第19話:その頃彩乃は
どうやらこの間教室内で話題になっていたラノベが今日発売日だったらしく、あの時よりも更に盛り上がっているお昼休み。少し気になることがあった私は口の中に入れていたお弁当を飲み込んでから
「四時間目が終わった後からずっと一之瀬君が帰ってこないんだけど、どこに行ったんだろう?」
「なに~、実は彼女がいるんじゃないかっていう心配?」
「いや、確かにそれが気にならないっていえば嘘になるけど……まだちゃんと私の気持ちが固まってるわけじゃないというか、もしかしたら一時の気の迷いかもしれないとぃぅにゅぅぅ」
「そんなに顔を赤くしておいて何言ってるんだか。……まあでもしっかり相手のことを見極めることも重要だし、もう少し時間を掛けるのも悪くないんじゃない?」
「んー、やっぱり教室内での彼しか知らないってのがなぁ」
(明日香は部活中の一之瀬君こそが本当の姿だって言ってたけど、それだって私は見たことがないわけだし)
なんてことを考えていると石原が近付いてきて
「さっき一之瀬が校長室に入っていったらしいんだけど、佐々木達は何か知らねえか?」
「「えっ⁉」」
その後私達は詳しく話を聞こうとしたものの、どうやら石原も友達から聞いただけらしくよくは分からなかった。
そのため一之瀬君が自分の席に戻ってきたところを狙って明日香がそれについて詳細を聞き出そうと試みたのだが、校長室に行ったこと以外は全てはぐらかされてしまった。