第155話:快進撃の秘密 (上)
「あっ、○○? 今年の体育祭で一番の盛り上がりポイントに入り始めたところごめん。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、大丈夫?」
『――――――――』
当然のことながら電話先の声は聞こえないものの、今彩乃ちゃんが呼んだ名前や発言から読み取るに間違いなく今回実況を行っている放送部兼陸上部の女の子なのだろう。
「ありがとう。それじゃあ早速なんだけど、ひーくんが今先頭を走っている○○に勝負をかけるまでの間に彼以外の全員が履いている例のピンクシューズの解説をしてくれないかな? もちろんメリット・デメリットの両方を、ね♪」
『――――――――』
「流石は○○。二年生にして放送部の副部長を務めているだけではなく、女子陸上部の次期エースと言われているだけはあるじゃん。それじゃあ期待してるから、よろしくね~」
電話相手は同じはずだというのに選手紹介時とは違い、今度は優しい部活の先輩といった感じで電話を終えた彩乃ちゃんはそのまま私の方を見てドヤ顔をしてきた。
それと同時に先程の電話で冷静さを取り戻したらしい実況の子は早速頼まれごとをこなすため、あらかじめ用意していたのであろうピンクシューズの画像とスタート前に撮影したらしき代表選手全員の足元を映した写真をモニターの一部へと映し出した。
ちなみに何故私があの時、別の場所にいたはずの彩乃ちゃんの電話の件をまるで見聞きしていたかのように言ったのかというと
「普通自分の彼氏のためとはいえ直接実況の子に電話であんな指示するか? つかどういう繋がりであの子の電話番号を知ったんだ?」
「それが私もさっき知ったばかりなんだけれど、実はこの学校内には一ノ瀬君のファンクラブがあるだけじゃなく、そこの会長が彩乃であの子はその会員の一人ってことみたいだよ」
「おいおいマジかよ。その時点でツッコミどころ満載だけど、一番の問題はそれって職権乱用って言うんじゃねえのか?」
といった感じでいつの間にか仲良くなったらしい美咲ちゃんとひっしーの会話から何となく察しがついた…というわけである。