第21話:その日の彩乃は
昨日はあの後友達との約束の時間に間に合うギリギリまで一之瀬君のことを見ていたのだが、その際に明日香が『もしあれだったら一部だけにはなっちゃうだろうけど合宿中のよーくんを動画で送ってあげようか? 多分送れるのは夜の11時過ぎとかになっちゃうと思うけど』と言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。
なので私はその時間を目安に夏休みの宿題や家事をこなしたり、自分のやりたいことをやったりし、丁度それくらいの時間にお風呂からあがってくると
『今日はランニングの様子を撮っておいたけど全部で1時間ちょいあるから、取り敢えず終盤の方の1時間○分から見るのがお勧めかも』
というL○NEがきていた。そのため私はベッドに寝っ転がりながら明日香の教えてくれたところから動画見始めた。
『もう死ぬ、もう無理、もう限界』
『はい、よーくん、あと一往復。というかそれさっきも聞いたし。早くしないと寺嶋君に一位取られちゃうよ』
『アイツ今どこ?』
『うーん、あっ来た!』
『おまっ、もっと早く言え!』
(普段は全然そんな風に見えないけど、結構負けず嫌いなところもあるんだ。ちょっと意外かも)
『はい、よーくん一位♪ からの寺嶋君二位♪』
『はぁ、はぁ、はぁ、陸上部、行け……体力お化け』
『いやいやいや、ようだって十分おかしんだから俺が行くならお前も道連れだわ』
『はーぁ、はー、絶対に……やだ、はーぁ』
(シャトルランの時はちょっと遠かったり、すぐに外に出て行っちゃったりでよく見えなかったけど、今は走り終わった後の姿がこんなに近く……んぅぅぅーーー♡)
そんなことを思いながら私は一停止ボタンを押し………。