第39話:ひーくんが帰った後の校長室 (上)
ひーくんの中で私との距離感が一気に縮まったのか友達にするような感じで『じゃーねー』と言ってくれただけでなく、手まで振ってくれた。
(うぅー、あまりにも予想外過ぎてちゃんと返事を返せなかったよ~。私のバカバカバカ!)
「今度は一人で悔しがっているところ申し訳ないんだが、ちょっといいかい?」
「……なんですか?」
「何かイチのことで聞きたいことがあるのなら教えてあげるからそんなあからさまに不機嫌そうなオーラを向けないでくれ。と言いたいところだが、まずは私からの質問が先だ。正直な話佐々木君はA男の件についてどう思っていたんだい?」
(折角人が幸せな気持ちでいっぱいになってる時にA男とかどうでもいい奴の話を振ってこないでよ、まったく)
「ひーくんの『被害者と加害者の両方を救いたい』っていう気持ちはこの部屋に入ってきた時から何となく分かっていましたし、凄く優しい人なんだって分かって更に好きになっちゃいましたけど……正直私には理解できませんね。ぶっちゃけ問答無用で即退学でいいんじゃないかとすら思っています」
「ひゅ~う♪ 結構ハッキリ言うね。ちなみに私も君と同じ考えだ」
「じゃあなんであんな奴のことを助けることにしたんですか? まあそのおかげでひーくんが悲しまずに済んだのでありがたいと言えばありがたいですけど」
「間違いなくA男は今回犯罪を犯したしイチの考えは甘すぎる。甘すぎるが、それは彼のいいところでもあるだろう? だから私はその長所を潰さないようできる限りの努力をしたし、これからもしていくつもりだ」
「そうですか。では今後あなたがひーくんを傷つけるようなことをした場合、遠慮なく彼が録音していたデータをぶちまけますのでその時はよろしくお願いします」
「さっき君がイチのスマホを弄っていた時か……。まったく最近の若者は怖いね~」
(保険の意味でこっそり私のL○NEに録音データを転送したけどひーくんの方はトーク履歴を全部消しておいたし、後で私の方も消しておけば実質初L○NEはまだだよね? うん、まだ! まだと言ったらまだ‼)