第28話:文化祭 (中)
ということで今年も校長が趣味で駐車場に出店しているチュロス屋の手伝いをするよう強要された俺は、スカートが風で捲れないよう抑えるために丸いお盆を両手で持って突っ立っていると最初のお客さんらしき集団がこちらに向かってきたかと思えば小声で
「おい、お前が行ってこいよ」
「嫌だよ。つかお前が行くって言ったんだからお前が行けよ」
「じゃあここは平等にジャンケンで」
おいおい、よく見たら向井もいるじゃんか。確かにアイツも周りからはウザがられてることを面白いと勘違いしちゃってる系の側面があるから別に意外でもなんでもないけどさぁ。
とかなんとか考えている間にジャンケンが終わったらしく、それで負けたと思われる向井が俺の目の前まできて
「あ、あのー、去年もここで店員やってましたよね? というかなんで去年は誰とも喋らなかったんですか?」
(チッ、やっぱりコイツら揶揄い目的で近づいてきやがったな)
「……今のあなたのように全く面白くないことを面白いと信じ込んで話しかけてきたり、それを見て笑っているゴミ共と関わりたくないからです♪」
「えっつー」
(それは須田の口癖だろうが。つかマジでウザいから適当に何個か買わせて追っ払おう)
「ん? 三つですか? かしこまりました。それではこちらへどうぞ♪」
「えっ、いや、俺は……。というかここのチュロスってめっちゃ高いですよね?」
「な~んだ、お客さんかと思ったら迷子の豚さんだったんですね。でしたら―――はあちらですよ♪」
そう言うと向井は引き攣った顔を見せたのち、友達とどこかへ消えていった。