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第156話:快進撃の秘密 (中)

なんて簡単な分析を行っていると再び私のスマホが震え出した。


ちなみに再びというのは、よーくんが疑似ゾーンに入った直後から何度も電話が掛かってきているからである。


そして相手が誰かはスマホを見ずとも簡単に想像が付くし、電話の内容も見当が付くが故に絶対に出る気はない。もとい、今よーくんの邪魔をしようとする人は例え自分の母親だとしても真っ向から対抗する覚悟である。


ということでこれ以上私の集中力を阻害されて、よーくんのパーフォーマンスに影響が出ては堪ったものではなため、それの電源を切った。


丁度そのタイミングで実況の子の準備ができたらしく、先程表示させたピンクシューズの写真を使いながら


『さあ、もう既にお気付きの方々もいらっしゃるかとは思いますが、一之瀬君が本格的に○○選手へ勝負を仕掛けに行く前に今回の異常事態こと、脱落者続出の解説を行っていきたいと思います!』


彩乃ちゃんに頼まれずとも最初からこれの解説はするつもりではあっただろうし、何なら今回のマラソン大会での盛り上げポイントの一つとして考えていたのだろう。


なんの戸惑いもなく、スムーズ且つ自然な流れで。そして何よりも観客の気持ちを盛り上げる相変わらずの入りをしてみせた彼女はそのまま勢いを緩めることなく


『まずはこちらの写真をご覧ください。これはこのマラソン大会への参加者が全員集合し、スタート地点に立っている時に撮影されたものなのですが…皆さん、これを見てお気付きになった点が一つあるのではないでしょうか?』


そんな彼女の問いかけを受けた瞬間、実況用の大型モニターへと目線を送っていた人達は一斉にある一点こと、例のピンクシューズに気が付いたらしい。


その証拠に私の周りでもそれに関する話が至る所で行われている。


勿論それは実況席にいる人達にも伝わっているわけで


『そのご様子ですと皆さんお気付きのようですので、サラッと答え合わせをしちゃいますか。ということで注目ポイントその1! 一ノ瀬君以外の選手は全員全く同じランニングシューズを履いている。


注目ポイントその2! このランニングシューズは今年の箱根駅伝でかなりの注目を集めたためご存じの方も多いかと思いますが、まあ簡単に言ってしまえばこの靴は厚底のソールと特殊構造によって生み出された反発力を推進力に変え、より速く走れるよう設計された、チートシューズである。


とまあ、ここまでは皆さんご存じの情報かとは思いますが…よく考えてみてください? 何故そんなぶっ壊れシューズがこの世に存在しているにも関わらず、一之瀬君だけは履いていないのか』


そんな問いかけに対しあるところでは、単純に靴のことを知らなかっただけの情弱だったのではないかと私の弟のことを馬鹿にする声が聞こえてき


またあるところでは、あれって結構高いらしいからそう簡単にホイホイ買える物ではないでしょと庶民的な意見が聞こえる反面


流石は私立高校。たかだか3万くらいだったらバイトをしてなくても余裕で買えるでしょ。それすら買えないって、どんだけあいつの家は貧乏なんだよ。といった金銭感覚のズレた声が聞こえてきたり


兎に角よーくんのことを貶す発言がそこら中から聞こえてくる。


まあつい先ど起こったばかりのゾーンの件同様、そういった声ばかりが聞こえるというわけではないのだが……。


(どうせまた本当のことを知ったら華麗な手の平返しを見せてくれるんだろうけれど、こういう人達って何回も同じ過ちを犯しておいて恥ずかしいとか思わないのかな?)


あまりにも腹立たしい発言が多いため、一人心の中でそう愚痴りながらグッと我慢していたのも束の間のこと。


これらの発言はしっかりと実況席まで届いていたらしく、私や彩乃ちゃん…いつの間にそこまでの仲になったのかは知らないが美咲ちゃんをはじめとする、よーくんのことを純粋に応援している人達を代表してといった感じで


『別に一ノ瀬君のことを高みから寄ってたかって馬鹿にするのはご自由ですけれど、皆さん何かお忘れではありませんか?』


「「「「「……………………」」」」」


先程までの悪口大会はどこへやら。


たった一言、釘を刺すような言葉を言われただけでこの有様とは『赤信号、みんなで渡れば怖くない』とはよく言ったものである。

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