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第157話:快進撃の秘密 (下)

『まず第一に、一之瀬君は去年のシャトルラン学年1位の記録保持者であること。第二に、他の選手よりも10分遅れで中間地点を出発している+他の選手は全員例のチートシューズを履いていたにもかかわらず、現在トップを走っている○○選手を除き全ての選手をごぼう抜きして見せたこと。そしてその○○選手すらも現在進行形で追い詰められているという事実を』


「「「「「……………………」」」」」


『もう一度言いますよ。皆さん何かお忘れではありませんか?』


ここで本来ならばよーくんのことを純粋に応援してくれている人達から拍手喝采といった流れになるところであったのであろうが、解説役の○○先生が非常に申し訳なさそうな表情を浮かべながら


『あ~、○○? お前の怒りは分かるし、正直いち観客としてはよく言ってくれたすら思っているけれどな。そろそろ本題に戻らないと、折角の盛り上がりポイントが台無し…にはならないだろけれど、非常に勿体ないというかなんというか……。なぁ?』


『はぁ⁉ 放送部副部長である私としたことが怒りで我を忘れてしまうとは、なんという失態。んんっ、皆様大変失礼いたしました。それでは話を戻す前に少しおさらいとしまして―――』


「(なぁ、今明らかに○○先生、一之瀬のことを贔屓したよな? あれ絶対に一ノ瀬の凄さに全部気が付いているが故にのストップだったよな? というか単純に一ノ瀬自慢をしたがってないかあの先生?)」


「菱沼うるさい。気が散ってひーくんの活躍を見逃したらどうしてくれるのさ」


「ここから先はコンマ寸秒でも指示のタイミングを間違えられない重要な局面だから、ちょっと黙っててくれるかな、ひっしー」


「いやいやいや、お前らの気持ちも分かるけどさ! 今まで一言も喋ったことがないような奴がいきなり我が物顔であんなことを言い出したら普通にムカつくだろうが! 何なんだよアイツは。いい歳こいてクラスの陽キャ連中みたいなことしてんじゃねえよ。うちの一ノ瀬は元からスゲーッつうの‼」


「まあまあ、菱沼君一旦落ち着いて。菱沼君の気持ちはよく分かるし、私も同意見だけどさ。どこぞの腹黒彼女さんの狙い通り一ノ瀬君が意図的にゾーンに入れる可能性があるという、今一番世間にバレたくない事象から大勢の観客の目を逸らさせるための手伝いを実況の子だけでなく○○先生もがしてくれている以上、ここは大人しくしておくのが得策なんじゃないかな?」


彩乃ちゃんのことは言わずもがな、ここまでしっかりと私達の狙いを言い当てて見せるなんて、逆になんであんなクズ男のことを好きになったのか不思議でしょうがないくらいだよ。


なんて私が考え事をしている間にも


それでも納得のいかないらしいひっしーは文句を言い続け、それをひたすら宥める美咲ちゃんがいたり


中学時代からの友達から腹黒彼女さん呼ばわりされたにも関わらず、一切の反応を見せることもなく、よーくんの秘密を上手く誤魔化せているのかの確認と並行しながら、しっかりと自分の彼氏の活躍をその目に焼き付けている子がいたり


この後起こるであろう今日一番の盛り上がりポイントへと繋げるための振り返り実況をしている子がいたりと、その他にも私達がいる校庭の中では様々なことが行われている。


しかしそんな時間も実況の子による


『とっ、ここまでが簡単な振り返りでした。ということで、ここからは皆さんが一番疑問に思っているであろう、何故一ノ瀬君に抜かされた選手は全員その直後にバランスを崩し転倒。加えてドクターストップによる強制途中棄権を言い渡されているのか。を解説していきたいと思います』


という言葉が聞こえてきた瞬間、皆の注目が一斉に大型モニターに映っている彼女へと向けられた。


まあ、未だに怒りの収まらないひっしーとそれを宥めている美咲ちゃん、当たり前のことながら彩乃ちゃんという、例外もいるがそんな3人の異質さなど誰も気にしていないというこの状況。


それだけこれから語られる真実にみんなが興味を持っているということなんだろう。


私? さっきも言ったけれど一瞬の隙も見逃さないよう全集中で、そして次の一手を打つのに最高な瞬間を手元のタブレットを見ながらジッと待ち続けていたに決まってるでしょ。


そう、待ち続けていた…よ♪


そう私が心の中で呟くと同時に、実況の子が例のシューズに関する解説をしようとしたのも束の間のこと。


事体は私の想像通りのタイミングで動き出した。


そしてその瞬間をしっかりと見逃さなかった彼女は予定していた解説など二の次に、素早くそちらへと実況の舵を切った。


『ッ⁉ おおっと、ここで先頭を走っていた○○選手ですが、自分のすぐ後ろをピッタリとくっ付いて走り続けている一ノ瀬君からのプレッシャーに耐えかねたのか、スピードを上げようとしましたが、その瞬間足がもつれたことにより転倒は免れたものの大きくバランスを崩してしまいました‼ ついにここで彼の足にも強すぎる力の代償が訪れたようです! そしてその瞬間をまるで今か今かと待ち続けていたかのような、完璧なタイミングで一ノ瀬君が○○選手を抜かし、ついにお互いの順位が入れ替わりました‼』

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