコなんて貰えて一個だろうと思っていたから脳内で勝手に変換されたんだと思われます」
(別にだからと言って彩乃から貰えるかも? なんて勘違い童○みたいなことは一ミリも思ってな―――)
「じゃあもう一つだけ質問。もし私がひーくんの思っている以上にあなたのことを知っていて、そんなあなたが好きになったから私と付き合ってほしいって言ったら……どうする?」
「彼女どころかまともに友達すらいないようなぼっちが何言ってんだって思うかもしれないけど、俺はお互い相手のことをよく知らないで―――」
「それも知ってるよ。だって私飛行機の中で行われていた明日香とひーくんの会話は全部聞いてたもん」
(この子もしかしなくても寝たふりしてやがったどころか、最初から明日香とグルだったな)
「それを知ってて俺に告白してきたってことはそれだけ自信があるのか? って聞いちゃうと上から目線みたいになるけど……んーと、正直に言えば俺は彩乃のことが女子として好きなんだし、めちゃくちゃ付き合いたいと思ってるんだけど」
「付き合い始めたはいいもののあとからやっぱり違ったからってなって、恋人としてだけではなく友達としてもいられなくなるかもしれないのが嫌なんでしょ? でも私はさっきも言った通りひーくんが思っている以上にあなたのことを知ってるよ」
そんな言葉に続いて『まあそれは知っててもおかしくはないか』みたいなものから『なんでそんなことまで知ってるんだよ⁉』みたいなものまで色んな俺のことについて語り続け
「あとはねー、一之瀬陽太っていう男の人は相手にウザがられるかもしれないと心配になりながらも定期的に自分がどこにいるかちゃんと連絡をくれて、しかもそれは私に告白されるかもしれないという可能性を感じて下心から……とかではなくその方が安心できるだろうっていう優しさで行動するカッコいい面があって。でもでもやっぱり不安だから明日香にそのことを相談するっていう可愛い面があって。遊びの誘いだと思い込んでるにも関わらず予定の一時間半も早く帰ってきてくれて………昨日までのひーくんでも大好き過ぎるくらいだったのに、更にこんなにあなたの素敵な部分を沢山見せられちゃって」
「分かった分かった分かった、もーう分かったからやめてください。………言っておくけど俺は冗談抜きで相手からフラれない限りそのまま結婚するって決めてるくらい面倒くさい、というか自分でもちょっと頭がおかしいんじゃねえかと思ってるほどの人間だけど、それでもいいなら俺と……付き合ってください」
「はい♪」