第29話:文化祭 (下)
一番最初にきた客はちょっとあれだったもののそんな馬鹿はそうそういるわけもなく、その後は食べ歩きや持ち帰りを希望する人には校長が代金と引き換えに手渡しし、こちらが用意したテーブル席で食べていくという人には準備ができ次第俺が運ぶのと、手を振られれば振り返すという超簡単なお仕事を10分ほど続けていると
「小倉君、これを三番テーブルに頼む」
「は~い♪」
(女装自体は去年もやらされたのと全然バレる気配がないから別にいいんだけど、喋れるようになったのはマジでウザい。なにが『は~い♪』だ、○ね!)
なんてことを考えながら歩いているとすぐに三番テーブルについたため、意識を切り替え
「お待たせしました、こちらストロベリーになります」
「あっ、それ私です」
(あっ、倉科様のでしたか。ちなみにお二人はいつ頃来られたのでしょうか?)
「こちらがアップルキャラメルになります」
「はい、ありがとうございます」
(いえいえ、こちらこそご来店ありがとうございます佐々木様。ですがそんなにジロジロ見ないでくださるともっとありがたいのですが……取り敢えず逃げよう)
「それではごゆっくりどうぞ~」